13:00 〜 15:00
[PH57] 2016年B県調査による高等学校教師のメンタルヘルス(1)
キーワード:教師, メンタルヘルス, バーンアウト
問題と目的
本研究は,B県の公立学校教員を対象に行われた調査結果から,教師のバーンアウト傾向について項目内容との心理的距離の観点から検討することを目的としたものである。
方 法
B県内の公立小・中・高等学校の教員を対象に,教育委員会の許可を得た上で郵送によるアンケート調査を実施した。小・中学校については2014年8月,高校については2016年11月に調査が行われている。なお,調査にあたってはその目的,回答は強制でないこと,個人情報の取り扱いについて説明を行っている。
調査内容は小・中学校と高校とで若干異なっているが,共通部分もある。以下に,共通して設けた項目や尺度を挙げておく。
・ 属性:性別,年齢,職階
・ 業務関連:残業時間,持ち帰り仕事時間,休日出勤日数,退職企図の有無
・ バーンアウト:奥村・宮下・森・西村・北島・増井(2016)による改訂版教師用ストレス自己評価尺度
・ ストレッサーおよびストレス反応:職業性ストレス簡易調査票(下光・原谷,2000)より抜粋
結果と考察
回答者数と学校数は以下のとおりであった。いずれの校種においても,回収率はおよそ7割である。ただし,今回の分析ではこのうち校長と非管理職教員のデータのみを用いた。
・ 小学校:1,019名(44校)
・ 中学校: 660名(23校)
・ 高 校:2,037名(57校)
ストレス自己評価尺度30項目について,肯定的な回答をしているほど回答者と項目内容との心理的距離が近いと考え,次元数を2とした多次元展開法を当てはめた。分析には,Rのパッケージsmacofを用いた。Figure 1は,回答者と項目のプロットを学校種ごとに示したものである。この尺度は“情緒的消耗感”,“個人的達成感”,“脱人格化”,“同僚ストレス”,“管理職ストレス”の5因子から構成されており,図では項目を番号ではなく対応する因子E,P,D,C,Mで表している。
次元1は業務に対する肯定的な評価の程度を,次元2は項目内容から業務への否定的な評価が児童生徒を含む対人関係に関わる業務から生じていない程度を反映しているようである。高校教師は次元2の個人差が相対的に大きめである。また,小・中学校では非管理職教員に比べ校長の方がプロットがやや右寄りであり,心理的負担の差が現れていると言えるだろう。
引用文献
奥村太一・宮下敏恵・森慶輔・西村明徳・北島正人・増井晃 (2016). 教師用ストレス自己評価尺度の改訂(2) 日本学校メンタルヘルス学会第20回大会抄録集,106.
下光輝一・原谷隆史 (2000). 職業性ストレス簡易調査票の信頼性の検討と基準値の設定 加藤正明(編) 労働省平成11年度「作業関連疾患の予防に関する研究」労働の場におけるストレス及びその健康影響に関する研究報告書,pp.126-138.
本研究は,B県の公立学校教員を対象に行われた調査結果から,教師のバーンアウト傾向について項目内容との心理的距離の観点から検討することを目的としたものである。
方 法
B県内の公立小・中・高等学校の教員を対象に,教育委員会の許可を得た上で郵送によるアンケート調査を実施した。小・中学校については2014年8月,高校については2016年11月に調査が行われている。なお,調査にあたってはその目的,回答は強制でないこと,個人情報の取り扱いについて説明を行っている。
調査内容は小・中学校と高校とで若干異なっているが,共通部分もある。以下に,共通して設けた項目や尺度を挙げておく。
・ 属性:性別,年齢,職階
・ 業務関連:残業時間,持ち帰り仕事時間,休日出勤日数,退職企図の有無
・ バーンアウト:奥村・宮下・森・西村・北島・増井(2016)による改訂版教師用ストレス自己評価尺度
・ ストレッサーおよびストレス反応:職業性ストレス簡易調査票(下光・原谷,2000)より抜粋
結果と考察
回答者数と学校数は以下のとおりであった。いずれの校種においても,回収率はおよそ7割である。ただし,今回の分析ではこのうち校長と非管理職教員のデータのみを用いた。
・ 小学校:1,019名(44校)
・ 中学校: 660名(23校)
・ 高 校:2,037名(57校)
ストレス自己評価尺度30項目について,肯定的な回答をしているほど回答者と項目内容との心理的距離が近いと考え,次元数を2とした多次元展開法を当てはめた。分析には,Rのパッケージsmacofを用いた。Figure 1は,回答者と項目のプロットを学校種ごとに示したものである。この尺度は“情緒的消耗感”,“個人的達成感”,“脱人格化”,“同僚ストレス”,“管理職ストレス”の5因子から構成されており,図では項目を番号ではなく対応する因子E,P,D,C,Mで表している。
次元1は業務に対する肯定的な評価の程度を,次元2は項目内容から業務への否定的な評価が児童生徒を含む対人関係に関わる業務から生じていない程度を反映しているようである。高校教師は次元2の個人差が相対的に大きめである。また,小・中学校では非管理職教員に比べ校長の方がプロットがやや右寄りであり,心理的負担の差が現れていると言えるだろう。
引用文献
奥村太一・宮下敏恵・森慶輔・西村明徳・北島正人・増井晃 (2016). 教師用ストレス自己評価尺度の改訂(2) 日本学校メンタルヘルス学会第20回大会抄録集,106.
下光輝一・原谷隆史 (2000). 職業性ストレス簡易調査票の信頼性の検討と基準値の設定 加藤正明(編) 労働省平成11年度「作業関連疾患の予防に関する研究」労働の場におけるストレス及びその健康影響に関する研究報告書,pp.126-138.