The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表 PH(01-78)

ポスター発表 PH(01-78)

Mon. Oct 9, 2017 1:00 PM - 3:00 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

1:00 PM - 3:00 PM

[PH73] メンタライゼーション能力の高さが日常的フォーカシング態度および自己調整学習に及ぼす影響

増田優子1, 三宮真智子2 (1.大阪大学大学院, 2.大阪大学大学院)

Keywords:メンタライゼーション, フォーカシング態度, 自己調整学習

問題と目的
 大学生の課題として,他者との関係形成力や自己学習力が挙げられる。メンタライゼーション(自己や他者の行動を心的状態として理解すること)が他者との関わりにおける不安喚起の程度や,自己の情動の適切な処理,表出と関係すると考えられることから,他者との関係形成に影響を及ぼすと想定される。また,フォーカシング(日常生活で生じた曖昧な感覚や,自身を悩ます問題に対して適切な距離をとるための技法)は緊張緩和や自己への肯定的感情の生起と関連するといわれている(桑野,2002)。そのため,メンタライゼーション能力の高い学生は,自身に生じる様々な感情や事柄に対してフォーカシング的な思考の傾向があると考えられる。さらに,メンタライゼーションにはメタ認知的な省察力の高さがその指標に含まれており(Allen & Fonagy, 2006 狩野訳 2011),メンタライゼーション能力と効力感の高さに正の関連があると示されていることから(増田・田爪・相澤,2015),メンタライゼーション能力の高さは自己調整学習の高さに影響を及ぼすと考えられる。そこで,本研究では,大学生を対象にして,メンタライゼーション能力と日常的フォーカシング態度および自己調整学習との関係について検討することを目的とする。
方   法
対象 関西および関東の大学で,大学生341名(男性128名,女性213名),平均年齢19.8歳(SD=1.25)に対し調査を実施した。
尺度 山口(2016)のメンタライゼーション尺度(対自的メンタライゼーション:MS,対他的メンタライゼーション:MO),2因子4件法。中谷・杉江(2014)の日常的フォーカシング態度尺度(DFMS),5因子(うち,自己感覚表現の因子は省いた4因子を用いた)5件法。藤田(2010)の自己調整学習尺度(SRLS)(2因子5件法)。
結果と考察
各尺度の因子構造の検討 確認的因子分析の結果,最終的に,メンタライゼーション尺度において,明示的MS(4),黙示的MS(6),MO(11)の3因子モデルの適合度が良好であった(GFI=.889, AGFI=.864, CFI=.905, RMSEA=.063),α=.845, 838, 871。日常的フォーカシング態度尺度においては,自己感覚距離(5),自己感覚注意(5),自己感覚の受容と行動(6)の3因子モデルの適合度が良好であった(GFI=.915, AGFI=.885, CFI=.917, RMSEA=.066),α=.845, 793, 742。自己調整学習においては,努力調整モニタリング方略(7),プランニング方略(4)の2因子モデルが良好であった(GFI=.927, AGFI=.887, CFI=.902, RMSEA=.085),α=.807, 716。
男女差による検討 メンタライゼーションの変数ごとにt検定を行った結果,女子の黙示的MS (Welchの検定:t(246.24)=2.55, p <.05)が高く,男子の明示的MS (t(338)=4.05, p <.001)が高かった。
 メンタライゼーションと日常的フォーカシング態度および自己調整学習方略との関係に対する検討(男女の比較) メンタライゼーションのMSに男女差がみられたことを加味して,男女別に日常的フォーカシング態度と自己調整学習を従属変数とする重回帰分析を行った(Table1)。その結果,MSでは,女子のみにおいて関連がみられた。これより,女子の黙示的MSはDFMSの自己感覚注意と自己感覚の受容と行動に影響を与えると考えられる。また,女子の明示的MSはDFMSの自己感覚注意および自己感覚の受容と行動,および,SRLSのプランニング方略に影響を与えると考えられる。MOについては,男子において,SRLSのプランニング方略との間に関係がみられなかったが,その他全てにおいて,男子,女子ともに関連がみられており,MOはDFMSとSRLSに影響を与えていると考えられる。なお,女子の黙示的MSでDFMSの自己感覚注意との間に負の関連がみられていた。これについては,自己理解力の低さを自己認識している女子学生は,日常的に自己の内面や感覚に意識的に注意を向ける傾向があると考えられる。