The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表 PH(01-78)

ポスター発表 PH(01-78)

Mon. Oct 9, 2017 1:00 PM - 3:00 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

1:00 PM - 3:00 PM

[PH77] 高校生の理科学習に対する志向性を測定するアンケートの開発

佐川遼磨1, 吉澤寛之2 (1.岐阜大学, 2.岐阜大学)

Keywords:理科学習に対する志向性, 学校間比較

 生徒の特性により適切な授業方法が異なる(村山,2003)という指摘がある一方,高等学校では一斉授業が多いため,学級全体の生徒の特徴に応じた授業展開が求められる。学級の特徴の把握には,まずは生徒個々の特徴を捉え,それを集団単位に集約することが重要である。また,高校生は進路選択を大きく迫られる時期でもあるため,単なる好き嫌いといった指標のみでは詳細な特徴は把握できない。本研究では,好き嫌いを含めた理科に対する姿勢を理科の学習に対する志向性として定義し,生徒の特徴を捉える手法を開発する。
方   法
1. 理科に対する志向性に関する測定尺度
 a)理科に関する好き・嫌いの実態(橋場他,2004),学習に対する関心・意欲・態度(理科)(文部科学省,2015)を参考に理科に対する態度(8項目),b)理科系選択離れ(斉藤・高橋,2004),科学観と環境問題への関心(橋場他,2004),「理系」・「文系」をめぐる高校生のイメージ(名越,2011)を参考に理科に対するステレオタイプな考え(6項目),c)理科に関する好き・嫌いの実態(橋場他,2004),学習に対する関心・意欲・態度(理科)(文部科学省,2015)を参考に進路選択(4項目),d)理科の授業に対する高校生の要望(名越,2011)を参考に理科の授業に対する要望(7項目)の項目を作成した(5件法,25項目)。
2. 調査時期および調査協力者
 岐阜県内の理数科設置の進学校である県立A高等学校(1学年9クラス,男:192名,女:162名,その他:1名)と工業高校である県立B高等学校(1学年3クラス,2学年3クラス,男:177名,女:17名)で平成29年2月に調査を行った。
結果と考察
 因子分析(最尤法,プロマックス回転)を行って尺度得点を算出し,その得点を用いて学校ごとにウォード法によるクラスター分析を行った。
 クラスター分析の結果,ユークリッド距離を基準に4クラスターを抽出した。A校において(Fig. 1),第1クラスターは,理科に対するステレオタイプな考えを除く全ての項目が低いグループであった。第2と第3クラスターは,全体の項目得点は平均的であるが,理科に対するステレオタイプな考えの項目が第2クラスターでは高く,第3クラスターでは低い。加えて第3クラスターでは要望の点数が低いことから,理科に対して平均的なグループでも,特徴に違いが見られるため,適した指導が異なると考えられる。第4クラスターは,ステレオタイプな考えを除く全ての項目の点数が高く,理科に対する志向性が高いグループと言える。B校では(Fig. 2),第1と第4,第2と第3クラスターが対称の傾向を示し,大きく二分されることが見出された。進学を目指すA校と就職を目指すB校の進路と要望においてA校が有意に高い(p<.05)ことが影響していると考えられる。
 本結果から,理科に対する志向性の高い生徒が多い学級はより発展的な指導,ステレオタイプな考えの得点が高い生徒が多い学級はその偏見をまず払拭するような授業を行う工夫が求められる。