The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表 PH(01-78)

ポスター発表 PH(01-78)

Mon. Oct 9, 2017 1:00 PM - 3:00 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

1:00 PM - 3:00 PM

[PH78] 自閉スペクトラム症傾向と粗暴行為との関連

非行少年を対象として

山脇望美1, 河野荘子2 (1.名古屋大学大学院, 2.名古屋大学)

Keywords:自閉スペクトラム症傾向, 粗暴行為

問題と目的
 近年,重大かつ特異な非行や犯罪を行った少年に対する広汎性発達障害の診断が増えている (藤川, 2010)。特に,自閉スペクトラム症の診断基準を満たした非行少年が刃物などを使用した他者への攻撃や動物虐待,強奪などを行うことが示されている (近藤ら, 2005)。
 しかし,自閉スペクトラム症傾向は,社会的相互作用の困難や社会的コミュニケーションの困難といった特徴により,攻撃行動に影響をおよぼす攻撃性やアレキシサイミアと関連しやすいことが示されている (e.g., Liss, et al., 2008; Pugliese et al, 2015)。そのため,自閉スペクトラム症の特徴が非行少年の粗暴行為を直接的に喚起させているのかは明らかでない。
 そこで,本研究では,非行少年を対象に自閉スペクトラム症傾向と粗暴行為との関連について検討した。
方   法
参加者
 少年院入所の非行少年62名(16.89歳,SD = 1.73,男性)を対象とした。
尺度
 自閉スペクトラム症傾向は,日本語版自閉症スペクトラム指数 (若林他, 2004:5件法) により測定した。アレキシサイミアは,日本語版青年期用アレキシサイミア尺度 (反中ら, 2002:5件法) により測定した。攻撃性は,日本版Buss-Perry攻撃性質問紙により測定した (安藤ら, 1999:5件法)。粗暴行為は,過去1~2年に起こした警察などが仲裁に入った粗暴行為の回数について回答を求めた。
結   果
 非行少年における自閉スペクトラム症傾向が攻撃性とアレキシサイミアに媒介されることにより粗暴行為と関連するのかを検討した。
 分析の結果,自閉スペクトラム症傾向からアレキシサイミアへのパス,アレキシサイミアから攻撃性へのパス,攻撃性から粗暴行為へのパスは有意な正のパスであることが示された (Figure 1)。モデルの適合度は,χ2 = 1.81, p = .18, GFI = .99, AGFI = .86, RMSEA = .12, AIC = 19.81であった。なお,自閉スペクトラム症傾向から粗暴行為へのパス,自閉スペクトラム症傾向から攻撃性へのパス,アレキシサイミアから粗暴行為へのパスも投入して分析したが,本結果では有意になったパスのみを記載した。

考   察
 自閉スペクトラム症の特徴は,アレキシサイミアの特徴を高め,さらに攻撃性の特徴を高めて非行少年の粗暴行為を喚起させることが示された。
 自閉スペクトラム症は社会的相互作用の問題をもつが,この特徴により他者とのコミュニケーションがスムーズにおこなわれにくくなることは容易に想像できる。円滑な社会的関係を構築しにくいという特徴に加え,その特徴を周囲によって適切にケアされなかった結果,感情理解の困難,他者に対する否定的な信念や猜疑心といった特徴が高まり,結果として粗暴行為のような不適切な行動表出と結びついたと考える。
 ただし,自閉スペクトラム症の診断を受けていない非行少年を対象としたため,診断を受けた少年にも該当するのかについては検討の余地がある。
 *本研究は,公益財団法人日工組社会研究安全財団の助成 (2016) を受けた。