The 60th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

Presentation information

ポスター発表

[PA] ポスター発表 PA(01-78)

Sat. Sep 15, 2018 10:00 AM - 12:00 PM D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号10:00~11:00 偶数番号11:00~12:00

[PA07] 学齢期の情動反応性・情動制御性に係る気質的個人差

乳児期からの安定性・変容の検討

水野里恵 (中京大学)

Keywords:気質, 情動反応性, 情動制御性

問  題
 学齢期に達した2010年出生コホートを対象に行動的抑制傾向とエフォートフル・コントロールに加えて接近快活性の安定性・変容性の検討を行う。小学校に入学すると,子どもたちはクラス集団に所属し一斉授業を受ける。授業を通して,あるいは,書物やメディアから多くの知的刺激を受ける機会が増え,学習課題を課され,学校行事に参加する。子どもたちは,対人場面での「自己」の制御だけでなく,学業活動に関しても「自己」を制御することが求められるようになる。学齢期に達した2010年出生コホートを対象に,情動反応性・情動制御性に係る3つの気質特性(行動的抑制傾向,エフォートフル・コントロール,接近快活性)の安定性・変容性の検討を行う。

方  法
 A市内5区の住民基本台帳から無作為抽出した2010年出生の第一子を対象に(コホート3),2011年から2017年までに計7回の質問紙調査を実施した。本稿においては,気質調査のすべてのデータが揃った50名(男児19名,女児31名)を分析対象とした。各調査時点における子どもの平均月齢は,第1回:11.6ヶ月齢(SD= 3. 57),第2回: 21.3ヶ月齢(SD= 3.54),第3回質:40.5ヶ月齢(SD= 3.61),第4回:51.7ヶ月齢(SD= 4.01),第5回:64.7ヶ月齢(SD= 3.64),第6回:平均年齢は5.8歳(SD=0.4),第7回:平均年齢は7.0歳(SD=0.4),小学校1年生あるいは小学校2年生であった。第1回~5回・7回の調査時点で子どもの行動的抑制傾向とエフォートフル・コントロールの気質測定を行った。第6回調査では CBCL(日本語版4‐18歳用)に回答を求めた。
 第7回調査は,気質測定項目:Temperament in Middle Childhood Questionnaireを翻訳して使用した。使用した気質次元は,活性化コントロール(Activation Control: AC),主張性/優位性(Assertive / Dominance: AD),注意の焦点化(Attention Focusing: AF),恐れ(Fear: FE),強度の高い刺激に対する喜び(High-Intensity Pleasure: HP),衝動性(Impulsivity: IM),抑制コントロール(Inhibitory Control: IC),強度の低い刺激に対する喜び(Low-Intensity Pleasure: LP),知覚的敏感性(Perceptual Sensitivity: PS),シャイネス(Shyness: SH)の10次元であり,7段階評定で測定した。

結  果
 各気質次元のα係数は,AC=.65, AD=.79, AF=.91, FE=.70, HP=.71, IM=.82, IC=.78, LP=.64, PS=.81, SH-.76であった。10次元の気質次元を集約するため,主成分分析を行いバリマックス回転を実施した。その結果,エフォートフル・コントロール1(IC,-IM, AF, AC),エフォートフル・コントロール2(LP,PS),接近快活性(AD, -SH, HP),恐れ(FE)の次元に集約できた。それら4つの次元尺度得点と2回・3回4回・5回調査時点での行動的抑制傾向尺度得点(BI),エフォートフル・コントロール尺度得点(EC)との相関を求めた。

考  察
 乳幼児期にエフォートフル・コントロールが高い子どもほど学齢期に高いエフォートフル・コントロールをしめすこと,乳幼児期に行動的抑制傾向にない子どもほど学齢期の接近快活性が高くなっていることから,情動反応性・情動制御性に係る気質には安定性があると考えられた。

付  記
本研究は科学研究費補助金(課題番号17K04377)による助成を受けた。