[PA24] 音楽学科教職課程における教員養成ワークの開発と効果
音大生は“教員の資質”をどう考えるか
Keywords:教職, 音楽教育, 大学生
問 題
今日,大学における教職課程は大きな変革を迫られている。2010年度以降の入学生に必修となった「教職実践演習」は,「教員として最小限必要な資質能力の全体について,教職課程の履修を通じて,確実に身に付けさせるとともに,その資質能力の全体を明示的に確認すること」(文部科学省,2005)を目的の一つとしている。
しかし,いわゆる副教科の一つである音楽科の担当教員を目指す音楽学部に属する大学生は,「教員」としての意識は強くない。彼らには「音楽を教える人」という自覚は強くあるものの,教員という職務についての動機づけは高くない。これは,芸術系大学の閉鎖性や,音楽教員という特殊性に影響を受けたものと考えられる。また,彼らはノンバーバルな表現に慣れていることから,言語表現に対する苦手意識も強い。
そこで,本研究では教育実践演習の枠組みの中で,音楽科専攻の学生らを対象に「教員の資質」ワークショップを開発し,その内容と効果の検証を行うことを目的とする。なお,本ワークの学習目標は,3点を設定した。(1)個人の認識を広げる,(2)他者との協働体験と他者視点への気づきをもつ,(3)言語化へすることの抵抗を下げる
方 法
対象 音楽学系学部に所属する教職課程最終年度となる受講生32名。
時期 2017年度秋学期に実施。
ワークの構成 90分のプログラムとし,以下の流れで実践した。①演習の位置づけと必要性についての講義,②必要資料の読み込み,③個人の考える「教員の資質」のアイデア出し,④5~6人のグループでのアイデア共有,⑤グループで「最低限身に着けるべき(最低)」「できれば身に着けておく(一般)」「身に着けられることが理想(理想)」の3カテゴリに分類し,それぞれに名称を付ける,⑥クラス全体への発表・共有
結果と考察
受講生は5~6名の任意のグループに分かれてワークに参加した。まず,導入と位置付けた,「教員の職務とは,教員に求められる資質能力とは何か」についての講義のあと,個人ワークを実施した。個々人に与えられたワークシートには,先行研究,文献などから抽出された教員に必要な資質能力のカテゴリが提示され,「分類を参考にしながら,あなたの経験した学校,実習先で気づいた“教員に必要な資質”を行動レベルで具体的にあげなさい」という指示を記載した。これは,日常生活から離れた教員という職業について,具体的なイメージを喚起させ,他者と齟齬なく情報共有をさせるためである。その後,グループ内で挙げられた資質を共有したところ,偏りはあるものの,クラス全体で73件(12,17件/班)の項目が得られた。さらに,グループ単位で,出された資質の順位付けを行い,それぞれのカテゴリについて命名するよう指示したところ,Table 1が得られた。
音楽科の授業以外にも目を向けられるように配慮した導入の結果,最低限として社会人基礎力やコミュニケーションといった事柄が多く挙げられた。そのうえに,一般的事項として,状況対応力や生徒対応以外の職務を位置づけているものが多い。そして,理想としてはそれ以外の課外活動や地域活動への参加,国際化への対応といった広い視野についての言及がみられた。参加後のコメントとして,「音楽以外のことに目を向ける機会がこれまでにはなく,貴重な経験だった」等があり,学習目標はある程度達成されたと考えられる。
今日,大学における教職課程は大きな変革を迫られている。2010年度以降の入学生に必修となった「教職実践演習」は,「教員として最小限必要な資質能力の全体について,教職課程の履修を通じて,確実に身に付けさせるとともに,その資質能力の全体を明示的に確認すること」(文部科学省,2005)を目的の一つとしている。
しかし,いわゆる副教科の一つである音楽科の担当教員を目指す音楽学部に属する大学生は,「教員」としての意識は強くない。彼らには「音楽を教える人」という自覚は強くあるものの,教員という職務についての動機づけは高くない。これは,芸術系大学の閉鎖性や,音楽教員という特殊性に影響を受けたものと考えられる。また,彼らはノンバーバルな表現に慣れていることから,言語表現に対する苦手意識も強い。
そこで,本研究では教育実践演習の枠組みの中で,音楽科専攻の学生らを対象に「教員の資質」ワークショップを開発し,その内容と効果の検証を行うことを目的とする。なお,本ワークの学習目標は,3点を設定した。(1)個人の認識を広げる,(2)他者との協働体験と他者視点への気づきをもつ,(3)言語化へすることの抵抗を下げる
方 法
対象 音楽学系学部に所属する教職課程最終年度となる受講生32名。
時期 2017年度秋学期に実施。
ワークの構成 90分のプログラムとし,以下の流れで実践した。①演習の位置づけと必要性についての講義,②必要資料の読み込み,③個人の考える「教員の資質」のアイデア出し,④5~6人のグループでのアイデア共有,⑤グループで「最低限身に着けるべき(最低)」「できれば身に着けておく(一般)」「身に着けられることが理想(理想)」の3カテゴリに分類し,それぞれに名称を付ける,⑥クラス全体への発表・共有
結果と考察
受講生は5~6名の任意のグループに分かれてワークに参加した。まず,導入と位置付けた,「教員の職務とは,教員に求められる資質能力とは何か」についての講義のあと,個人ワークを実施した。個々人に与えられたワークシートには,先行研究,文献などから抽出された教員に必要な資質能力のカテゴリが提示され,「分類を参考にしながら,あなたの経験した学校,実習先で気づいた“教員に必要な資質”を行動レベルで具体的にあげなさい」という指示を記載した。これは,日常生活から離れた教員という職業について,具体的なイメージを喚起させ,他者と齟齬なく情報共有をさせるためである。その後,グループ内で挙げられた資質を共有したところ,偏りはあるものの,クラス全体で73件(12,17件/班)の項目が得られた。さらに,グループ単位で,出された資質の順位付けを行い,それぞれのカテゴリについて命名するよう指示したところ,Table 1が得られた。
音楽科の授業以外にも目を向けられるように配慮した導入の結果,最低限として社会人基礎力やコミュニケーションといった事柄が多く挙げられた。そのうえに,一般的事項として,状況対応力や生徒対応以外の職務を位置づけているものが多い。そして,理想としてはそれ以外の課外活動や地域活動への参加,国際化への対応といった広い視野についての言及がみられた。参加後のコメントとして,「音楽以外のことに目を向ける機会がこれまでにはなく,貴重な経験だった」等があり,学習目標はある程度達成されたと考えられる。