[PA26] オーセンティック概念に基づく算数授業の効果に関する実践研究
児童の資質・能力観の変容に着目して
Keywords:オーセンティク概念, 算数, 資質・能力
目 的
近年,コンピテンシー・ベースの学力形成が国内外で求められており,その学力形成のためにオーセンティック概念に着目した学習や授業への注目が高まっている。
本研究の目的は,オーセンティック概念に基づいて構成された算数科授業の実践を通じて,児童の資質・能力に関する自己評価がどのように変容するのかを実証的に明らかにすることである。
方 法
本研究は,前述の目的を達成するために,次の手順で行う。
調査時期 平成29年10月30日から11月22日まで実施した。
調査対象 都内国立大学附属小学校の3学級の児童(1組:35名,2組:34名,3組:35名,計104名)を対象に行った。
実践授業 小野・梶井(2017a)がデザインした第3学年「表とグラフ」の3種類の単元計画(「真正性・低デザイン」,「真正性・中デザイン」,「真正性・高デザイン」)に基づく授業を行った。授業を行う際には,調査対象である3学級を無作為に,3種類の単元計画のデザインに対応させた。
質問紙調査 調査対象児童のコンピテンシー・ベースの自己評価の変容を検討するために,小野・梶井(2017b)が作成した算数科で育むことが期待される「能力」の評価項目及び「資質」の評価項目を用いた「算数の学習に関する調査」を実施した。なお,オーセンティックな授業の効果を測定するために,この調査は実践授業において,単元を実施する前(事前調査)と,単元中の7時間目の後(事後調査)に実施した。
結 果
第一に,「能力」項目の事前,事後調査の縦断的データに対して潜在変数を仮定した共分散構造分析を行った。分析の結果得られたモデルの主な適合度指標は,GFI = 0.697,AGFI = 0.649,CFI = 0.804,RMSEA = 0.077であり,比較的当てはまりのよいモデルが得られた。
第二に,「資質」項目の事前,事後調査の縦断的データに対して潜在変数を仮定した共分散構造分析を行った。分析の結果,得られたモデルの主な適合度指標は,GFI = 0.770,AGFI = 0.710,CFI = 0.773,RMSEA = 0.089であり,「能力」の分析と同様に,比較的当てはまりのよいモデルが得られた。
「能力」及び「資質」項目それぞれの事後調査のデータに対して,クラスター分析を行った結果,調査対象の3学級と得られたクラスターとの間に有意な人数の偏りはみられなかった。オーセンティックな算数科授業と「能力」及び「資質」の因子構造の変化についての関連はみられなかった。
考 察
成果 「能力」及び「資質」の共分散構造分析の結果から,第3学年「表とグラフ」の学習を通じて,対象児童はコンピテンシー・ベースの学力に関する自己評価を変容させたことが明らかにできたことが成果である。
課題 「能力」及び「資質」の自己評価の変容に対する,オーセンティックな算数科授業の効果や影響は明確には示されなかったという結果から,継続的にオーセンティックな授業を実践することや、その授業過程における児童の学びの姿に見る変容の様相を質的に捉える必要性が課題として挙げられる。
引用・参考文献
小野健太郎・梶井芳明(2017a).「オーセンティック概念に基づく算数授業デザインの提案」『日本教育心理学会第59回発表論文集』,465.
小野健太郎・梶井芳明(2017b).「算数科で求められる『能力』『資質』の評価項目の開発」.『教育目標・評価学会第28回大会紀要』.
近年,コンピテンシー・ベースの学力形成が国内外で求められており,その学力形成のためにオーセンティック概念に着目した学習や授業への注目が高まっている。
本研究の目的は,オーセンティック概念に基づいて構成された算数科授業の実践を通じて,児童の資質・能力に関する自己評価がどのように変容するのかを実証的に明らかにすることである。
方 法
本研究は,前述の目的を達成するために,次の手順で行う。
調査時期 平成29年10月30日から11月22日まで実施した。
調査対象 都内国立大学附属小学校の3学級の児童(1組:35名,2組:34名,3組:35名,計104名)を対象に行った。
実践授業 小野・梶井(2017a)がデザインした第3学年「表とグラフ」の3種類の単元計画(「真正性・低デザイン」,「真正性・中デザイン」,「真正性・高デザイン」)に基づく授業を行った。授業を行う際には,調査対象である3学級を無作為に,3種類の単元計画のデザインに対応させた。
質問紙調査 調査対象児童のコンピテンシー・ベースの自己評価の変容を検討するために,小野・梶井(2017b)が作成した算数科で育むことが期待される「能力」の評価項目及び「資質」の評価項目を用いた「算数の学習に関する調査」を実施した。なお,オーセンティックな授業の効果を測定するために,この調査は実践授業において,単元を実施する前(事前調査)と,単元中の7時間目の後(事後調査)に実施した。
結 果
第一に,「能力」項目の事前,事後調査の縦断的データに対して潜在変数を仮定した共分散構造分析を行った。分析の結果得られたモデルの主な適合度指標は,GFI = 0.697,AGFI = 0.649,CFI = 0.804,RMSEA = 0.077であり,比較的当てはまりのよいモデルが得られた。
第二に,「資質」項目の事前,事後調査の縦断的データに対して潜在変数を仮定した共分散構造分析を行った。分析の結果,得られたモデルの主な適合度指標は,GFI = 0.770,AGFI = 0.710,CFI = 0.773,RMSEA = 0.089であり,「能力」の分析と同様に,比較的当てはまりのよいモデルが得られた。
「能力」及び「資質」項目それぞれの事後調査のデータに対して,クラスター分析を行った結果,調査対象の3学級と得られたクラスターとの間に有意な人数の偏りはみられなかった。オーセンティックな算数科授業と「能力」及び「資質」の因子構造の変化についての関連はみられなかった。
考 察
成果 「能力」及び「資質」の共分散構造分析の結果から,第3学年「表とグラフ」の学習を通じて,対象児童はコンピテンシー・ベースの学力に関する自己評価を変容させたことが明らかにできたことが成果である。
課題 「能力」及び「資質」の自己評価の変容に対する,オーセンティックな算数科授業の効果や影響は明確には示されなかったという結果から,継続的にオーセンティックな授業を実践することや、その授業過程における児童の学びの姿に見る変容の様相を質的に捉える必要性が課題として挙げられる。
引用・参考文献
小野健太郎・梶井芳明(2017a).「オーセンティック概念に基づく算数授業デザインの提案」『日本教育心理学会第59回発表論文集』,465.
小野健太郎・梶井芳明(2017b).「算数科で求められる『能力』『資質』の評価項目の開発」.『教育目標・評価学会第28回大会紀要』.