[PA28] 大学院生の研究に対する態度構造の変容
学部新卒院生を対象としたPAC分析による事例研究
Keywords:大学院生, 研究に対する態度構造の変容, PAC分析
研究の背景
日本語教育における大学院生の研究に対する意識や態度の研究はまだ少ない。石橋(2017)は,学部新卒院生の修士課程修了前の研究に対する態度構造をPAC分析により探った。その結果,修士課程の研究,論文執筆が院生に大きな自己成長感をもたらしていることが明らかになった。しかし,研究に対する態度構造がどのように変容し,自己成長感を感じるようになったかは明らかではない。
研究の目的と方法
目的:学部新卒院生の研究に対する態度構造の変容を探索する。方法:協力者:学部で日本語教育を専攻した新卒院生の女性(A)。研究に対する態度構造検討にはPAC分析(内藤,2002)を採用した。実施時期:大学院課程1年修了時と2年修了前。院生Aとはプライバシー保護の同意書を交わしている。
結果と考察
第1回目結果:デンドログラムから3つのクラスター(CL)とした。CL1は,人脈づくり,人に会う,外に出る,聞く,話す,でまとまっている。インタビューから,院生Aは研究だけでなく常に人との関わりを大切にしており,調査では国内外での調査依頼などで,人脈づくりや人と会って自分の研究の目的を伝えるなどで,どう話す,聞くかが関係していたとのことで,「人との関わり」と命名した。CL2は,一日の時間を大切にする,時間が必要,学生だけど学生じゃない気がする,図書館,でまとまっている。院生Aは家業で一定の役割を果たしているため,研究にかける労力と時間の調整に苦労したとのことで,「研究に関わる時間の管理」と命名した。CL3は,論理的,文章能力,正確性,大学の論文と違う,難しい,整理するの項目が入り,「論文執筆に対する思い」と命名された。
第2回目結果:デンドログラムより3つのクラスターとした。CL1は,人間関係,信頼関係,積極性,謙虚さ,行動力,意見を受け入れる,物事を客観的に見る,でまとまっており,研究とは人との関わりであり,大学院の先輩との関係,考えを積極的に述べ,謙虚に人の意見を聞くことにより客観的に物事がとらえられるようになったと述べている。院生Aの解釈から「研究に対する姿勢」と命名した。CL2は,正確性,思考力,文章力で,実際に修士論文を執筆した結果,重要なことということで,「修士論文執筆での重要点」と命名した。CL3は,伝達力,調査,難しい,でまとまっており,「実際の調査」と命名した。全体のイメージとして,第1回同様難しいという言葉があがったが,研究することで成長したと感じると述べている。修士論文を書きあげたことの満足感と自己成長感は非常に大きい。
考察:修士1年の第1回目と修士論文執筆後の第2回目のデンドログラムの変化で,院生Aは,言葉の使い方など抽象的になって,成長したと感じると述べている。確かにクラスターには大きな変化はないが,クラスター内の連想項目は抽象度があがっており,CL1の人間の関わりに研究活動により広がりと深さと客観性が追加されている。自己成長は,狭い研究に関してだけでなく,院生の生活における人との関わりに大きく影響を与えていることがわかる。学部新卒院生の場合,大学院の社会人学生や先輩学生,研究発表などでの研究者との関わりが大きく自己成長感の醸成に影響していることが推察される。院生AのPAC分析の結果から,大学院生への研究への支援の一つに,大学院内外での研究者としての自由な人間関係,お互いに研究レベルを向上させる環境整備が挙げられよう。
参考文献
石橋玲子(2017).大学院生の研究に対する態度構造を探る:学部新卒院生のPAC分析を通して,日本教育心理学会59回総会発表論文集206.
内藤哲雄(2002).PAC分析実践法入門(改訂版)ナカニシヤ出版
日本語教育における大学院生の研究に対する意識や態度の研究はまだ少ない。石橋(2017)は,学部新卒院生の修士課程修了前の研究に対する態度構造をPAC分析により探った。その結果,修士課程の研究,論文執筆が院生に大きな自己成長感をもたらしていることが明らかになった。しかし,研究に対する態度構造がどのように変容し,自己成長感を感じるようになったかは明らかではない。
研究の目的と方法
目的:学部新卒院生の研究に対する態度構造の変容を探索する。方法:協力者:学部で日本語教育を専攻した新卒院生の女性(A)。研究に対する態度構造検討にはPAC分析(内藤,2002)を採用した。実施時期:大学院課程1年修了時と2年修了前。院生Aとはプライバシー保護の同意書を交わしている。
結果と考察
第1回目結果:デンドログラムから3つのクラスター(CL)とした。CL1は,人脈づくり,人に会う,外に出る,聞く,話す,でまとまっている。インタビューから,院生Aは研究だけでなく常に人との関わりを大切にしており,調査では国内外での調査依頼などで,人脈づくりや人と会って自分の研究の目的を伝えるなどで,どう話す,聞くかが関係していたとのことで,「人との関わり」と命名した。CL2は,一日の時間を大切にする,時間が必要,学生だけど学生じゃない気がする,図書館,でまとまっている。院生Aは家業で一定の役割を果たしているため,研究にかける労力と時間の調整に苦労したとのことで,「研究に関わる時間の管理」と命名した。CL3は,論理的,文章能力,正確性,大学の論文と違う,難しい,整理するの項目が入り,「論文執筆に対する思い」と命名された。
第2回目結果:デンドログラムより3つのクラスターとした。CL1は,人間関係,信頼関係,積極性,謙虚さ,行動力,意見を受け入れる,物事を客観的に見る,でまとまっており,研究とは人との関わりであり,大学院の先輩との関係,考えを積極的に述べ,謙虚に人の意見を聞くことにより客観的に物事がとらえられるようになったと述べている。院生Aの解釈から「研究に対する姿勢」と命名した。CL2は,正確性,思考力,文章力で,実際に修士論文を執筆した結果,重要なことということで,「修士論文執筆での重要点」と命名した。CL3は,伝達力,調査,難しい,でまとまっており,「実際の調査」と命名した。全体のイメージとして,第1回同様難しいという言葉があがったが,研究することで成長したと感じると述べている。修士論文を書きあげたことの満足感と自己成長感は非常に大きい。
考察:修士1年の第1回目と修士論文執筆後の第2回目のデンドログラムの変化で,院生Aは,言葉の使い方など抽象的になって,成長したと感じると述べている。確かにクラスターには大きな変化はないが,クラスター内の連想項目は抽象度があがっており,CL1の人間の関わりに研究活動により広がりと深さと客観性が追加されている。自己成長は,狭い研究に関してだけでなく,院生の生活における人との関わりに大きく影響を与えていることがわかる。学部新卒院生の場合,大学院の社会人学生や先輩学生,研究発表などでの研究者との関わりが大きく自己成長感の醸成に影響していることが推察される。院生AのPAC分析の結果から,大学院生への研究への支援の一つに,大学院内外での研究者としての自由な人間関係,お互いに研究レベルを向上させる環境整備が挙げられよう。
参考文献
石橋玲子(2017).大学院生の研究に対する態度構造を探る:学部新卒院生のPAC分析を通して,日本教育心理学会59回総会発表論文集206.
内藤哲雄(2002).PAC分析実践法入門(改訂版)ナカニシヤ出版