[PA29] 現職教員と教員志望学生の授業観に関する研究(1)
授業観尺度の作成および構造の検討
Keywords:授業観, 授業観尺度, 教員志望学生
問題と目的
本研究の目的は,現職教員と教員志望学生の授業観の構造を検討することである。
筆者らはこれまで,現職教員と教員志望学生の児童・生徒観や学習指導行動の様相について検討を重ねてきた。このうち,﨑濱・藤田・林(2015)では,現職教員と教員志望学生の児童・生徒観および学習指導行動の様相を検討するための尺度を作成した。そして,作成した尺度を基に,現職教員と教員志望学生間,小学校教員と中学校教員間,希望校種間(教員養成大学学生が対象。取得免許状および教科は個々によって異なる),大学間(教員養成大学学生と一般大学教職課程志望者の間),学年間(教員養成大学学生が対象)において,児童・生徒観および学習指導行動の違いについて検討を重ねてきた(藤田ら,2015;林ら,2015)。藤田ら(2017)および林ら(2017)においては,教員養成大学および一般大学学生を対象に,文系―理系学生間の比較検討を行ってきた。
このように,児童・生徒観および学習指導行動の様相については検討を重ねてきたが,児童・生徒観や学習指導行動の背後にあると思われる授業観(授業というものをどのように捉えているかに関する信念)については今まであまり検討がなされてこなかった。
そこで本研究では,授業観をたずねるための尺度を作成し,その構造を検討することとした。
予備調査
方 法
調査参加者 近畿地方の大学生33名(男性25名,女性8名,平均年齢20.2歳 年齢は19歳~23歳)であった。
材料 自由記述質問紙
「「授業」とはどのようなものだと思いますか。思うところを自由に書いてください」「「良い授業」とはどのようなものだと思いますか。思うところを自由に書いてください」の2問についてそれぞれ,自由記述を求める形式であった。
手続き 調査は,心理学関係の授業の一部を利用して集団で行われた。調査実施にあたっては,本調査の質問への回答に同意した者だけが回答するよう求めた。
結 果
得られた回答は計104項目であった(「授業」に関する回答:45項目,「良い授業」に関する回答:59項目)。本研究では,授業観を「よい授業とはどのような授業であるかについての信念を指すもの」と定義することとし,3名の筆者により各項目についての内容的妥当性を検討した結果,最終的に36項目を使用することとした。
本 調 査
方 法
調査参加者 近畿地方の大学生・大学院生・現職教員478名(男性256名,女性222名,平均年齢19.5歳 年齢は18歳~60歳)であった。
材料 質問紙(1)授業観尺度:予備調査によって得られた36項目で構成され,1(まったくあてはまらない)~4(非常によくあてはまる)の4件法の尺度であった。
手続き 調査は,心理学関係の授業の一部を利用して集団で行われた。調査実施にあたっては,本調査に同意をした者だけが回答するよう求めた。
結果と考察
得られたデータについて,SPSS Ver.24を用いて因子分析(最尤法)を行った。固有値1以上,因子負荷量0.35以上,固有値の減衰率を考慮し,最終的に2因子を抽出した。
第1因子は,「教師が一方的にしゃべらず,児童・生徒が参加できる授業」「児童・生徒どうしでコミュニケーションがとれる授業」などの項目が高い負荷量を示した。全体として,授業への積極的な関与に関連する項目で構成されていると考えられることから,第1因子を「児童生徒の積極的関与(20項目;α=0.95)」因子と命名した。
第2因子は,「教師に新しい知識を教わることができる授業」「知らないことを学べる授業」などの項目が高い負荷量を示した。全体として,児童生徒の知識獲得に関連する項目で構成されていると考えられることから,第2因子を「知識獲得(15項目;α=0.92)」因子と命名した。
以上の結果を踏まえると,本研究における参加者の場合,よい授業というものを主に「児童生徒の積極的関与」「知識獲得」の2側面からとらえていることが考えられる。
本研究の目的は,現職教員と教員志望学生の授業観の構造を検討することである。
筆者らはこれまで,現職教員と教員志望学生の児童・生徒観や学習指導行動の様相について検討を重ねてきた。このうち,﨑濱・藤田・林(2015)では,現職教員と教員志望学生の児童・生徒観および学習指導行動の様相を検討するための尺度を作成した。そして,作成した尺度を基に,現職教員と教員志望学生間,小学校教員と中学校教員間,希望校種間(教員養成大学学生が対象。取得免許状および教科は個々によって異なる),大学間(教員養成大学学生と一般大学教職課程志望者の間),学年間(教員養成大学学生が対象)において,児童・生徒観および学習指導行動の違いについて検討を重ねてきた(藤田ら,2015;林ら,2015)。藤田ら(2017)および林ら(2017)においては,教員養成大学および一般大学学生を対象に,文系―理系学生間の比較検討を行ってきた。
このように,児童・生徒観および学習指導行動の様相については検討を重ねてきたが,児童・生徒観や学習指導行動の背後にあると思われる授業観(授業というものをどのように捉えているかに関する信念)については今まであまり検討がなされてこなかった。
そこで本研究では,授業観をたずねるための尺度を作成し,その構造を検討することとした。
予備調査
方 法
調査参加者 近畿地方の大学生33名(男性25名,女性8名,平均年齢20.2歳 年齢は19歳~23歳)であった。
材料 自由記述質問紙
「「授業」とはどのようなものだと思いますか。思うところを自由に書いてください」「「良い授業」とはどのようなものだと思いますか。思うところを自由に書いてください」の2問についてそれぞれ,自由記述を求める形式であった。
手続き 調査は,心理学関係の授業の一部を利用して集団で行われた。調査実施にあたっては,本調査の質問への回答に同意した者だけが回答するよう求めた。
結 果
得られた回答は計104項目であった(「授業」に関する回答:45項目,「良い授業」に関する回答:59項目)。本研究では,授業観を「よい授業とはどのような授業であるかについての信念を指すもの」と定義することとし,3名の筆者により各項目についての内容的妥当性を検討した結果,最終的に36項目を使用することとした。
本 調 査
方 法
調査参加者 近畿地方の大学生・大学院生・現職教員478名(男性256名,女性222名,平均年齢19.5歳 年齢は18歳~60歳)であった。
材料 質問紙(1)授業観尺度:予備調査によって得られた36項目で構成され,1(まったくあてはまらない)~4(非常によくあてはまる)の4件法の尺度であった。
手続き 調査は,心理学関係の授業の一部を利用して集団で行われた。調査実施にあたっては,本調査に同意をした者だけが回答するよう求めた。
結果と考察
得られたデータについて,SPSS Ver.24を用いて因子分析(最尤法)を行った。固有値1以上,因子負荷量0.35以上,固有値の減衰率を考慮し,最終的に2因子を抽出した。
第1因子は,「教師が一方的にしゃべらず,児童・生徒が参加できる授業」「児童・生徒どうしでコミュニケーションがとれる授業」などの項目が高い負荷量を示した。全体として,授業への積極的な関与に関連する項目で構成されていると考えられることから,第1因子を「児童生徒の積極的関与(20項目;α=0.95)」因子と命名した。
第2因子は,「教師に新しい知識を教わることができる授業」「知らないことを学べる授業」などの項目が高い負荷量を示した。全体として,児童生徒の知識獲得に関連する項目で構成されていると考えられることから,第2因子を「知識獲得(15項目;α=0.92)」因子と命名した。
以上の結果を踏まえると,本研究における参加者の場合,よい授業というものを主に「児童生徒の積極的関与」「知識獲得」の2側面からとらえていることが考えられる。