[PB09] 青年期前期における母子間葛藤と養育態度の縦断的検討
交差遅延効果モデルによる検討
Keywords:母子間葛藤, 養育態度, 縦断調査
目 的
青年期では多様な問題が顕在化し,親との葛藤が生じやすくなると言われている(西平,1990)。
これまでに,青年期の親子間葛藤の背景要因や影響要因の研究が米国では数多くなされている。Dekovic(1999)は親子間葛藤の頻度と子どもの抑うつとの間には正の相関関係があると述べている。Klahr et al(2011)は親子間葛藤の頻度は子どもの反社会的行動を予測すると報告している。また,Steeger et al(2013)は,6年生の子どもと母親を対象に3時点縦断的調査を行い,子どもの攻撃性・抑うつ,母子間葛藤,母親の心理的統制の交差遅延効果モデルを検討し,子どもの攻撃性・抑うつは次年度の母子間葛藤を予測し,母子間葛藤は次年度の母親の心理的統制を予測する,また6年生から7年生にかけて,母子間葛藤は次年度の攻撃性・抑うつを,心理的統制は次年度の母子間葛藤を予測すると報告している。そこで本研究は,小学6年生とその母親を対象に,3時点の縦断調査を行い,母子間葛藤と養育態度の関連,また交差遅延効果モデルを検証する。
方 法
1.調査対象者:小学6年生とその母親(T1),1年後(T2),2年後(T3)のすべての調査に回答した235組を分析対象とした(子どもの性別は男101人,女134人)。
2.調査期日:T1:2014年12月,T2:2015年12月,T3:2016年12月
3.手続き:担任教諭から調査用紙を児童生徒に配布し,調査趣旨に同意が得られた児童生徒と母親が自宅で実施して,終了後担任教諭に提出した。
4.子どもと母親:①親子間葛藤尺度(CBQ parallel version)(Sturge-Apple et al., 2003);22項目(4件法,1点~4点)の日本語翻訳版を実施した。②養育態度尺度;養育スキル尺度(渡邉・平石,2014)下位尺度である理解尊重スキル10項目(6件法,1点~6点)を用いた。理解尊重スキルとは,子どもの気持ちに配慮したり,子どもに肯定的なメッセージやコミュニケーションを用いて子どもに対する理解を深める養育態度である。
結果・考察
1.母子間葛藤と理解尊重スキルの関連
T1からT3の母子間葛藤と理解尊重スキルの関連を検討するために,母子別にピアソンの積率相関係数を求めた(Table 1)。母子間葛藤,理解尊重スキルの時点間はすべて有意な正の相関関係,また母子間葛藤と理解尊重スキルの間にはすべて有意な負の相関関係が認められた。
次に,母子間葛藤が次年度の理解尊重スキルを予測するのか,あるいは理解尊重スキルが次年度の母子間葛藤を予測するのか明らかにするために,双方向の因果関係を含む3時点の交差遅延効果モデルを母子別に検討した(Figure 1)。適合度は母子共に,CFI=1.000, RMSEA=.000であった。母子ともに母子間葛藤と理解尊重スキルのT1からT2,T2からT3への係数は高い値を示しており,安定していると推察される。母子ともにT1の母子間葛藤からT2の理解尊重スキルに有意な負のパスを示しており,小学6年生に母子間葛藤が生じると中学1年生では理解尊重スキルが減少していることが考えられる。子どもが認知するT1の理解尊重スキルからT2の母子間葛藤に負のパスを示しており,小学6年生の時に理解尊重スキルが不足していると中学1年生では母子間葛藤が生じることが推察される。しかし,母親が認知するT2の理解尊重スキルからT3の母子間葛藤に正のパスを示しており,中学1年生の時に理解尊重スキルを用いる行動をしていても,中学2年生では母子間葛藤が生じることが推察される。1年間隔の調査のため,中学1年時では母親の養育態度を良いと認知していたが,2年生になってから,良好ではないと認知している可能性も考えられる。面接調査などを実施して,検討する必要があるだろう。
青年期では多様な問題が顕在化し,親との葛藤が生じやすくなると言われている(西平,1990)。
これまでに,青年期の親子間葛藤の背景要因や影響要因の研究が米国では数多くなされている。Dekovic(1999)は親子間葛藤の頻度と子どもの抑うつとの間には正の相関関係があると述べている。Klahr et al(2011)は親子間葛藤の頻度は子どもの反社会的行動を予測すると報告している。また,Steeger et al(2013)は,6年生の子どもと母親を対象に3時点縦断的調査を行い,子どもの攻撃性・抑うつ,母子間葛藤,母親の心理的統制の交差遅延効果モデルを検討し,子どもの攻撃性・抑うつは次年度の母子間葛藤を予測し,母子間葛藤は次年度の母親の心理的統制を予測する,また6年生から7年生にかけて,母子間葛藤は次年度の攻撃性・抑うつを,心理的統制は次年度の母子間葛藤を予測すると報告している。そこで本研究は,小学6年生とその母親を対象に,3時点の縦断調査を行い,母子間葛藤と養育態度の関連,また交差遅延効果モデルを検証する。
方 法
1.調査対象者:小学6年生とその母親(T1),1年後(T2),2年後(T3)のすべての調査に回答した235組を分析対象とした(子どもの性別は男101人,女134人)。
2.調査期日:T1:2014年12月,T2:2015年12月,T3:2016年12月
3.手続き:担任教諭から調査用紙を児童生徒に配布し,調査趣旨に同意が得られた児童生徒と母親が自宅で実施して,終了後担任教諭に提出した。
4.子どもと母親:①親子間葛藤尺度(CBQ parallel version)(Sturge-Apple et al., 2003);22項目(4件法,1点~4点)の日本語翻訳版を実施した。②養育態度尺度;養育スキル尺度(渡邉・平石,2014)下位尺度である理解尊重スキル10項目(6件法,1点~6点)を用いた。理解尊重スキルとは,子どもの気持ちに配慮したり,子どもに肯定的なメッセージやコミュニケーションを用いて子どもに対する理解を深める養育態度である。
結果・考察
1.母子間葛藤と理解尊重スキルの関連
T1からT3の母子間葛藤と理解尊重スキルの関連を検討するために,母子別にピアソンの積率相関係数を求めた(Table 1)。母子間葛藤,理解尊重スキルの時点間はすべて有意な正の相関関係,また母子間葛藤と理解尊重スキルの間にはすべて有意な負の相関関係が認められた。
次に,母子間葛藤が次年度の理解尊重スキルを予測するのか,あるいは理解尊重スキルが次年度の母子間葛藤を予測するのか明らかにするために,双方向の因果関係を含む3時点の交差遅延効果モデルを母子別に検討した(Figure 1)。適合度は母子共に,CFI=1.000, RMSEA=.000であった。母子ともに母子間葛藤と理解尊重スキルのT1からT2,T2からT3への係数は高い値を示しており,安定していると推察される。母子ともにT1の母子間葛藤からT2の理解尊重スキルに有意な負のパスを示しており,小学6年生に母子間葛藤が生じると中学1年生では理解尊重スキルが減少していることが考えられる。子どもが認知するT1の理解尊重スキルからT2の母子間葛藤に負のパスを示しており,小学6年生の時に理解尊重スキルが不足していると中学1年生では母子間葛藤が生じることが推察される。しかし,母親が認知するT2の理解尊重スキルからT3の母子間葛藤に正のパスを示しており,中学1年生の時に理解尊重スキルを用いる行動をしていても,中学2年生では母子間葛藤が生じることが推察される。1年間隔の調査のため,中学1年時では母親の養育態度を良いと認知していたが,2年生になってから,良好ではないと認知している可能性も考えられる。面接調査などを実施して,検討する必要があるだろう。