[PB22] ヒューマンエラーに対する“個性別”指導のための基礎調査
内的特性とヒューマンエラー認知との関係
Keywords:ヒューマンエラー, “個性別”指導, 内的特性
日常のヒューマンエラーに対する認識の特徴を明らかにすることを目的とした。調査1では,「ミス記録帳」を作成し,エラーの収集・分類とその重大さや自己意識,気付いた経緯といった認識との関係を検討した。調査2では,家事場面におけるエラーに焦点を当て,その発生に対する認識の特徴を明らかにし,その認識の特徴と内的な特性との関係性を調べた。
調査1
方法
調査対象者 大学生48名であった。
ミス記録帳 連続3日間のリアルタイムで起きたエラーを記録する用紙と,大学入学から記録期間までの大学在学時に起こったエラーの記録用紙から成る「ミス記録帳」を作成した。携帯のしやすさや記入のしやすさを工夫し,日常のヒューマンエラーを収集するのに利便性が高かった。
メタ認知測定尺度 先行研究(懸田ら,2007など)からふさわしいと考えられる項目を抜粋した。
手続き 「ミス記録帳」を常に携帯させ,連続3日間,エラーの発生と同時にその記録をさせた。また,メタ認知測定尺度に回答させた。
結果と考察 収集したエラーの分類を表1に示した。分析の結果,エラーの分類とエラーに対する認識(エラー時期,重大さの自己評価,エラーへの自己意識,気付いたタイミング)との間に違いがあることが明らかとなった。特に,スリップのうち「脱落と転換」に特徴的な結果が示された(図1)。また,エラーへの自己認識によりエラーの種類の分布が異なることが明らかとなった。さらに,エラーへの自己認識とメタ認知能力と間に負の相関関係が見られた。
調査2
方法
調査対象者 日常的に家事を行う12名(男性2名,女性10名,平均年齢26。8歳)が参加した。
質問紙 「メタ認知能力」,「特性的自己効力感」および「性格特性Big Five」の測定を行った。
手続き 質問紙に回答させた後,家事場面のエラー事例を聴取すると同時に,各エラーに対しするいきさつや重大さの評価,その後の対処などの質問に回答させた。
結果と考察 エラーの捉え方を分類した結果,1)エラーが発生した場合にもその後の対処が可能であればエラーと見なさず,深刻に受け止めない傾向があるタイプ=「対処型」,2)エラーを抑止するために計画ある行動をし,エラーを深刻に受け止める傾向をもつタイプ=「計画型」であった。対処型は「勤勉性因子」の評価が低かったのに対し,計画型は高かった。
総合考察
エラーを認識する際,個人によってその認識の段階と定義に個人差があることがわかった。ヒューマンエラーに対する捉え方の違いは,その後のエラーの再発防止策に対する姿勢においても違いをもたらすといえる。エラーによる損失を最小限にするには,発生の初段階でエラーであると認識することが必要であり,そのためには日常から行動に対し認知するメタ認知能力を高めることが有効である。
付 記
本研究は山崎絵梨菜(2010年卒業)との卒業論文をもとに再構成したものである。
調査1
方法
調査対象者 大学生48名であった。
ミス記録帳 連続3日間のリアルタイムで起きたエラーを記録する用紙と,大学入学から記録期間までの大学在学時に起こったエラーの記録用紙から成る「ミス記録帳」を作成した。携帯のしやすさや記入のしやすさを工夫し,日常のヒューマンエラーを収集するのに利便性が高かった。
メタ認知測定尺度 先行研究(懸田ら,2007など)からふさわしいと考えられる項目を抜粋した。
手続き 「ミス記録帳」を常に携帯させ,連続3日間,エラーの発生と同時にその記録をさせた。また,メタ認知測定尺度に回答させた。
結果と考察 収集したエラーの分類を表1に示した。分析の結果,エラーの分類とエラーに対する認識(エラー時期,重大さの自己評価,エラーへの自己意識,気付いたタイミング)との間に違いがあることが明らかとなった。特に,スリップのうち「脱落と転換」に特徴的な結果が示された(図1)。また,エラーへの自己認識によりエラーの種類の分布が異なることが明らかとなった。さらに,エラーへの自己認識とメタ認知能力と間に負の相関関係が見られた。
調査2
方法
調査対象者 日常的に家事を行う12名(男性2名,女性10名,平均年齢26。8歳)が参加した。
質問紙 「メタ認知能力」,「特性的自己効力感」および「性格特性Big Five」の測定を行った。
手続き 質問紙に回答させた後,家事場面のエラー事例を聴取すると同時に,各エラーに対しするいきさつや重大さの評価,その後の対処などの質問に回答させた。
結果と考察 エラーの捉え方を分類した結果,1)エラーが発生した場合にもその後の対処が可能であればエラーと見なさず,深刻に受け止めない傾向があるタイプ=「対処型」,2)エラーを抑止するために計画ある行動をし,エラーを深刻に受け止める傾向をもつタイプ=「計画型」であった。対処型は「勤勉性因子」の評価が低かったのに対し,計画型は高かった。
総合考察
エラーを認識する際,個人によってその認識の段階と定義に個人差があることがわかった。ヒューマンエラーに対する捉え方の違いは,その後のエラーの再発防止策に対する姿勢においても違いをもたらすといえる。エラーによる損失を最小限にするには,発生の初段階でエラーであると認識することが必要であり,そのためには日常から行動に対し認知するメタ認知能力を高めることが有効である。
付 記
本研究は山崎絵梨菜(2010年卒業)との卒業論文をもとに再構成したものである。