[PB59] 院内学級の現状と課題
教員を対象とした調査から
キーワード:院内学級, 病弱教育, 特別支援教育
問題および目的
近年,医療の進歩等による入院期間の短期化や,短期間で入退院を繰り返す者,退院後も引き続き治療や生活規制が必要なために小・中学校等への通学が困難な者への対応など,病院等に入院又は通院して治療を受けている児童生徒等を取り巻く環境は大きく変化している(文部科学省,2015)。そこで,本調査では全国の院内学級を担当している教員を対象に,院内学級での教育の優れているところ,難しいところ,気をつけていること・心掛けていること,院内学級の制度についての意識を明らかにすることを目的とし,その結果を踏まえ,院内学級の子どもたちには,どのような支援が必要であるのか,また求められる院内学級制度はどのようなものであるのかについて考察を行うものとする。
方 法
(1)調査協力者 全国病弱虚弱教育研究連盟のホームページから,院内学級(ここでは病院内に学校・学級のある場合を院内学級とし,特別支援学校,特別支援学校分校・分教室,特別支援学級すべてを含むものとする)を調べ,全国の院内学級(小学校160校165部・中学校104校109部・特別支援学校27校220部)に調査紙を郵送し186部を回収した(回収率37.7%)。
(2)調査時期 平成29年2月1日~2月20日。
(3)調査内容 教員数(常勤・非常勤),性別,年齢,教員歴,院内学級の教員歴,在籍児童生徒数,院内学級の優れているところ,難しいところ,気をつけていること・心掛けていること,前籍校との連絡頻度,院内学級制度に対する意見等。
なお,本調査は佛教大学「人を対象とする研究」倫理審査委員会の審査を受け承認されている。
結 果
(1)基本属性 性別については,男性42名(22.6%),女性135名(72.6%),無回答9名(4.8%),年代は20代10名(5.4%),30代13名(7.0%),40代29名(15.6%),50代101名(54.3%),60代24名(12.9%),無回答9名(4.8%)であった。
(2)教員歴と院内学級教員歴 教員歴では「30~34年」,「35~39年」,「25~29年」の順に多かった。一方,院内学級教員歴では「1~3年未満」「3~5年未満」「5~10年未満」という順であった。本調査から,院内学級を担当しているのは,院内学級教員歴としては長くはないが,教員としては長年勤務しているベテランの教員が担当している傾向にあることが明らかになった。
2.院内学級での指導内容や指導方法について
(1)優れているところ 「院内学級で児童生徒を教えるにあたり,通常の小・中・高・特別支援学校などよりも優れていると思うところはありますか」という質問に対し,回答の多かったものは「個に応じた指導ができる」161名,「人数が少ないため手厚い指導ができる」120名,「児童生徒との距離が近い」100名という結果であった。
(2)困っていること 「院内学級で児童生徒を教えるにあたり,困っていることはありますか」という質問に対し,回答の多かったものは「学習内容の制約」95名,「施設・設備の不足」89名,「学習時間の制約」,「児童生徒の心理的ケア」88名という結果であった。また,自由記述でも困っていることを尋ね,KJ法により分類した。その結果,回答が多かったのは,「異学年・異学校指導」26名,「個に応じた指導」23名,「実験・体験」21名であった。
(3)院内学級の教員として最も気をつけていること・心がけていることについて 「院内学級の教員として,児童生徒に対して最も気をつけていること・心がけていることを教えてください」という質問に対し自由記述で回答を求めた。その回答をKJ法で分類した。その結果,「心的ケア・安定」と回答した教員が50名で最も多く,次いで「前向きな雰囲気づくり」が46名,「復学支援」が33名であった。
(4)院内学級の制度について 「現在の院内学級制度に満足していますか」という質問を対し,「はい」66名(35.5%),「いいえ」101名(54.3%),「無回答」19名(10.2%)という回答を得た。また,それぞれを選んだ理由について,自由記述で回答を求めた。「はい」と回答した教員の回答をKJ法で分類した結果,肯定的な意見としては,「入院中の学習保障ができる」ということや,「院内学級の役割・存在が大きい」ということが多く示され,そこに院内学級や病弱教育の意義があると言える。しかし,「院内学級制度に満足している」と回答した教員であっても,「学籍の扱いの問題」や「専門教員の不足」といった否定的な意見が出ていた。「いいえ」と回答した教員も同様の問題を記述しており,「学級存続の危機」や「高校生への支援の不十分さ」といった課題もあげられていた。
近年,医療の進歩等による入院期間の短期化や,短期間で入退院を繰り返す者,退院後も引き続き治療や生活規制が必要なために小・中学校等への通学が困難な者への対応など,病院等に入院又は通院して治療を受けている児童生徒等を取り巻く環境は大きく変化している(文部科学省,2015)。そこで,本調査では全国の院内学級を担当している教員を対象に,院内学級での教育の優れているところ,難しいところ,気をつけていること・心掛けていること,院内学級の制度についての意識を明らかにすることを目的とし,その結果を踏まえ,院内学級の子どもたちには,どのような支援が必要であるのか,また求められる院内学級制度はどのようなものであるのかについて考察を行うものとする。
方 法
(1)調査協力者 全国病弱虚弱教育研究連盟のホームページから,院内学級(ここでは病院内に学校・学級のある場合を院内学級とし,特別支援学校,特別支援学校分校・分教室,特別支援学級すべてを含むものとする)を調べ,全国の院内学級(小学校160校165部・中学校104校109部・特別支援学校27校220部)に調査紙を郵送し186部を回収した(回収率37.7%)。
(2)調査時期 平成29年2月1日~2月20日。
(3)調査内容 教員数(常勤・非常勤),性別,年齢,教員歴,院内学級の教員歴,在籍児童生徒数,院内学級の優れているところ,難しいところ,気をつけていること・心掛けていること,前籍校との連絡頻度,院内学級制度に対する意見等。
なお,本調査は佛教大学「人を対象とする研究」倫理審査委員会の審査を受け承認されている。
結 果
(1)基本属性 性別については,男性42名(22.6%),女性135名(72.6%),無回答9名(4.8%),年代は20代10名(5.4%),30代13名(7.0%),40代29名(15.6%),50代101名(54.3%),60代24名(12.9%),無回答9名(4.8%)であった。
(2)教員歴と院内学級教員歴 教員歴では「30~34年」,「35~39年」,「25~29年」の順に多かった。一方,院内学級教員歴では「1~3年未満」「3~5年未満」「5~10年未満」という順であった。本調査から,院内学級を担当しているのは,院内学級教員歴としては長くはないが,教員としては長年勤務しているベテランの教員が担当している傾向にあることが明らかになった。
2.院内学級での指導内容や指導方法について
(1)優れているところ 「院内学級で児童生徒を教えるにあたり,通常の小・中・高・特別支援学校などよりも優れていると思うところはありますか」という質問に対し,回答の多かったものは「個に応じた指導ができる」161名,「人数が少ないため手厚い指導ができる」120名,「児童生徒との距離が近い」100名という結果であった。
(2)困っていること 「院内学級で児童生徒を教えるにあたり,困っていることはありますか」という質問に対し,回答の多かったものは「学習内容の制約」95名,「施設・設備の不足」89名,「学習時間の制約」,「児童生徒の心理的ケア」88名という結果であった。また,自由記述でも困っていることを尋ね,KJ法により分類した。その結果,回答が多かったのは,「異学年・異学校指導」26名,「個に応じた指導」23名,「実験・体験」21名であった。
(3)院内学級の教員として最も気をつけていること・心がけていることについて 「院内学級の教員として,児童生徒に対して最も気をつけていること・心がけていることを教えてください」という質問に対し自由記述で回答を求めた。その回答をKJ法で分類した。その結果,「心的ケア・安定」と回答した教員が50名で最も多く,次いで「前向きな雰囲気づくり」が46名,「復学支援」が33名であった。
(4)院内学級の制度について 「現在の院内学級制度に満足していますか」という質問を対し,「はい」66名(35.5%),「いいえ」101名(54.3%),「無回答」19名(10.2%)という回答を得た。また,それぞれを選んだ理由について,自由記述で回答を求めた。「はい」と回答した教員の回答をKJ法で分類した結果,肯定的な意見としては,「入院中の学習保障ができる」ということや,「院内学級の役割・存在が大きい」ということが多く示され,そこに院内学級や病弱教育の意義があると言える。しかし,「院内学級制度に満足している」と回答した教員であっても,「学籍の扱いの問題」や「専門教員の不足」といった否定的な意見が出ていた。「いいえ」と回答した教員も同様の問題を記述しており,「学級存続の危機」や「高校生への支援の不十分さ」といった課題もあげられていた。