[PC51] 青年期における自己決定性の発達的変化
Keywords:自己決定性, 横断的調査, 青年期
問題と目的
現代社会において自ら主体的に課題に向き合い,より良い社会と人生の創り手となる力を身につけることの重要性は高く(文部科学省,2016)高等教育においても主体的に行動できる人材の育成が求められている(文部科学省,2012)。しかし,主体性や主体的行動を明確に定義した研究は少なく,それは主体性概念の多様性(田畑,2016)のためと推測される。そこで本研究では,多様な要素を持つ主体性概念の下位概念として自己決定性を位置づける。自己決定性は自己決定理論(Deci & Ryan,2002)を中心に豊富な知見が蓄積されてきたが,自己決定理論は文化的共通性がある(Deci & Ryan,2002)としつつも,より具体的な領域において文化による独自性が指摘されている(Agawa & Takeuchi,2016)。
日本では他者との協調が自己価値と関わることが指摘されており(Kitayama & Uchida,2003),主体的に自己決定するためには他者との関係性という視点も組み込むことが有意義と考えられる。そこで本研究では,他者から社会的に影響を受けた上での意思決定と主体的な意思決定を包括的に捉え,主体性の涵養が求められる青年期における発達的変化を検討することを目的とする。
方 法
中学生431名(平均年齢14.60歳;男子224名,女子207名),高校生250名(平均年齢16.58歳;男子125名,女子125名),大学生843名(平均年齢19.38歳;男子683名,女子160名)に対して質問紙調査を実施した。そのうち,学校段階と性別で対応づけるため,各学校段階で男女125名ずつ(計750名)となるように中学生と大学生の調査対象者からランダムに分析対象者を抽出した。調査は自由意志によって行われ,回答しないことによる不利益が生じないこと等を明示した。使用尺度は岩城(2011)の主体性・被影響性尺度2因子22項目のうち,高校生や大学生にも適用可能と判断した15項目であり,5件法で回答を求めた。分析にはR(ver3.4.2)を用いた。
結 果
まず,分析対象者全体で重み付け最小二乗法・オブリミン回転による探索的因子分析(EFA)を行った。単純構造が得られるまで項目を順次削除し,最終的に各学校段階共通の12項目3因子構造が採用された。原尺度とは異なる因子構造であったため,第1因子から順に「自己選択」「反論耐性の低さ」「同調的選択」と命名した(Table 1)。
次に,EFAの結果を基に多母集団同時分析による確認的因子分析を行った。母数の推定には対角重み付き最小二乗法を用いた。配置不変モデルから順次等値制約をかけた結果,各学校段階で因子負荷量,切片,誤差分散に等値制約を課した測定不変モデルが採用された(CFA=.99,RMSEA =.02)。このモデルに平均構造を導入した結果,「自己選択」は高校生が最も低く,「同調的選択」は中学生が最も低いことが示された(Table 2)。
考 察
本研究では,主体性の下位概念と位置付けた自己決定性を他者との関係性も含めて捉え,横断的調査による発達的変化を検討した。多母集団同時分析の結果から,中学生では自ら意思選択する傾向が強いが,高校生では他者からの影響を受けやすく,大学生では自己と他者を統合した自己決定性が獲得されることが示唆された。以上より,特に高校生では主体的な自己選択を支持する関わりが重要であると考えられた。
現代社会において自ら主体的に課題に向き合い,より良い社会と人生の創り手となる力を身につけることの重要性は高く(文部科学省,2016)高等教育においても主体的に行動できる人材の育成が求められている(文部科学省,2012)。しかし,主体性や主体的行動を明確に定義した研究は少なく,それは主体性概念の多様性(田畑,2016)のためと推測される。そこで本研究では,多様な要素を持つ主体性概念の下位概念として自己決定性を位置づける。自己決定性は自己決定理論(Deci & Ryan,2002)を中心に豊富な知見が蓄積されてきたが,自己決定理論は文化的共通性がある(Deci & Ryan,2002)としつつも,より具体的な領域において文化による独自性が指摘されている(Agawa & Takeuchi,2016)。
日本では他者との協調が自己価値と関わることが指摘されており(Kitayama & Uchida,2003),主体的に自己決定するためには他者との関係性という視点も組み込むことが有意義と考えられる。そこで本研究では,他者から社会的に影響を受けた上での意思決定と主体的な意思決定を包括的に捉え,主体性の涵養が求められる青年期における発達的変化を検討することを目的とする。
方 法
中学生431名(平均年齢14.60歳;男子224名,女子207名),高校生250名(平均年齢16.58歳;男子125名,女子125名),大学生843名(平均年齢19.38歳;男子683名,女子160名)に対して質問紙調査を実施した。そのうち,学校段階と性別で対応づけるため,各学校段階で男女125名ずつ(計750名)となるように中学生と大学生の調査対象者からランダムに分析対象者を抽出した。調査は自由意志によって行われ,回答しないことによる不利益が生じないこと等を明示した。使用尺度は岩城(2011)の主体性・被影響性尺度2因子22項目のうち,高校生や大学生にも適用可能と判断した15項目であり,5件法で回答を求めた。分析にはR(ver3.4.2)を用いた。
結 果
まず,分析対象者全体で重み付け最小二乗法・オブリミン回転による探索的因子分析(EFA)を行った。単純構造が得られるまで項目を順次削除し,最終的に各学校段階共通の12項目3因子構造が採用された。原尺度とは異なる因子構造であったため,第1因子から順に「自己選択」「反論耐性の低さ」「同調的選択」と命名した(Table 1)。
次に,EFAの結果を基に多母集団同時分析による確認的因子分析を行った。母数の推定には対角重み付き最小二乗法を用いた。配置不変モデルから順次等値制約をかけた結果,各学校段階で因子負荷量,切片,誤差分散に等値制約を課した測定不変モデルが採用された(CFA=.99,RMSEA =.02)。このモデルに平均構造を導入した結果,「自己選択」は高校生が最も低く,「同調的選択」は中学生が最も低いことが示された(Table 2)。
考 察
本研究では,主体性の下位概念と位置付けた自己決定性を他者との関係性も含めて捉え,横断的調査による発達的変化を検討した。多母集団同時分析の結果から,中学生では自ら意思選択する傾向が強いが,高校生では他者からの影響を受けやすく,大学生では自己と他者を統合した自己決定性が獲得されることが示唆された。以上より,特に高校生では主体的な自己選択を支持する関わりが重要であると考えられた。