The 60th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

Presentation information

ポスター発表

[PD] ポスター発表 PD(01-70)

Sun. Sep 16, 2018 10:00 AM - 12:00 PM D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号10:00~11:00 偶数番号11:00~12:00

[PD43] 連絡帳の文体が保護者の保育者に対する印象に及ぼす効果

植村善太郎 (福岡教育大学)

Keywords:連絡帳, 保育者, コミュニケーション

問  題
 近年,教育現場では保護者との連携や,保護者支援の重要性が高く認識されるようになっており,保育現場においても同様である。平成30年4月から適用される「保育所保育指針」についても,その改定の趣旨の一つとして,「保護者・家庭及び地域と連携した子育て支援の必要性」が挙げられており,保護者連携は保育者にとって大きな職務となっている。その一方で,多くの保育者や保育者志望学生は,保護者とのコミュニケーションに対して,苦手意識を有していることが知られている(中平・馬場・高橋, 2014)。善本(2003)によると,保護者とのコミュニケーションが困難な場面には,①困難なコミュニケーション状況を打開する,②複雑な家庭環境におかれた保護者に共感し,積極的に働きかける,③積極的に自己を開示することが挙げられており,多くの保育者や保育者を目指す人にとって,重い課題になっていることがうかがわれる。
 コミュニケーションには,対面,電話など様々な状況があるが,保育者にとっては連絡帳上でのコミュニケーションは頻度が高く,重要性が高いと考えられる。実際,松本(2010)によると,保育者の中で連絡帳を書くことに不安を感じる人が少なくないとされている。そこで,本研究では,連絡帳における保育者の文体が,保護者にどのような印象を形成するかについて検討した。

方  法
調査参加者 子どもが保育所に通う保護者113名(女性106名,男性7名)から回答を得た。平均年齢は34.17歳だった。
調査内容 連絡帳上で,保護者からの子どもの育ちについての相談が行われた後の保育者側の返信文として,4つの文章を提示し,それぞれの文章に対して,[安心できる−不安になる],[好感がもてる−好感がもてない],[信頼できる−信頼できない],[思いが伝わる−思いが伝わらない],[わかりやすい−わかりにくい]の5項目について,5段階で評定を求めた。4つの文章は,[丁寧−フランク]と[終助詞の有無]の2要因を直交させて作成した。例えば,フランクで終助詞がない文章としては,次のような文章を用いた。
「園ではお友達と遊んでいて手が出ることはないです。
K君は一人遊びを楽しみたいのかな??
2~3歳という年齢は,“一人で遊ぶのが楽しい!“という時期なんです。
一人遊びをたっぷりと楽しみながら,これから2人で仲良く遊べる時間が増えていくと
いいなあ…♡ 怪我につながらないように注意しつつ,K君の一人遊びを楽しみたい
という気持ちを尊重して見守っていきましょう。」
調査の手続き 協力が得られた4つの保育所に調査用紙の配布を依頼し,約1週間後に回収した。対象者には,質問紙の冒頭で調査参加意志を確認し,参加に同意が得られた対象者から回答を得た。

結果と考察
 保育者の文章に対する印象を評定する5項目は,ひとまとめにして,「印象の良好さ」尺度とした。[丁寧−フランク]と[終助詞の有無]の繰り返しのある2要因分散分析を行った。その結果,[丁寧-フランク]において有意な主効果がみられた(F(1,427)=87.59, p<.001)。他の有意な主効果,交互作用は検出されなかった。この結果から,保護者からの相談に対応する状況では,丁寧な文体が,好印象を形成することが分かった(Figure 1)。

付  記
 本研究は,金丸美希・東夏実・渡邉美菜が,2016年度に福岡教育大学教育学部において卒業研究として行った調査データを,本人達から許諾を得た上で,筆者が独自に検討したものである。記して謝意を表します。