[PE10] 児童期と青年期の友人関係における排他性に関する研究2
要因関係の男女差に着目して
Keywords:児童期, 青年期, 排他性
問題と目的
児童期後期以降,児童は少人数で構成される固定化された仲間集団を形成するようになる。特定の友人に対する親密性が高まる一方で,自集団以外の他者や他集団を寄せ付けない強固な排他性を持つようになる。このような点から,友人関係における排他性に影響を与える要因について検討することは重要な課題であるといえる。そこで本研究では,「受容性」と「仲間集団の閉鎖性」が「排他性」に影響を与え,「他者との関わり経験」「興味・関心の広さ」および「自尊感情」が対人受容性に影響をあたえるというモデルを想定し,要因間の関係性について検討を行った。また,仲間集団は性別によって異なる文化をもつことが指摘されてきているため,性別による要因間の関係性の違いについても検討した。
方 法
1.対象:小学5年生311名(男子151名,女子160名),中学2年生125名(男子67名,女子58名)。欠損値を含む生徒を除いた368名(有効回収率84.4%)の内,仲間集団に所属していると回答した318名に対してのみ分析を行った。
2.調査実施時期:2017年1・2月。
3.調査方法:各学校の学校長および教頭に調査内容を説明し,調査協力を依頼した。その際,本調査の目的および方法,項目の説明を行い,倫理的観点から,個人が特定されないこと,データは統計的に処理し本研究の目的以外に使用しないこと,参加および中止は自由であり,参加しないことでの不利益は一切生じないことを説明した。
4.質問紙:①排他性7項目(α=.84),②受容性6項目(α=.81),③仲間集団の閉鎖性8項目(α=.78),④他者との関わり経験7項目(α=.78),⑤興味・関心の広さ7項目(α=.84),⑥自尊感情10項目(α=.72)。すべて5件法で回答を求めた。
結果と考察
1.学年差および性別差について
各尺度について,学年と性別を要因とする2(小5・中2)×2(男子・女子)の2要因分散分析を行った(Table 1)。結果,排他性において,学年の主効果のみが認められた(F(1,314)=7.60,p<.01)。この結果から,性別にかかわらず,中学2年生の方が,小学5年生より排他性が高いことが示された。また,興味・関心の広さにおいて,性別の主効果(F(1,314)=7.09,p<.01)及び交互作用(F(1,314)=4.42,p<.05)が認められた。単純主効果検定の結果,中学2年生における性別の単純主効果が有意であり,(F(1,314)=8.00,P<.01),女子の方が男子より興味・関心の広さ得点が高かった。受容性,仲間集団の閉鎖性,他者との関わり経験,自尊感情尺度については,主効果および交互作用は認められなかった。
2.要因間の関係性について
要因間の関係性について検討するために,想定したモデルに対して,共分散構造分析を行った。結果,モデルの適合度指標は,GFI=.972,AGFI=.917,CFI=.912,RMSEA=.07であり,十分な値が得られた。次に,性別による相違の有無を検討するために,性別による他母集団同時分析を行った(Figure 1)。パラメータ間の有意差について検討したところ,男子と女子との間でパス係数の有意差は認められなかった。そこで,パス係数に等値制約をかけて,再度分析を行ったところ,モデルの適合度指標は,GFI=.96,AGFI=.92,CFI=.91,RMSEA=.06,AIC=83.40であり,十分な値が示された。この結果から,男女の両性別において,同一のモデルが適用されることが明らかとなった。
児童期後期以降,児童は少人数で構成される固定化された仲間集団を形成するようになる。特定の友人に対する親密性が高まる一方で,自集団以外の他者や他集団を寄せ付けない強固な排他性を持つようになる。このような点から,友人関係における排他性に影響を与える要因について検討することは重要な課題であるといえる。そこで本研究では,「受容性」と「仲間集団の閉鎖性」が「排他性」に影響を与え,「他者との関わり経験」「興味・関心の広さ」および「自尊感情」が対人受容性に影響をあたえるというモデルを想定し,要因間の関係性について検討を行った。また,仲間集団は性別によって異なる文化をもつことが指摘されてきているため,性別による要因間の関係性の違いについても検討した。
方 法
1.対象:小学5年生311名(男子151名,女子160名),中学2年生125名(男子67名,女子58名)。欠損値を含む生徒を除いた368名(有効回収率84.4%)の内,仲間集団に所属していると回答した318名に対してのみ分析を行った。
2.調査実施時期:2017年1・2月。
3.調査方法:各学校の学校長および教頭に調査内容を説明し,調査協力を依頼した。その際,本調査の目的および方法,項目の説明を行い,倫理的観点から,個人が特定されないこと,データは統計的に処理し本研究の目的以外に使用しないこと,参加および中止は自由であり,参加しないことでの不利益は一切生じないことを説明した。
4.質問紙:①排他性7項目(α=.84),②受容性6項目(α=.81),③仲間集団の閉鎖性8項目(α=.78),④他者との関わり経験7項目(α=.78),⑤興味・関心の広さ7項目(α=.84),⑥自尊感情10項目(α=.72)。すべて5件法で回答を求めた。
結果と考察
1.学年差および性別差について
各尺度について,学年と性別を要因とする2(小5・中2)×2(男子・女子)の2要因分散分析を行った(Table 1)。結果,排他性において,学年の主効果のみが認められた(F(1,314)=7.60,p<.01)。この結果から,性別にかかわらず,中学2年生の方が,小学5年生より排他性が高いことが示された。また,興味・関心の広さにおいて,性別の主効果(F(1,314)=7.09,p<.01)及び交互作用(F(1,314)=4.42,p<.05)が認められた。単純主効果検定の結果,中学2年生における性別の単純主効果が有意であり,(F(1,314)=8.00,P<.01),女子の方が男子より興味・関心の広さ得点が高かった。受容性,仲間集団の閉鎖性,他者との関わり経験,自尊感情尺度については,主効果および交互作用は認められなかった。
2.要因間の関係性について
要因間の関係性について検討するために,想定したモデルに対して,共分散構造分析を行った。結果,モデルの適合度指標は,GFI=.972,AGFI=.917,CFI=.912,RMSEA=.07であり,十分な値が得られた。次に,性別による相違の有無を検討するために,性別による他母集団同時分析を行った(Figure 1)。パラメータ間の有意差について検討したところ,男子と女子との間でパス係数の有意差は認められなかった。そこで,パス係数に等値制約をかけて,再度分析を行ったところ,モデルの適合度指標は,GFI=.96,AGFI=.92,CFI=.91,RMSEA=.06,AIC=83.40であり,十分な値が示された。この結果から,男女の両性別において,同一のモデルが適用されることが明らかとなった。