The 60th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表

[PE] ポスター発表 PE(01-71)

Sun. Sep 16, 2018 1:30 PM - 3:30 PM D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号13:30~14:30 偶数番号14:30~15:30

[PE44] 中学生における学級風土と社会的達成目標との関連

海沼亮1, 櫻井茂男2 (1.筑波大学大学院, 2.筑波大学)

Keywords:学級風土, 社会的達成目標, 中学生

問題と目的
 社会的達成目標(social achievement goals)とは,動機づけ理論の1つである達成目標理論を社会的場面に適用した概念である(Ryan & Shim, 2006, 2008)。海沼・櫻井(2018)は,中学生を対象に個人が志向する社会的コンピテンスの捉え方から4つの目標を概念化し,友人関係の形成や相互理解を目指す社会的熟達接近目標が個人の適応傾向と関連することを報告している。したがって,社会的熟達接近目標を予測する要因について検討することが重要であると考えられる。
 こうした友人関係への動機づけを予測する要因の1つに「教室環境」がある(e.g., Patrick, Ryan, & Kaplan, 2007)。しかしながら,わが国において,友人関係への動機づけと教室環境との関連を検討した研究は不十分である。そこで,本研究では,学級風土に着目し,中学生を対象に,学級風土と社会的達成目標との関連を検討する。

方  法
調査協力者 関東地方および北陸地方の国公立中学校4校,43学級の生徒であった。同一選択肢が連続して選択されているなど,回答に不備があったと判断されるものを除外したところ,有効回答数は,1380名となった。調査は,各校の学校長に依頼し,研究実施の同意を得て,インフォームドコンセントを行い,各クラスで実施した。
調査内容 基本属性,社会的達成目標(海沼・櫻井, 2018),学級風土(「生徒間の親しさ」と「学級内の不和」の二下位尺度)(伊藤・松井, 2001)であった。なお質問紙には,今回の分析に使用していない項目も含まれていた。

結果と考察
 社会的達成目標を従属変数とした階層線形モデル(HLM)を実施した(Table 1)。本研究では,レベル1の変数を生徒レベル,レベル2の変数を学級レベルとして扱った。
 分析の結果,社会的熟達接近目標は,両レベルで,生徒間の親しさと正の関連を有していた。ただし,生徒間の親しさの知覚との関連は,学級ごとに異なることが示された。社会的熟達回避目標は,両レベルで,生徒間の親しさおよび学級内の不和と正の関連を有していた。社会的遂行接近目標および社会的遂行回避目標は,生徒間の親しさの知覚および学級内の不和の知覚と正の関連を有していた。ただし,社会的遂行接近目標と生徒間の親しさの知覚,学級内の不和の知覚との関連は学級ごとに異なることが示された。
 社会的熟達接近目標は,学級レベルの生徒間の親しさと正の関連を有していた。よって,学級内の生徒間の良好な関係を醸成する学級経営によって社会的熟達接近目標が促進されると考えられる。また,社会的熟達回避目標は,学級レベルの生徒間の親しさおよび学級内の不和と正の関連を有した。したがって,学級内の不和を低減することで,社会的熟達接近目標への移行が可能になると考えられる。
 本研究では,学級風土の「生徒間の親しさ」と「学級内の不和」の二側面と社会的達成目標との関連の検討に留まった。よって,今後は,他の変数も用いた詳細な検討が必要である。