[PE56] 短時間グループアプローチを活用した小中連携の効果
Keywords:中1ギャップ, 不登校, グループアプローチ
目 的
「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」(文部科学省)によれば,不登校の出現率はここ数年連続して増加している。筆者は,児童生徒が学級を「居場所」と感じるかどうかが学級適応に影響を及ぼすという仮説のもと,実践・研究を重ねている。不登校問題で特に課題として捉えられるのは,小学校6年生から中学校1年生にかけて数値増加が懸念される「中1ギャップ」問題である。それ故,本研究では,「児童生徒の学級親和感を高める」「児童生徒及び教師にとり,少ない負担で日常的に継続できる」という視点に基づく短時間グループアプローチを小中連携の具体方策として提唱・実践し,その効果の検討を目的とした。
方 法
対象:A中学校1年生193名,B中学校1年生238名
調査時期:平成29年4月~平成30年3月
内容と手続き:両校ともに生徒の学級親和を促す方法として,短時間グループアプローチ(Shorttime Group Approach。以下,SGA)を週1回,朝や帰りの時間帯に10分~15分導入した。SGAの内容は,「アドジャン」「いいとこ四面鏡」等であり,市販のエクササイズ集を活用した。毎週のSGAは主に担任が実施し,筆者が校内研修の機会にスーパーバイズを行った。また,両校は各学年学級数が6~7の大規模校である点も共通している。しかし,A中は小中連携の具体方策として,入学前の3学期に校区内4小学校へ担当教員を派遣し,6年児童に対するSGA体験授業を実施している点に違いがある。
測定具:生徒の学級親和状況,及びSGA効果を測定するため,アンケートQ-U(調査は6月),及びソーシャルスキル・自尊感情等に関する項目から構成した質問紙調査(調査は年度末3月)を実施した。
結 果
アンケートQ-U:調査の有効回答数は,欠席及び記入漏れがある生徒を除き,A中183名,B中224名であった。本研究の目的である,小中連携によるSGA効果の検討をするため,両校の6月実施Q-U各得点(友人関係,学習意欲,教師関係,学級雰囲気,進路意識,学校生活意欲合計,承認,被侵害)について,対応のないt検定により分析した。その結果,学習意欲(両側検定:t(405)=2.56, p<.05),教師関係(両側検定:t(405)=2.44, p<.05),学級雰囲気(両側検定:t(405)=4.18, p<.01),学校生活意欲合計(両側検定:t(405)=3.03, p<.01),承認(両側検定:t(405)=4.31, p<.01),被侵害(両側検定:t(405)=5.23, p<.01)に関して,A中生徒の平均得点はB中生徒の平均得点より良好な数値を示し,有意差も認められた。従って,A中生徒はB中生徒に比べ,学級への満足度,学校生活に対する意欲が高いことが示唆された。
ソーシャルスキル・自尊感情等に関する質問紙調査:調査の有効回答数は,欠席及び記入漏れがある生徒を除き,A中177名,B中216名であった。1年間のSGA実践効果の検討をするため,両校の年度末3月実施質問紙8項目の各得点について,対応のないt検定により分析した。その結果,「SGAは楽しかった」(両側検定:t(391)=6.41, p<.01),「頷きながら話を聴けるようになった」(両側検定:t(391)=3.77, p<.01),「指示をしっかり聴けるようになった」(両側検定:t(391)=3.00, p<.01),「自分のことがわかった」(両側検定:t(391)=7.18, p<.01),「友達のことがわかった」(両側検定:t(391)=4.33, p<.01),「自分に自信がもてるようになった」(両側検定:t(391)=6.13, p<.01),「学級の雰囲気がよくなった」(両側検定:t(391)=4.24, p<.01)に関して,A中生徒の平均得点はB中生徒の平均得点より良好な数値を示し,有意差も認められた。従って,A中生徒はB中生徒に比べ,SGA実践によるソーシャルスキルや自尊感情等の促進効果を肯定的に評価していることが示唆された。
考 察
本研究の対象校A・B中は,共に雰囲気の良さが感じられる学校である。両校に共通する週1回のSGA実践が良好な学校状態を生み出している要因の一つであることは十分に考えられる。結果からは,そうした両校1年生比較においてA中生徒の学級適応がより良好であると明確に示された。その良好さは,調査を行った平成29年度1学期「1年生不登校ゼロ」という実績につながり,地域メディアに取り上げられたほどである。A中生徒のより良い学級適応は,A中が小中連携の具体方策として実施した校区内小学校6年児童に対するSGA体験授業によって促進されたのではないかと推測される。
現在,A中学校区内4小学校は,A中同様の短時間SGA実践を展開中である。今後も「SGAを活用した小中連携効果」について明らかにすべく,実践及びデータ収集を重ね,検討が必要である。
「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」(文部科学省)によれば,不登校の出現率はここ数年連続して増加している。筆者は,児童生徒が学級を「居場所」と感じるかどうかが学級適応に影響を及ぼすという仮説のもと,実践・研究を重ねている。不登校問題で特に課題として捉えられるのは,小学校6年生から中学校1年生にかけて数値増加が懸念される「中1ギャップ」問題である。それ故,本研究では,「児童生徒の学級親和感を高める」「児童生徒及び教師にとり,少ない負担で日常的に継続できる」という視点に基づく短時間グループアプローチを小中連携の具体方策として提唱・実践し,その効果の検討を目的とした。
方 法
対象:A中学校1年生193名,B中学校1年生238名
調査時期:平成29年4月~平成30年3月
内容と手続き:両校ともに生徒の学級親和を促す方法として,短時間グループアプローチ(Shorttime Group Approach。以下,SGA)を週1回,朝や帰りの時間帯に10分~15分導入した。SGAの内容は,「アドジャン」「いいとこ四面鏡」等であり,市販のエクササイズ集を活用した。毎週のSGAは主に担任が実施し,筆者が校内研修の機会にスーパーバイズを行った。また,両校は各学年学級数が6~7の大規模校である点も共通している。しかし,A中は小中連携の具体方策として,入学前の3学期に校区内4小学校へ担当教員を派遣し,6年児童に対するSGA体験授業を実施している点に違いがある。
測定具:生徒の学級親和状況,及びSGA効果を測定するため,アンケートQ-U(調査は6月),及びソーシャルスキル・自尊感情等に関する項目から構成した質問紙調査(調査は年度末3月)を実施した。
結 果
アンケートQ-U:調査の有効回答数は,欠席及び記入漏れがある生徒を除き,A中183名,B中224名であった。本研究の目的である,小中連携によるSGA効果の検討をするため,両校の6月実施Q-U各得点(友人関係,学習意欲,教師関係,学級雰囲気,進路意識,学校生活意欲合計,承認,被侵害)について,対応のないt検定により分析した。その結果,学習意欲(両側検定:t(405)=2.56, p<.05),教師関係(両側検定:t(405)=2.44, p<.05),学級雰囲気(両側検定:t(405)=4.18, p<.01),学校生活意欲合計(両側検定:t(405)=3.03, p<.01),承認(両側検定:t(405)=4.31, p<.01),被侵害(両側検定:t(405)=5.23, p<.01)に関して,A中生徒の平均得点はB中生徒の平均得点より良好な数値を示し,有意差も認められた。従って,A中生徒はB中生徒に比べ,学級への満足度,学校生活に対する意欲が高いことが示唆された。
ソーシャルスキル・自尊感情等に関する質問紙調査:調査の有効回答数は,欠席及び記入漏れがある生徒を除き,A中177名,B中216名であった。1年間のSGA実践効果の検討をするため,両校の年度末3月実施質問紙8項目の各得点について,対応のないt検定により分析した。その結果,「SGAは楽しかった」(両側検定:t(391)=6.41, p<.01),「頷きながら話を聴けるようになった」(両側検定:t(391)=3.77, p<.01),「指示をしっかり聴けるようになった」(両側検定:t(391)=3.00, p<.01),「自分のことがわかった」(両側検定:t(391)=7.18, p<.01),「友達のことがわかった」(両側検定:t(391)=4.33, p<.01),「自分に自信がもてるようになった」(両側検定:t(391)=6.13, p<.01),「学級の雰囲気がよくなった」(両側検定:t(391)=4.24, p<.01)に関して,A中生徒の平均得点はB中生徒の平均得点より良好な数値を示し,有意差も認められた。従って,A中生徒はB中生徒に比べ,SGA実践によるソーシャルスキルや自尊感情等の促進効果を肯定的に評価していることが示唆された。
考 察
本研究の対象校A・B中は,共に雰囲気の良さが感じられる学校である。両校に共通する週1回のSGA実践が良好な学校状態を生み出している要因の一つであることは十分に考えられる。結果からは,そうした両校1年生比較においてA中生徒の学級適応がより良好であると明確に示された。その良好さは,調査を行った平成29年度1学期「1年生不登校ゼロ」という実績につながり,地域メディアに取り上げられたほどである。A中生徒のより良い学級適応は,A中が小中連携の具体方策として実施した校区内小学校6年児童に対するSGA体験授業によって促進されたのではないかと推測される。
現在,A中学校区内4小学校は,A中同様の短時間SGA実践を展開中である。今後も「SGAを活用した小中連携効果」について明らかにすべく,実践及びデータ収集を重ね,検討が必要である。