[PE59] 小学生から高校生までを対象とした子ども用レジリエンス尺度の作成
Keywords:レジリエンス
問題と目的
アメリカ心理学会(APA)はレジリエンスを「その人が持っているか持っていないかという特性ではなく,誰でも学び,発展させることができる人々の行動や思考,行為に普遍的に含まれるもの」としている。そして教師や保護者が10代の子どもたちのレジリエンスを高める10のコツとして,「他者とつながりを作る」「他者を助けること」「日課を維持する」といった学習可能でかつ困難な状況に対処するための捉え方や行動を示している。しかし,日本の子どもを対象としたレジリエンス尺度は,小学生から高校生まで適用できる尺度はなく,かつ特性的な要因で捉えているものが多い。そこで本研究では,日本の小中高校生を対象とし,行動や思考に着目した「子ども用レジリエンス尺度」を作成し,信頼性と妥当性の検討を行う。
方 法
調査対象 調査対象はA県の小学4年生から高校3年生まで合計6973名を対象として行った。この内の小学生95名,中学生90名,高校生78名,計263名に対しては,3ヵ月後に再調査を行った。
調査内容 (1)子ども用レジリエンス尺度: APAの10のトピックによる尺度項目の作成を行うため,自由記述とアンケート調査による予備調査を行った。調査の実施に際しては,教育相談の経験のある臨床心理士5名,レジリエンスについて学んでいる養護教諭3名を対象として,各トピックについて関連する具体的な考え方や行動について自由記述による回答を求めた。次にあげられた項目について3つの観点で判定してもらい10因子3項目計30項目となった。これら30項目について,「あてはまる(5点)」「少しあてはまる(4点)」「どちらでもない(3点)」「あまりあてはまらない(2点)」「あてはまらない(1点)」の5件法で回答を求めた。調査の実施に際しては,「それぞれの質問について,自分にとって一番あてはまると思もうものを選択してください」との教示を行った。(2)レジリエンス尺度:(1)の併存的妥当性を検討するために,石毛・無藤(2006)が作成した「レジリエンス尺度」を使用した。
調査時期および実施方法 2017年11月および2018年2月に,授業時間に学級単位で集団で実施された。統計処理には,SPSS(Ver16.0)及びAMOS16.0を使用した。
結果と考察
1.確認的因子分析
まず,子ども用レジリエンス尺度30項目について,仮定された下位尺度ごとに1 因子を指定して因子分析(主成分解)を行った。次に,各因子の項目(負荷量.59~.85)を用いて確認的因子分析を行った。母数の推定には最尤推定法を用いた。その結果,GFI=.89,AGFI=.87,CFI=.84,RMSEA=.063と許容できる適合度であり,概念に一致する10因子構造を示すと判断した。それぞれ,第1因子は「つながり」,第2因子は「援助行動」,第3因子は「ルーティン行動」,第4因子は「気持ちのコントロール」,第5因子は「セルフケア」,第6因子は「目標達成行動」,第7因子は「自己肯定」,第8因子は「客観的な捉え方」,第9因子は「自己理解」,第10因子は「変化への捉え方」とした。
また,「子ども用レジリエンス尺度」の再検査信頼性を検討するために,各下位尺度について,3ヶ月の間隔をあけた検査・再検査間の相関係数を算出した。その結果,中~強程度の有意な相関(r =.55~.74)が認められた。さらに,「子ども用レジリエンス尺度」の併存的妥当性を検討するため,「子ども用レジリエンス尺度」の下位尺度と「レジリエンス尺度」の下位尺度との相関係数を算出したところ,弱~強程度の有意な相関(r =.28~.74)が認められた。
2.因子不変性の確認
次に尺度の因子不変性を確認するため,学校段階(小学校・中学校・高校)と性別(男子・女子)によるデータを用いて多母集団同時分析(母数の推定には最尤推定法)による検討を行った。その結果,等値制約を置かないモデル(モデル1)と因子構造が同じであることを想定した配置不変モデル(モデル2)で因子構造が同じであった。また,モデル中のパス係数と分散,共分散に等値制約を置いた測定不変モデル(モデル3)を作成し,AIC基準で比較を行ったところ,モデル1=18571.52,モデル2=18645.92,モデル3=19773.02であり,等値制約を置かないモデル1が採用された。モデル1の適合度は,
χ2(380)=1961.50,p<.001,GFI=.92,AGFI=.89,CFI=.87,RMSEA=.025で概ね満足できる値となった。これらより,「子ども用レジリエンス尺度」の交差妥当性が確認され,因子モデルの不変性が示された。
アメリカ心理学会(APA)はレジリエンスを「その人が持っているか持っていないかという特性ではなく,誰でも学び,発展させることができる人々の行動や思考,行為に普遍的に含まれるもの」としている。そして教師や保護者が10代の子どもたちのレジリエンスを高める10のコツとして,「他者とつながりを作る」「他者を助けること」「日課を維持する」といった学習可能でかつ困難な状況に対処するための捉え方や行動を示している。しかし,日本の子どもを対象としたレジリエンス尺度は,小学生から高校生まで適用できる尺度はなく,かつ特性的な要因で捉えているものが多い。そこで本研究では,日本の小中高校生を対象とし,行動や思考に着目した「子ども用レジリエンス尺度」を作成し,信頼性と妥当性の検討を行う。
方 法
調査対象 調査対象はA県の小学4年生から高校3年生まで合計6973名を対象として行った。この内の小学生95名,中学生90名,高校生78名,計263名に対しては,3ヵ月後に再調査を行った。
調査内容 (1)子ども用レジリエンス尺度: APAの10のトピックによる尺度項目の作成を行うため,自由記述とアンケート調査による予備調査を行った。調査の実施に際しては,教育相談の経験のある臨床心理士5名,レジリエンスについて学んでいる養護教諭3名を対象として,各トピックについて関連する具体的な考え方や行動について自由記述による回答を求めた。次にあげられた項目について3つの観点で判定してもらい10因子3項目計30項目となった。これら30項目について,「あてはまる(5点)」「少しあてはまる(4点)」「どちらでもない(3点)」「あまりあてはまらない(2点)」「あてはまらない(1点)」の5件法で回答を求めた。調査の実施に際しては,「それぞれの質問について,自分にとって一番あてはまると思もうものを選択してください」との教示を行った。(2)レジリエンス尺度:(1)の併存的妥当性を検討するために,石毛・無藤(2006)が作成した「レジリエンス尺度」を使用した。
調査時期および実施方法 2017年11月および2018年2月に,授業時間に学級単位で集団で実施された。統計処理には,SPSS(Ver16.0)及びAMOS16.0を使用した。
結果と考察
1.確認的因子分析
まず,子ども用レジリエンス尺度30項目について,仮定された下位尺度ごとに1 因子を指定して因子分析(主成分解)を行った。次に,各因子の項目(負荷量.59~.85)を用いて確認的因子分析を行った。母数の推定には最尤推定法を用いた。その結果,GFI=.89,AGFI=.87,CFI=.84,RMSEA=.063と許容できる適合度であり,概念に一致する10因子構造を示すと判断した。それぞれ,第1因子は「つながり」,第2因子は「援助行動」,第3因子は「ルーティン行動」,第4因子は「気持ちのコントロール」,第5因子は「セルフケア」,第6因子は「目標達成行動」,第7因子は「自己肯定」,第8因子は「客観的な捉え方」,第9因子は「自己理解」,第10因子は「変化への捉え方」とした。
また,「子ども用レジリエンス尺度」の再検査信頼性を検討するために,各下位尺度について,3ヶ月の間隔をあけた検査・再検査間の相関係数を算出した。その結果,中~強程度の有意な相関(r =.55~.74)が認められた。さらに,「子ども用レジリエンス尺度」の併存的妥当性を検討するため,「子ども用レジリエンス尺度」の下位尺度と「レジリエンス尺度」の下位尺度との相関係数を算出したところ,弱~強程度の有意な相関(r =.28~.74)が認められた。
2.因子不変性の確認
次に尺度の因子不変性を確認するため,学校段階(小学校・中学校・高校)と性別(男子・女子)によるデータを用いて多母集団同時分析(母数の推定には最尤推定法)による検討を行った。その結果,等値制約を置かないモデル(モデル1)と因子構造が同じであることを想定した配置不変モデル(モデル2)で因子構造が同じであった。また,モデル中のパス係数と分散,共分散に等値制約を置いた測定不変モデル(モデル3)を作成し,AIC基準で比較を行ったところ,モデル1=18571.52,モデル2=18645.92,モデル3=19773.02であり,等値制約を置かないモデル1が採用された。モデル1の適合度は,
χ2(380)=1961.50,p<.001,GFI=.92,AGFI=.89,CFI=.87,RMSEA=.025で概ね満足できる値となった。これらより,「子ども用レジリエンス尺度」の交差妥当性が確認され,因子モデルの不変性が示された。