[PF24] 大学におけるアクティブ・ラーニングとその効果(1)
私立総合大学におけるアクティブ・ラーニングの実施状況
Keywords:アクティブ・ラーニング, 大学教育, 学部
問題と目的
現在,大学においてもアクティブ・ラーニングが推進され,多くの大学で導入されている。本研究の最終的な目的は,大学教育において学生が主体となったアクティブ・ラーニングを実施し,その効果を明らかとすることである。本研究では,アクティブ・ラーニングを「課題の発見・解決に向けた主体的・協働的な学び」と定義し,特定の指導の型や技術ではなく,授業を進めていく上での考え方と位置づけている。現在,多くの大学においてアクティブ・ラーニングが取り入れられているが,その実施状況,教員により行われている具体的な内容,技術,学生から見たアクティブ・ラーニングの評価,そして,その学習効果については,いまだ明らかとなっていない。そこで,本研究では,まず,アクティブ・ラーニングの内容にはどのようなものがあるのかを明らかにし,それらがどの程度実施されているのかを検討する。また,その実施状況は文系,理系などの学部によって異なるのかを明らかにすることを目的とした。
方 法
調査参加者 調査は,「アクティブ・ラーニング・実践状況および意識調査にかかるアンケート」として,webを利用して職員番号を記入する無記名式で行った。調査参加者は大阪府内の私立大学の教員114名(男性73名,女性41名,職階(助教,講師,准教授,教授,非常勤))であった。調査時期は2017年5月。
質問紙の構成 質問紙の構成は,アクティブ・ラーニングの実施状況(4段階評定,14項目),アクティブ・ラーニングの具体例に対する知識(4段階評定,11項目),アクティブ・ラーニングの具体例の活動度(4段階評定,11項目),アクティブ・ラーニングのための授業スキル(4段階評定,17項目)。本研究では,アクティブ・ラーニングの実施状況についての分析を行った。
結果と考察
アクティブ・ラーニングの実施状況(学部比較)
因子分析で得られた4つのアクティブ・ラーニングの内容がどの程度各学部で実施されているのかを検討するため,学部を独立変数とする1要因分散分析を行った。7つの学部(薬学部,看護学部,理工学部,経営学部,経済学部,経営学部,外国語学部)と学部以外(教職,各センターなど)の8つで1要因8水準の分散分析を行った。従属変数は4つのアクティブ・ラーニング因子である。
学生の主体的活動と評価 「学生の主体的活動と評価」因子に対する分析の結果,学部の主効果が有意であった(F(7,106)=4.47, p <.01)。多重比較の結果,薬学部(M = 2.04),理工学部(M = 2.21)よりも,外国語学部,看護学部,経営学部,学部以外の学部の方が「学生の主体的活動と評価」の実施状況が高かった。
学生同士の話し合い 「学生同士の話し合い」因子に対する分析の結果,学部の主効果が有意であった(F(7,106)=3.45, p <.01)。多重比較の結果,薬学部(M = 2.27)は他の6つの学部よりも低く,理工学部(M = 2.69)は看護学部(M = 3.30),学部以外(M = 3.78)よりも「学生同士の話し合い」の実施状況が低かった。
学生への資料・課題の提示 「学生への資料・課題の提示」因子に対する分析の結果,学部の主効果が有意であった(F(7,106)=2.14, p <.05)。多重比較の結果,薬学部(M = 2.53)は,看護学部,外国語学部,経営学部,学部以外よりも低く,理工学部(M = 2.89)は学部以外(M = 3.67)よりも,「学生への資料・課題の提示」の実施状況が低くかった。
学生への問題提起 「学生への問題提起」因子に対する分析の結果,学部の主効果は有意ではなかった(F(7,106)=0.49, n.s.)。学部によって「学生への問題提起」の実施状況に差はみられなかった。「学生への問題提起」の実施状況はすべての学部で高かった。
アクティブ・ラーニングの実施が学部などにより異なるかを検討したところ,全体として,教職やスポーツを含む学部以外と語学科目を含む外国語学部において実施状況が高い傾向がみられた。逆に,理系学部において実施状況が低い傾向がみられた。特に,「学生の主体的活動と評価」と「学生同士の話し合い」は,理系学部で低い傾向がみられた。理系科目の基礎科目では授業内容が知識獲得タイプであるので自己評価や話し合いがあまり必要とされないのかもしれない。今後は,各科目の内容とアクティブ・ラーニングの実施状況との関連,また,実施する教員の職階と実施状況との関連を検討する。
現在,大学においてもアクティブ・ラーニングが推進され,多くの大学で導入されている。本研究の最終的な目的は,大学教育において学生が主体となったアクティブ・ラーニングを実施し,その効果を明らかとすることである。本研究では,アクティブ・ラーニングを「課題の発見・解決に向けた主体的・協働的な学び」と定義し,特定の指導の型や技術ではなく,授業を進めていく上での考え方と位置づけている。現在,多くの大学においてアクティブ・ラーニングが取り入れられているが,その実施状況,教員により行われている具体的な内容,技術,学生から見たアクティブ・ラーニングの評価,そして,その学習効果については,いまだ明らかとなっていない。そこで,本研究では,まず,アクティブ・ラーニングの内容にはどのようなものがあるのかを明らかにし,それらがどの程度実施されているのかを検討する。また,その実施状況は文系,理系などの学部によって異なるのかを明らかにすることを目的とした。
方 法
調査参加者 調査は,「アクティブ・ラーニング・実践状況および意識調査にかかるアンケート」として,webを利用して職員番号を記入する無記名式で行った。調査参加者は大阪府内の私立大学の教員114名(男性73名,女性41名,職階(助教,講師,准教授,教授,非常勤))であった。調査時期は2017年5月。
質問紙の構成 質問紙の構成は,アクティブ・ラーニングの実施状況(4段階評定,14項目),アクティブ・ラーニングの具体例に対する知識(4段階評定,11項目),アクティブ・ラーニングの具体例の活動度(4段階評定,11項目),アクティブ・ラーニングのための授業スキル(4段階評定,17項目)。本研究では,アクティブ・ラーニングの実施状況についての分析を行った。
結果と考察
アクティブ・ラーニングの実施状況(学部比較)
因子分析で得られた4つのアクティブ・ラーニングの内容がどの程度各学部で実施されているのかを検討するため,学部を独立変数とする1要因分散分析を行った。7つの学部(薬学部,看護学部,理工学部,経営学部,経済学部,経営学部,外国語学部)と学部以外(教職,各センターなど)の8つで1要因8水準の分散分析を行った。従属変数は4つのアクティブ・ラーニング因子である。
学生の主体的活動と評価 「学生の主体的活動と評価」因子に対する分析の結果,学部の主効果が有意であった(F(7,106)=4.47, p <.01)。多重比較の結果,薬学部(M = 2.04),理工学部(M = 2.21)よりも,外国語学部,看護学部,経営学部,学部以外の学部の方が「学生の主体的活動と評価」の実施状況が高かった。
学生同士の話し合い 「学生同士の話し合い」因子に対する分析の結果,学部の主効果が有意であった(F(7,106)=3.45, p <.01)。多重比較の結果,薬学部(M = 2.27)は他の6つの学部よりも低く,理工学部(M = 2.69)は看護学部(M = 3.30),学部以外(M = 3.78)よりも「学生同士の話し合い」の実施状況が低かった。
学生への資料・課題の提示 「学生への資料・課題の提示」因子に対する分析の結果,学部の主効果が有意であった(F(7,106)=2.14, p <.05)。多重比較の結果,薬学部(M = 2.53)は,看護学部,外国語学部,経営学部,学部以外よりも低く,理工学部(M = 2.89)は学部以外(M = 3.67)よりも,「学生への資料・課題の提示」の実施状況が低くかった。
学生への問題提起 「学生への問題提起」因子に対する分析の結果,学部の主効果は有意ではなかった(F(7,106)=0.49, n.s.)。学部によって「学生への問題提起」の実施状況に差はみられなかった。「学生への問題提起」の実施状況はすべての学部で高かった。
アクティブ・ラーニングの実施が学部などにより異なるかを検討したところ,全体として,教職やスポーツを含む学部以外と語学科目を含む外国語学部において実施状況が高い傾向がみられた。逆に,理系学部において実施状況が低い傾向がみられた。特に,「学生の主体的活動と評価」と「学生同士の話し合い」は,理系学部で低い傾向がみられた。理系科目の基礎科目では授業内容が知識獲得タイプであるので自己評価や話し合いがあまり必要とされないのかもしれない。今後は,各科目の内容とアクティブ・ラーニングの実施状況との関連,また,実施する教員の職階と実施状況との関連を検討する。