[PF26] 小学校外国語活動におけるフォニックス指導の影響
授業目標の認知と動機づけに着目した検討
Keywords:フォニックス, 早期英語教育, 動機づけ
問題と目的
授業で目標とされていることを学習者がどのように受け取るか(目標認知)は,学習に影響を与える重要な要因であり,先行研究では授業で「理解を深めること」が重視されているか,「高い成績を示すこと」が重視されているかによって,学習者の動機づけや学習行動に影響が及ぼされることが指摘されている(cf, Wolters, 2004)。
本研究では,この授業での目標認知に着目しながら小学校におけるフォニックス指導の影響について検討を行う。英語の教科化に向け,小学校での英語指導のあり方については早急に考えるべき重要な問題である。外国語活動では,英語に慣れ親しむことを目標として,英語を用いたロールプレイなどが行われることが多く,知識を明示的に与えることについては否定的な意見もある。しかし,フォニックスを学び英語の音と文字の結びつきに関する知識を得ておくことは,中学校で単語や文法を学ぶための重要な素地となる可能性もあるため,小学校でフォニックスを導入することの影響については実証的知見を蓄積することが求められる。そこで,本研究では,フォニックス導入校と非導入校の児童を対象に質問紙調査を行い,小学校の外国語活動における目標認知や英語学習に対する動機づけの比較を行った。
方 法
フォニックスの導入校2校および非導入校2校の児童に対して質問紙調査を実施した。質問紙の表紙には調査の主旨や目的を明記し,回答は任意であり,回答内容は学校の成績と無関係であることも伝えた。最終的に,同意を得た調査協力者の回答データ(導入校190名,非導入校167名)を分析に使用した。質問紙の構成を以下に示す。回答はすべて5件法で求めた。
外国語活動における目標認知 外国語活動において,どのようなことが目標とされていると思うか,篠ヶ谷・木澤(2017)と同様の22項目を使用して回答を求めた。下位尺度は「知識・スキル(単語や文法を身につけること)」「異文化理解(外国の文化を理解すること)」「反復練習(同じフレーズを何度も繰り返すこと)」「レクリエーション(英語に慣れ親しむこと)」の4つであった。
英語学習に対する動機づけ 期待価値理論の枠組みから,内発的価値と効力感の測定を行った。内発的価値については「英語を学ぶのは楽しい」など3項目,効力感は,読むこと・発音すること・書くこと・聞くことに対する効力感について,それぞれ1項目(e.g., 新しく習った単語でもなんとなく読むことができる)を用いて測定を行った。
結果と考察
想定される下位尺度ごとに項目平均値を算出し,地域を独立変数とした一要因分散分析を行った。その結果,授業目標の認知の「レクリエーション」において非導入校の方が導入校より有意に高い得点を示した(F (1, 356) = 25.12, p < .01)。一方,動機づけに関しては,読むことのへの効力感(F (1, 356) = 9.34, p < .01),発音することへの効力感(F (1, 356) = 3.21, p < .10)において,導入校の方が高い得点を示していた。効力感は新たな内容を学ぶ際に学習行動を促す重要な動機づけ変数であり,小学校の段階でフォニックス指導を導入することは,中学校での英語学習に向けた動機づけを高める上で有用であることが示唆された(Table 1)。このように高い効力感を持った状態で中学校の英語学習に移行した場合に,学習者の動機づけや学習行動がどのような変化を示すかについては,今後,縦断的なデータを用いて変数の変動パターンを分析していくことが求められる。
授業で目標とされていることを学習者がどのように受け取るか(目標認知)は,学習に影響を与える重要な要因であり,先行研究では授業で「理解を深めること」が重視されているか,「高い成績を示すこと」が重視されているかによって,学習者の動機づけや学習行動に影響が及ぼされることが指摘されている(cf, Wolters, 2004)。
本研究では,この授業での目標認知に着目しながら小学校におけるフォニックス指導の影響について検討を行う。英語の教科化に向け,小学校での英語指導のあり方については早急に考えるべき重要な問題である。外国語活動では,英語に慣れ親しむことを目標として,英語を用いたロールプレイなどが行われることが多く,知識を明示的に与えることについては否定的な意見もある。しかし,フォニックスを学び英語の音と文字の結びつきに関する知識を得ておくことは,中学校で単語や文法を学ぶための重要な素地となる可能性もあるため,小学校でフォニックスを導入することの影響については実証的知見を蓄積することが求められる。そこで,本研究では,フォニックス導入校と非導入校の児童を対象に質問紙調査を行い,小学校の外国語活動における目標認知や英語学習に対する動機づけの比較を行った。
方 法
フォニックスの導入校2校および非導入校2校の児童に対して質問紙調査を実施した。質問紙の表紙には調査の主旨や目的を明記し,回答は任意であり,回答内容は学校の成績と無関係であることも伝えた。最終的に,同意を得た調査協力者の回答データ(導入校190名,非導入校167名)を分析に使用した。質問紙の構成を以下に示す。回答はすべて5件法で求めた。
外国語活動における目標認知 外国語活動において,どのようなことが目標とされていると思うか,篠ヶ谷・木澤(2017)と同様の22項目を使用して回答を求めた。下位尺度は「知識・スキル(単語や文法を身につけること)」「異文化理解(外国の文化を理解すること)」「反復練習(同じフレーズを何度も繰り返すこと)」「レクリエーション(英語に慣れ親しむこと)」の4つであった。
英語学習に対する動機づけ 期待価値理論の枠組みから,内発的価値と効力感の測定を行った。内発的価値については「英語を学ぶのは楽しい」など3項目,効力感は,読むこと・発音すること・書くこと・聞くことに対する効力感について,それぞれ1項目(e.g., 新しく習った単語でもなんとなく読むことができる)を用いて測定を行った。
結果と考察
想定される下位尺度ごとに項目平均値を算出し,地域を独立変数とした一要因分散分析を行った。その結果,授業目標の認知の「レクリエーション」において非導入校の方が導入校より有意に高い得点を示した(F (1, 356) = 25.12, p < .01)。一方,動機づけに関しては,読むことのへの効力感(F (1, 356) = 9.34, p < .01),発音することへの効力感(F (1, 356) = 3.21, p < .10)において,導入校の方が高い得点を示していた。効力感は新たな内容を学ぶ際に学習行動を促す重要な動機づけ変数であり,小学校の段階でフォニックス指導を導入することは,中学校での英語学習に向けた動機づけを高める上で有用であることが示唆された(Table 1)。このように高い効力感を持った状態で中学校の英語学習に移行した場合に,学習者の動機づけや学習行動がどのような変化を示すかについては,今後,縦断的なデータを用いて変数の変動パターンを分析していくことが求められる。