The 60th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

Presentation information

ポスター発表

[PF] ポスター発表 PF(01-71)

Sun. Sep 16, 2018 4:00 PM - 6:00 PM D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号16:00~17:00 偶数番号17:00~18:00

[PF31] 一般大学生におけるサイト閲覧行動とサイト評価のギャップ

インターネット情報検索時の閲覧サイト選択行動

大津嘉代子1, 阪脇孝子2 (1.早稲田大学, 2.早稲田大学)

Keywords:情報検索, 情報教育, 教育方法

問  題
 本研究は,大学生が学術目的で行う,パソコンを使用したインターネット情報検索の認識及び態度・行動を研究対象に,情報検索に未習熟な学生への教育方法の策定を目的としている。検索結果から閲覧サイトを選択する際の教示方法を検証した先行研究では,個々のサイト属性(運営主体,サイト設置目的等)や掲載情報の性質に効果的に注目させれば,そのサイトが学術目的の閲覧に有用か否かを評価すると示された(大津・阪脇2018)。しかし,学術目的で有用性を考えても,学生にとって馴染みが薄い検索テーマにおいては「まとめサイト・Q&Aサイト」といった発信者が不確かな二次情報が掲載されているサイトを重用していた。これらのサイトは,検索結果一覧の上部に表示されることが多く,日頃から学生が良く目にし,親しみを持っていると考えられる。
 キーワード検索で得られた結果からの適切なサイト選択は,情報検索教育において育成すべき重要な能力の一つであり,有用性評価の高低と同時に,それらのサイトを実際にどう閲覧するかも合わせて考える必要がある。この報告では,異なる集団に対して行った二つの実験から,同様の条件及び手続で行った模擬閲覧課題部分のデータを比較することで,一般大学生のサイト有用性評価と閲覧行動のギャップを検討する。観察対象となる集団の一つは図書館司書関連科目を受講する大学生であり,掲載情報の性質や信頼性をより考慮して閲覧サイトを選択している可能性がある。もう一つの集団は,一般大学生と想定した,教育心理学を専攻する大学生である。

方  法
参加者:図書館司書科目受講者(以下図書)15名(平均年齢20.27, SD 0.88)
    教育心理学専修学生(以下一般)19名(平均年齢20.47, SD 1.68)
材料:PC,実験用アプリケーション
手続きと課題:実験者が実験手順を説明し,練習課題を行った後,参加者は画面のインストラクションを読みながら模擬閲覧課題を一人で行った。検索目的は「授業で課題として出されたレポート作成のための調べもの」で,レポート課題は「コーヒーの健康への影響」とした。検索結果一覧として,実在するサイトを8つ提示した。参加者は,「レポート作成のために閲覧したい」と思う順序で,表示された全てのサイトを閲覧した。その後,それらのサイトに対して,レポート作成の役に立つと思う順序をつけることで評価した。

結果と考察
 各集団のサイト閲覧順序,サイトの有用性の順位づけ評価について,順位に基づいて1 位(8 点)~8 位(1 点)の得点を与え,サイト閲覧及び評価傾向に違いがあるかどうか検討を行った(Table 1)。Friedman 検定の結果,各集団の閲覧,評価いずれも全体として有意差がみられたが(図書・閲覧χ2 = 59.82, df = 7, p<.01,図書・評価χ2 = 69.67, df = 7, p<.01,一般・閲覧χ2 = 23.56, df = 7, p<.01,一般・評価χ2 = 55.77, df = 7, p<.01),多重比較(Wilcoxon の符号付順位和検定, Bonferroni 法による調整)の結果は集団により傾向が異なった。図書集団は,閲覧順,有用性評価順とも,サイト1,2,3を他の多くのサイトより低く評価していた。一般集団は,有用性評価順では図書集団と同様であったが,閲覧順に関しては,多重比較でどのサイト同士にも有意差が得られなかった。
 各集団の検索結果一覧閲覧時間(サイト名,URL,ページ内容抜書きを読んでいた時間),ページ閲覧時間(各サイトを開いていた時間)の平均値を比較した結果,結果一覧閲覧のみ図書集団の方が長い時間をかけていた(t=2.79, df=32, p<.01)(Table 2)。
 サイト有用性について評価を求めると,どちらの集団もまとめサイト,Q&Aサイトを低く評価していた。閲覧順分析では,図書集団は評価と同様にこれらサイトを最後に閲覧する傾向があったが,一般集団については他のサイトと閲覧順位がはっきり区別できなかった。この結果は,不確かな二次情報が含まれる可能性を認識しているのにも関わらず,一般大学生は,レポート作成が目的であってもまとめサイト,Q&Aサイトを習慣的に選択する傾向を示すと考えられる。但し,実験手続き上有用性評価は閲覧の後に行っており,内容を見た結果として有用性が低いと改めて認識した可能性もある。対して,図書集団は有用性の評価を行いながら検索結果一覧を読み,閲覧サイトを選択していたと考えられる。

大津嘉代子・阪脇孝子(2018)教示方法の違いが情報検索行動にもたらす変化 早稲田大学教育学会紀要,19,9-16
本研究は科学研究費補助金(挑戦的萌芽研究16K13475)による助成を受けて行った。