[PF30] 漢字の読み方の学習にVAシャドーイング法は効果を発揮するのか
小中学生を対象にして
Keywords:VAシャドーイング法, 漢字の読み方
問題と目的
近年シャドーイングに加え,シャドーイングとビジュアル・シャドーイングを組み合わせたビジュアル・オーディトリー・シャドーイング法(以下VA法)という聴解指導法が,日本語教育において注目されつつある。中山(2016)は漢字圏出身の日本語学習者を対象に,中山・古本(2016)は,非漢字圏出身の日本語学習者を対象として, VA法はビジュアル・シャドーイング法(以下VV法)と比較して,漢字の読み方の学習を促進するかについて検討を行った。本研究では,これら2つの研究の成果に基づいて,さらに非漢字圏出身者を対象に,VA法の実証性について検討する。
方 法
1.実験協力者
米国ノースカロライナ州にある公立小中学校ワデル・ランゲージ・アカデミーに通う小学1年生から中学2年生までの,95名が実験に参加した。実験協力者の日本語学習歴の平均は,約4年3ヶ月であった。95名の協力者を各学年均等な人数になるように,VA群,およびビジュアル・シャドーイング群(以下VS群)に割りあてた結果,VA群が48名,VS群が47名となった。
2.実験計画
本実験は,3×2×3の要因配置を用いた。第1の要因は,学習歴の違い(低・中・高)第2の要因は,トレーニング方法の違い(VA法・VS法)であった。第3の要因は漢字音読テストの変化(事前・事後テスト・遅延テスト)であった。
3.調査材料
漢字材料:北野・松本(2011)を参考に,発表者が作成した日本語教材「ラクダの話」(81文字)に使用されている9組の漢字表現を材料とした。この材料に基づき,以下の4つの教材を作成した。
漢字音読テスト:介入の効果を測定するため,漢字材料を参考に12問(ダミー問題2問を含む)からなる漢字の音読テストを作成した。モニターに呈示される漢字を音読するテストであった。このテストは出題順序を変えて,実験の前後に3回実施された。
音声教材:VA法で使用する音声教材として,漢字材料を音読した音声を録音した教材を作成した。
VAシャドーイング用教材:マイクロソフト社のパワーポイントを利用して作成した。漢字材料を1組ずつ音声情報で3回,文字情報で3回呈示できるようスライドを作成した。そのため,(1)表紙,(2)シャドーイングとビジュアル・シャドーイングの説明,(3)カウントダウン,(4)ターゲット文の呈示,(5)シャドーイング音声呈示,(6)ビジュアル・シャドーイング本文呈示,(7)終了告知の合計89枚のスライドで教材3は構成された。
VSシャドーイング用教材:マイクロソフト社のパワーポイントを利用して作成した。漢字材料について漢字を含む文字情報で3回,ひらがなのみで3回呈示できるようスライドを作成した。その結果,(1)表紙,(2)ビジュアル・シャドーイングの説明,(3)カウントダウン,(4)ターゲット文の呈示,(5)ビジュアル・シャドーイング本文呈示(漢字入り),(6)ビジュアル・シャドーイング本文呈示(ひらがなのみ),(7)終了告知の合計89枚のスライドで構成された。
4. 手順
実験は個別で行われた。実験協力者は,(1)漢字音読テスト(事前テスト),(2)指定された方法によるトレーニング,(3)漢字音読テスト(事後テスト)の順に,実験に参加した。各実験にかかった時間は約15分であった。さらに実験1週間後に漢字音読テスト(遅延テスト)を実施した。
結 果
漢字音読テストの結果(遅延)をTable 1. に示す。分析は学年ごとではなく,3つの学年グループ(低・中・高)に分けて行った。事前テストおよび事後テストの結果を共変量,トレーニング方法の違いと学年グループを固定因子とし,遅延テストの結果を目的変数とする共分散分析を行った結果,交互作用が有意であった(F(2,3.81)=0.03, p<.05)。下位分析の結果,高学年のVAグループの遅延テストの結果が,他の2つのグループと比較して有意に高いことがわかった(p<.01).
近年シャドーイングに加え,シャドーイングとビジュアル・シャドーイングを組み合わせたビジュアル・オーディトリー・シャドーイング法(以下VA法)という聴解指導法が,日本語教育において注目されつつある。中山(2016)は漢字圏出身の日本語学習者を対象に,中山・古本(2016)は,非漢字圏出身の日本語学習者を対象として, VA法はビジュアル・シャドーイング法(以下VV法)と比較して,漢字の読み方の学習を促進するかについて検討を行った。本研究では,これら2つの研究の成果に基づいて,さらに非漢字圏出身者を対象に,VA法の実証性について検討する。
方 法
1.実験協力者
米国ノースカロライナ州にある公立小中学校ワデル・ランゲージ・アカデミーに通う小学1年生から中学2年生までの,95名が実験に参加した。実験協力者の日本語学習歴の平均は,約4年3ヶ月であった。95名の協力者を各学年均等な人数になるように,VA群,およびビジュアル・シャドーイング群(以下VS群)に割りあてた結果,VA群が48名,VS群が47名となった。
2.実験計画
本実験は,3×2×3の要因配置を用いた。第1の要因は,学習歴の違い(低・中・高)第2の要因は,トレーニング方法の違い(VA法・VS法)であった。第3の要因は漢字音読テストの変化(事前・事後テスト・遅延テスト)であった。
3.調査材料
漢字材料:北野・松本(2011)を参考に,発表者が作成した日本語教材「ラクダの話」(81文字)に使用されている9組の漢字表現を材料とした。この材料に基づき,以下の4つの教材を作成した。
漢字音読テスト:介入の効果を測定するため,漢字材料を参考に12問(ダミー問題2問を含む)からなる漢字の音読テストを作成した。モニターに呈示される漢字を音読するテストであった。このテストは出題順序を変えて,実験の前後に3回実施された。
音声教材:VA法で使用する音声教材として,漢字材料を音読した音声を録音した教材を作成した。
VAシャドーイング用教材:マイクロソフト社のパワーポイントを利用して作成した。漢字材料を1組ずつ音声情報で3回,文字情報で3回呈示できるようスライドを作成した。そのため,(1)表紙,(2)シャドーイングとビジュアル・シャドーイングの説明,(3)カウントダウン,(4)ターゲット文の呈示,(5)シャドーイング音声呈示,(6)ビジュアル・シャドーイング本文呈示,(7)終了告知の合計89枚のスライドで教材3は構成された。
VSシャドーイング用教材:マイクロソフト社のパワーポイントを利用して作成した。漢字材料について漢字を含む文字情報で3回,ひらがなのみで3回呈示できるようスライドを作成した。その結果,(1)表紙,(2)ビジュアル・シャドーイングの説明,(3)カウントダウン,(4)ターゲット文の呈示,(5)ビジュアル・シャドーイング本文呈示(漢字入り),(6)ビジュアル・シャドーイング本文呈示(ひらがなのみ),(7)終了告知の合計89枚のスライドで構成された。
4. 手順
実験は個別で行われた。実験協力者は,(1)漢字音読テスト(事前テスト),(2)指定された方法によるトレーニング,(3)漢字音読テスト(事後テスト)の順に,実験に参加した。各実験にかかった時間は約15分であった。さらに実験1週間後に漢字音読テスト(遅延テスト)を実施した。
結 果
漢字音読テストの結果(遅延)をTable 1. に示す。分析は学年ごとではなく,3つの学年グループ(低・中・高)に分けて行った。事前テストおよび事後テストの結果を共変量,トレーニング方法の違いと学年グループを固定因子とし,遅延テストの結果を目的変数とする共分散分析を行った結果,交互作用が有意であった(F(2,3.81)=0.03, p<.05)。下位分析の結果,高学年のVAグループの遅延テストの結果が,他の2つのグループと比較して有意に高いことがわかった(p<.01).