[PF69] 先延ばしの簡便なタイプ分類方法の開発(2)
短縮版尺度の作成と信頼性・妥当性の検討
Keywords:先延ばし, 尺度作成, 項目反応理論
問題と目的
小浜・高田 (2018) では,先延ばし意識特性尺度によるタイプ分類を行い,回答者が「計画群」,「計画切り替え群」,「楽観群」,「否定感情群」の3群に分類された。また決定木分析の結果から,タイプ分類に有効な変数としては,「状況の楽観視」,「先延ばし中の肯定的感情」,「先延ばし後の否定的感情」の3下位尺度であることを明らかにした。
本研究では,タイプ分類をより簡便にするために,小浜・高田 (2018) でタイプ分類に有効であると判断された3下位尺度の短縮版尺度を作成することを目的とした。
方 法
分析対象者 本研究では,小浜 (2010; 2012; 2014)で分析対象となった大学生748名を分析対象者として再分析を実施した。
分析項目 (1) 先延ばし意識特性尺度のうち,小浜・高田 (2018) で,タイプ分類に有効であると判断された「状況の楽観視」,「先延ばし中の肯定的感情」,「先延ばし後の否定的感情」の3下位尺度を用いた。(2) 小浜 (2012; 2014) のタイプ分類手続きに用いられた先延ばし特性尺度であるJ-GPS (林, 2007) と決断遅延 (Decisional Procrastination, 以下DPと表記; 宮元, 1997) を用いた。どちらの尺度も五件法で測定され,得点が高いほど遅延を行いやすいことを示す。
結果と考察
短縮版尺度の作成 回答者の分類に必要と判断された3変数の短縮版を作成するために,項目反応理論 (Item Response Theory; 以下,IRTとする) に基づき,尺度の短縮版を作成した。
まず,「状況の楽観視」,「先延ばし中の肯定的感情」,「先延ばし後の否定的感情」の下位尺度それぞれの一次元性を確証するために,因子分析(重みづけ最小二乗法,回転なし)を行った。いずれも一次元性が満たされていると判断された。次に,各下位尺度の項目パラメタを一般化部分採点モデル (Generalized Partial Credit Model; GPCM) によって推定した。項目の選定では,(a) 項目パラメタの推定値の範囲が原版とほぼ同一となる,(b) 項目内容が網羅的となる,を基準とし,各下位尺度から各3項目を暫定的に選定した。結果をTable 1に示す。
信頼性と妥当性の検証 短縮版尺度の信頼性と妥当性を四点から検討した。第一に,3つの短縮版尺度の信頼性係数を算出した結果,「状況の楽観視」はα=.88, ω=.88,「先延ばし中の肯定的感情」はα=.68, ω=.70, 「先延ばし後の否定的感情」はα=86. ω=.86であった。第二に,テスト情報量の減少率を検討した結果,「状況の楽観視」は68.0%,「先延ばし中の肯定的感情」は62.8%,「先延ばし後の否定的感情」は79.5%であった。第三に,短縮版の下位尺度と対応する原版の下位尺度との相関係数は,r=.93-.97と高い相関係数を示していた。第四に,原版尺度と同様に算術平均を尺度得点として算出し,GPSおよびDPとの相関係数を算出した。その結果,3つの下位尺度すべてで,原版と短縮版ならびにGPSとDPの相関係数のパターンが類似していた。
小浜・高田 (2018) では,先延ばし意識特性尺度によるタイプ分類を行い,回答者が「計画群」,「計画切り替え群」,「楽観群」,「否定感情群」の3群に分類された。また決定木分析の結果から,タイプ分類に有効な変数としては,「状況の楽観視」,「先延ばし中の肯定的感情」,「先延ばし後の否定的感情」の3下位尺度であることを明らかにした。
本研究では,タイプ分類をより簡便にするために,小浜・高田 (2018) でタイプ分類に有効であると判断された3下位尺度の短縮版尺度を作成することを目的とした。
方 法
分析対象者 本研究では,小浜 (2010; 2012; 2014)で分析対象となった大学生748名を分析対象者として再分析を実施した。
分析項目 (1) 先延ばし意識特性尺度のうち,小浜・高田 (2018) で,タイプ分類に有効であると判断された「状況の楽観視」,「先延ばし中の肯定的感情」,「先延ばし後の否定的感情」の3下位尺度を用いた。(2) 小浜 (2012; 2014) のタイプ分類手続きに用いられた先延ばし特性尺度であるJ-GPS (林, 2007) と決断遅延 (Decisional Procrastination, 以下DPと表記; 宮元, 1997) を用いた。どちらの尺度も五件法で測定され,得点が高いほど遅延を行いやすいことを示す。
結果と考察
短縮版尺度の作成 回答者の分類に必要と判断された3変数の短縮版を作成するために,項目反応理論 (Item Response Theory; 以下,IRTとする) に基づき,尺度の短縮版を作成した。
まず,「状況の楽観視」,「先延ばし中の肯定的感情」,「先延ばし後の否定的感情」の下位尺度それぞれの一次元性を確証するために,因子分析(重みづけ最小二乗法,回転なし)を行った。いずれも一次元性が満たされていると判断された。次に,各下位尺度の項目パラメタを一般化部分採点モデル (Generalized Partial Credit Model; GPCM) によって推定した。項目の選定では,(a) 項目パラメタの推定値の範囲が原版とほぼ同一となる,(b) 項目内容が網羅的となる,を基準とし,各下位尺度から各3項目を暫定的に選定した。結果をTable 1に示す。
信頼性と妥当性の検証 短縮版尺度の信頼性と妥当性を四点から検討した。第一に,3つの短縮版尺度の信頼性係数を算出した結果,「状況の楽観視」はα=.88, ω=.88,「先延ばし中の肯定的感情」はα=.68, ω=.70, 「先延ばし後の否定的感情」はα=86. ω=.86であった。第二に,テスト情報量の減少率を検討した結果,「状況の楽観視」は68.0%,「先延ばし中の肯定的感情」は62.8%,「先延ばし後の否定的感情」は79.5%であった。第三に,短縮版の下位尺度と対応する原版の下位尺度との相関係数は,r=.93-.97と高い相関係数を示していた。第四に,原版尺度と同様に算術平均を尺度得点として算出し,GPSおよびDPとの相関係数を算出した。その結果,3つの下位尺度すべてで,原版と短縮版ならびにGPSとDPの相関係数のパターンが類似していた。