[PF70] 書字運動の個人内変動と個人差
キーワード:筆圧変化, 書字速度, 筆跡
目 的
筆跡の見た目の形態は,異なる筆者の間では違いが大きく,同一筆者内では,変動はするが,異なる筆者どうしの差より小さい。筆跡は,書字運動の一部が紙の上に残されたものであることから,書字運動にも個人内変動と個人差があると考えられる。書字運動の個人内変動と個人差について検討した。
方 法
20歳から59歳までの成人男女400名が書いた筆跡から,文字の形態は同じだが字種が異なる文字どうし(カタカナの「カ」と漢字の「力」,カタカナの「リ」とひらがなの「り」,カタカナの「ニ」と漢字の「二」,数字の「0」とアルファベット大文字の「O」),文字の一部に「目」を含む文字(目,県,相,想,見,観,現,視,覚,賀,資,質,買,算,真,置)を選び,同一字種,文字の形態が同じ文字,「目」を含む文字の「目」の部分について,筆圧変化および書字速度分布を比較した。
筆圧と書字速度は,13msごとにペン先位置と筆圧を取得する装置を使用して,筆圧は計測値を,書字速度はペンの移動距離と計測時間間隔から算出した。筆圧変化は,ある計測点における筆圧とその次の計測点における筆圧の差を求め,各区間を筆圧増加,変化なし,筆圧減少の3段階で色分け表示した。書字速度は,ある計測点とその次の計測点の間のペン移動速度を2点間の書字速度とし,その文字全体の書字速度の最大値と最小値の間を5等分して,各区間の書字速度を5段階で色分け表示した。筆者間,同一筆者内の変動は,各区分の色変化のパターンを比較した。
結 果
同一文字種の筆圧変化,書字速度パターンの個人内変動を調べた。いずれの筆者においても,同一文字種であれば,その筆者の筆圧変化もしくは書字速度のパターンと認識できる程度に個人差があり,個人内変動は個人差に比べて小さかった。
字形が類似しているが異なる文字種どうし(カタカナの「カ」と漢字の「力」など)については,ほとんどの筆者において,同一筆者内では,筆圧変化,書字速度のいずれにおいても異なるパターンは示さなかった。ただし,一部の筆者では,類似する文字間で,ストロークの書き始めや書き終わりの箇所で筆圧変化や書字速度に異なるパターンを示した。異なるパターンが見られた筆者の筆跡は,書き始めの仕方や書き終わりの仕方が異なっていた。
「目」を共通に持つ文字どうしで,共通部分における書字速度と筆圧変化を,同一筆者内,異なる筆者間で比較した。同一筆者内では,共通部分と他の部分との関係(位置,大きさ,縦横比など)にかかわらず,筆圧変化,書字速度ともほぼ同じパターンを示した。ただし,共通部分の最終画と次の字画を続け書きで書いた場合には,書字速度,筆圧変化ともに異なるパターンを示した。
考 察
同一文字における筆圧変化と書字速度パターンの比較結果から,同一筆者内では,字形だけでなく,書字速度や筆圧変化のような書字運動の面でも,個人内で恒常性が見られることがわかった。また,個人間では,異なる運動パターンが見られることもわかった。
字形が類似していて字種が異なる文字や,異なる字種どうしであるが共通の字画構成の部分の書字運動パターンの比較結果から,同一人が書いた筆跡では,同じような字画構成の書字においては,縦横比のような文字全体のバランスが異なり,見た目の特徴が異なっても,書字運動は,ほぼ同じであることがわかった。
以上より,書字運動パターンは,形態上の見た目の特徴とは異なる観点からの,筆跡における,その人らしさの特徴を表していると考えられる。
筆跡の見た目の形態は,異なる筆者の間では違いが大きく,同一筆者内では,変動はするが,異なる筆者どうしの差より小さい。筆跡は,書字運動の一部が紙の上に残されたものであることから,書字運動にも個人内変動と個人差があると考えられる。書字運動の個人内変動と個人差について検討した。
方 法
20歳から59歳までの成人男女400名が書いた筆跡から,文字の形態は同じだが字種が異なる文字どうし(カタカナの「カ」と漢字の「力」,カタカナの「リ」とひらがなの「り」,カタカナの「ニ」と漢字の「二」,数字の「0」とアルファベット大文字の「O」),文字の一部に「目」を含む文字(目,県,相,想,見,観,現,視,覚,賀,資,質,買,算,真,置)を選び,同一字種,文字の形態が同じ文字,「目」を含む文字の「目」の部分について,筆圧変化および書字速度分布を比較した。
筆圧と書字速度は,13msごとにペン先位置と筆圧を取得する装置を使用して,筆圧は計測値を,書字速度はペンの移動距離と計測時間間隔から算出した。筆圧変化は,ある計測点における筆圧とその次の計測点における筆圧の差を求め,各区間を筆圧増加,変化なし,筆圧減少の3段階で色分け表示した。書字速度は,ある計測点とその次の計測点の間のペン移動速度を2点間の書字速度とし,その文字全体の書字速度の最大値と最小値の間を5等分して,各区間の書字速度を5段階で色分け表示した。筆者間,同一筆者内の変動は,各区分の色変化のパターンを比較した。
結 果
同一文字種の筆圧変化,書字速度パターンの個人内変動を調べた。いずれの筆者においても,同一文字種であれば,その筆者の筆圧変化もしくは書字速度のパターンと認識できる程度に個人差があり,個人内変動は個人差に比べて小さかった。
字形が類似しているが異なる文字種どうし(カタカナの「カ」と漢字の「力」など)については,ほとんどの筆者において,同一筆者内では,筆圧変化,書字速度のいずれにおいても異なるパターンは示さなかった。ただし,一部の筆者では,類似する文字間で,ストロークの書き始めや書き終わりの箇所で筆圧変化や書字速度に異なるパターンを示した。異なるパターンが見られた筆者の筆跡は,書き始めの仕方や書き終わりの仕方が異なっていた。
「目」を共通に持つ文字どうしで,共通部分における書字速度と筆圧変化を,同一筆者内,異なる筆者間で比較した。同一筆者内では,共通部分と他の部分との関係(位置,大きさ,縦横比など)にかかわらず,筆圧変化,書字速度ともほぼ同じパターンを示した。ただし,共通部分の最終画と次の字画を続け書きで書いた場合には,書字速度,筆圧変化ともに異なるパターンを示した。
考 察
同一文字における筆圧変化と書字速度パターンの比較結果から,同一筆者内では,字形だけでなく,書字速度や筆圧変化のような書字運動の面でも,個人内で恒常性が見られることがわかった。また,個人間では,異なる運動パターンが見られることもわかった。
字形が類似していて字種が異なる文字や,異なる字種どうしであるが共通の字画構成の部分の書字運動パターンの比較結果から,同一人が書いた筆跡では,同じような字画構成の書字においては,縦横比のような文字全体のバランスが異なり,見た目の特徴が異なっても,書字運動は,ほぼ同じであることがわかった。
以上より,書字運動パターンは,形態上の見た目の特徴とは異なる観点からの,筆跡における,その人らしさの特徴を表していると考えられる。