The 60th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

Presentation information

ポスター発表

[PG] ポスター発表 PG(01-76)

Mon. Sep 17, 2018 10:00 AM - 12:00 PM D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号10:00~11:00 偶数番号11:00~12:00

[PG10] 親の学習への関与行動が子どもの課題価値認知に及ぼす影響

養育行動の調整効果に着目して

解良優基 (南山大学)

Keywords:動機づけ, 課題価値, 親の関与行動

問題と目的
 子どもたちが認知する学習への価値づけの問題は,児童・生徒の学習意欲と大きく関連する重要な要因である。このような学習課題への価値づけを直接的に扱った概念が,Eccles & Wigfield (1985) による課題価値 (task value) である。
 子どもたちの課題価値の認知に影響する要因としてSimpkinsらは,親や教師など子どもにとって身近で重要な他者の信念や行動に着目している (e.g., Simpkins et al., 2012)。すなわち,親が子どもたちの学習の価値を高く認知していたり,自身の子どもの学業達成に高い期待をもっていたりするとき,親は子どもの学習行動に対して積極的に関わる。そのような行動を媒介して,親の動機づけ信念は子どもたちへと伝達すると考えられている。
 しかし,そのような親の信念や行動が子どもたちの課題価値の認知へと及ぼす影響過程には,いくつかの調整要因が存在する可能性も示唆されている (e.g., Rozek et al., 2015)。どのような条件の下で親の信念や行動が子どもの課題価値の認知に影響をもつのかを検討することは,家庭における学習動機づけの支援を考えるうえでも重要であると考えられる。そこで,本研究では親の学習への関わりが子どもの課題価値の認知に及ぼす影響について,学業に限らないより一般的な養育行動の質に着目して検討を行う。

方 法
対象者
 小学生の子どもをもつ親とその子ども140組を対象とし,調査会社に委託してFax調査を行った。性別については,親も子どもも均等になるようにそれぞれ70名ずつから得られるように調査を依頼した。親の平均年齢は,44.08歳 (SD = 4.88),子どもの平均年齢は10.96歳 (SD = 0.83) であった。なお,本研究では子どもの学習課題として理科の授業について尋ねた。
質問紙
 親の関与行動:竹村・小林 (2010) などの尺度項目を参考に作成した。下位因子として,図鑑や本を読むことを勧めたり,もの作りの体験を通して子どもに学びの機会を提供する文化活動関与と,宿題の確認やテストの結果についての話し合いなど,子どもの学校での勉強に直接的に関わる勉強関与の2因子を想定した。10項目6件法。 親の養育行動:伊藤他 (2014) によって作成された尺度項目の中から因子負荷量の高かった10項目を用いた。この尺度は,子ども中心の養育行動である肯定的養育と,親中心の養育行動である否定的養育の2因子からなる。4件法。 子どもの課題価値の認知:解良・中谷 (2014) の尺度から13項目を用いた。この尺度は本来4因子からなるが,本研究では結果の解釈が過度に複雑になることを避けるために,4つの下位因子については区別せず,13項目の加算平均得点を「課題価値」の得点として扱った。5件法。

結果と考察
 親の関与行動と養育行動,およびこれらの交互作用項を独立変数とし,子どもの課題価値の認知を従属変数とした重回帰分析を行った (Table 1)。その結果,文化活動関与と否定的養育行動との交互作用項,および勉強関与と肯定的養育行動との交互作用項が有意であった。次に,交互作用効果について検討するために単純傾斜の検定を行った。その結果,否定的養育行動の得点が低い (平均-1SD) とき,文化活動関与は子どもの課題価値認知を高めていたものの (b = 1.15, p < .01),否定的養育行動の得点が高い (平均+1SD) ときは文化活動関与の効果はみられなかった (b = 0.09, n.s.)。また,肯定的養育行動の得点が高い (平均+1SD) ときは勉強関与が子どもの課題価値認知を高めていたものの (b = 1.22, p < .01),肯定的養育行動の得点が低い (平均-1SD) ときは勉強関与の効果がみられなかった (b = 0.23, n.s.)。
 以上より,学習面への働きかけを指す関与行動の効果は,よりジェネラルな養育行動によって調整されることが示された。さらに,関与行動の質の違いによって,調整要因となる養育行動の質も異なっていた。