[PG13] 中学生における共感性と関係性攻撃の関係について
仲良しグループと同調性に着目して
Keywords:共感性, 同調性, 関係性攻撃
問題と目的
他者に共感する能力は人と関わりをもつうえで重要な能力である。共感性が高いことは,人の気持ちが分かるなどのプラスな側面ばかりであると思われているが,共感性が高いことによって生じる問題があることが指摘されている。例えば,出口・大川(2005),畠山・畠山(2012)が挙げられる。
本研究の目的は,共感性が高いことによる問題を他者との関わりの観点から指摘することである。
方 法
調査対象 北海道札幌市内の公立中学校に通う中学生295名(男性135名,女性155名)を対象に,質問紙調査を実施した。
質問紙の構成 青年期多次元的共感性尺度(登張,2003),関係性攻撃尺度(梅津・荒井・浜口,2012),相互独立的-相互協調的自己観尺度(高田,2000)を使用した。それぞれの質問項目は5件法で回答を求めた。
調査の実施 2017年10月に行った。中学校に依頼をし,質問紙を配布・回収した。
結果と考察
共感性の下位因子である「個人的苦痛」と関係性攻撃に対する,同調性の下位因子である「他者への親和・順応」の媒介効果を検討した(Figure1)。
まず,全体効果として個人的苦痛の操作が関係性攻撃に及ぼす影響を単回帰分析により検討したところ,個人的苦痛から関係性攻撃へのパスは有意であった(β=.22,p<.01,R2=.04)。次に,間接効果に関しては,ブーストラップ法(バイアス修正法,2,000回のリサンプリング)により,95%信頼区間を算出した。その結果,0は含まれておらず(95%CIbs(0.03,0.14)),他者への親和・順応の有意な間接効果が認められた。また,全体効果から間接効果を除いたところ,個人的苦痛から関係性攻撃へのパスは得点が下がった(β=.14,p=.026)。 つまり,個人的苦痛から関係性攻撃に対する効果は,他者への親和・順応によって部分媒介されていたと言える。この結果から,個人的苦痛が高い人は他者への親和・順応が高くなり,その結果として関係性攻撃が高くなったことが示された。
個人的苦痛から関係性攻撃へのパスは有意であったことから,個人的苦痛自体が関係性攻撃を高めるという結果も示された。
これまでの共感性と攻撃性に関する研究において,「攻撃行動が生起するのは共感性が欠如しているから」というのが通説であった。しかし,関係性攻撃に限定すると,他者に情動的に強く共感する人で,その共感が自分の苦しみとなる傾向があり,かつ他者との同化を重んじる傾向があると,関係性攻撃を行うことが今回の研究結果から示された。
「個人的苦痛」の得点が高い子どもたちと言うのは,既に共感性のある要素は高いということができる。つまり,共感性を高めること・共感できることを教育の目標に定めるだけでは,必ずしも向社会的行動につながらないのである。他者の苦しさや悲しさについて,少し距離を置いて共感できる力をどのように育てていくのかについて考えていく必要がある。
他者に共感する能力は人と関わりをもつうえで重要な能力である。共感性が高いことは,人の気持ちが分かるなどのプラスな側面ばかりであると思われているが,共感性が高いことによって生じる問題があることが指摘されている。例えば,出口・大川(2005),畠山・畠山(2012)が挙げられる。
本研究の目的は,共感性が高いことによる問題を他者との関わりの観点から指摘することである。
方 法
調査対象 北海道札幌市内の公立中学校に通う中学生295名(男性135名,女性155名)を対象に,質問紙調査を実施した。
質問紙の構成 青年期多次元的共感性尺度(登張,2003),関係性攻撃尺度(梅津・荒井・浜口,2012),相互独立的-相互協調的自己観尺度(高田,2000)を使用した。それぞれの質問項目は5件法で回答を求めた。
調査の実施 2017年10月に行った。中学校に依頼をし,質問紙を配布・回収した。
結果と考察
共感性の下位因子である「個人的苦痛」と関係性攻撃に対する,同調性の下位因子である「他者への親和・順応」の媒介効果を検討した(Figure1)。
まず,全体効果として個人的苦痛の操作が関係性攻撃に及ぼす影響を単回帰分析により検討したところ,個人的苦痛から関係性攻撃へのパスは有意であった(β=.22,p<.01,R2=.04)。次に,間接効果に関しては,ブーストラップ法(バイアス修正法,2,000回のリサンプリング)により,95%信頼区間を算出した。その結果,0は含まれておらず(95%CIbs(0.03,0.14)),他者への親和・順応の有意な間接効果が認められた。また,全体効果から間接効果を除いたところ,個人的苦痛から関係性攻撃へのパスは得点が下がった(β=.14,p=.026)。 つまり,個人的苦痛から関係性攻撃に対する効果は,他者への親和・順応によって部分媒介されていたと言える。この結果から,個人的苦痛が高い人は他者への親和・順応が高くなり,その結果として関係性攻撃が高くなったことが示された。
個人的苦痛から関係性攻撃へのパスは有意であったことから,個人的苦痛自体が関係性攻撃を高めるという結果も示された。
これまでの共感性と攻撃性に関する研究において,「攻撃行動が生起するのは共感性が欠如しているから」というのが通説であった。しかし,関係性攻撃に限定すると,他者に情動的に強く共感する人で,その共感が自分の苦しみとなる傾向があり,かつ他者との同化を重んじる傾向があると,関係性攻撃を行うことが今回の研究結果から示された。
「個人的苦痛」の得点が高い子どもたちと言うのは,既に共感性のある要素は高いということができる。つまり,共感性を高めること・共感できることを教育の目標に定めるだけでは,必ずしも向社会的行動につながらないのである。他者の苦しさや悲しさについて,少し距離を置いて共感できる力をどのように育てていくのかについて考えていく必要がある。