The 60th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表

[PG] ポスター発表 PG(01-76)

Mon. Sep 17, 2018 10:00 AM - 12:00 PM D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号10:00~11:00 偶数番号11:00~12:00

[PG73] いじめ体験後の「つらい体験からの成長要因尺度」の作成

PTGのモデルによる妥当性の検討

長田真人1, 相澤直樹2 (1.神戸大学大学院, 2.神戸大学)

Keywords:いじめ, PTG, 尺度作成

問題・目的
 いじめについて定義することや具体的な行為について言及しない場合のいじめ被害経験率は小学生で3∼5割,中学生で2∼3割であるとされている(下田,2014)。いじめを始めとしたつらい体験は,短期的なストレス障害だけではなく,自尊感情の低下をはじめとした長期的な影響もある(荒木,2005)。一方で,いじめの長期的な影響には,その回復過程の中に肯定的な影響があることが知られている(香取,1999)。しかし,その生成過程については研究が少なく,検討の余地がある。そこで,本研究ではいじめからの回復過程を明らかにするため「つらい体験からの成長要因尺度」を作成し,信頼性・妥当性を検討する。その際に,危機的な出来事や困難な経験における精神的なもがきや戦いの結果生じるポジティブな心理的変容の体験である,PTG(Post Traumatic Growth:心的外傷後成長)に注目する(Tedeschi & Calhoun,1996)。PTGを促進する概念としては,反すう(上條・湯川,2016)やソーシャルサポート(亀田・相良,2011)が知られており,本研究では妥当性の検討に使用する。

方  法
 質問紙による調査を行った。調査時期は2016年10月~12月で,調査協力者は関西地区の大学2校において調査に協力した538名の中で欠損値を除いた458名(男性182名,女性257名,その他7名,欠損12名)であった(平均年齢19.59歳(1.26)) (有効回答率85.29%)。調査内容は予備調査にて作成した,32項目からなる「つらい体験からの成長要因尺度」,いじめ体験に関する尺度,PTGI-J(Taku et al.,2007)学生用ソーシャル・サポート尺度(SESS)(久田,1989),自尊感情尺度(山本・松井・山成,1982),ネガティブな反すうに関する尺度(伊藤・上里,2001)であった。

結  果
 まず,項目ごとに天井効果,床効果を確認し,6項目を除外した。続いて,探索的因子分析を主因子法Promax回転で行った。尺度の構成概念やスクリープロットによる判断から3因子が妥当であると判断した。そこから,二重負荷を示すものと因子負荷量が.40未満のもの7項目を除いた。確認的因子分析を行った結果,モデルの当てはまりは良好であったため,最終的に3因子19項目の尺度となった(χ2(149) = 406.73(p<.05),GFI=.89,AGFI=.86,CFI=.90,RMSEA=.07)。第1因子を「安全」,第2因子を「開示」,第3因子を「切り替え」と命名した。尺度の信頼性は,全体でα=.89であり,各下位因子はα=.88,.78,.79であった。

考  察
 3因子19項目からなる「つらい体験からの成長要因尺度」を作成した。本研究においては,併存的妥当性や増分妥当性の検討から,十分な基準関連妥当性が確認された。今後は,再検査信頼性の検討やいじめ以外のつらい体験に関する検討を行う必要があると考えられる。