[PH36] 保育者養成校における初学者を対象としたピアノ実技指導
ー緊張・不安の低減に着目してー
Keywords:保育者養成, 音楽, ピアノ
問題と目的
現在,保育者養成校におけるピアノ実技指導は,学生の初学者の多さ,多様な保育に対応する困難さ,教員の受けてきた音楽教育との違いによる混乱,の3点で問題点が整理される。保育者養成校に入学する学生のうちおよそ70%が初学者であることは先行研究からも明らかとされており,技術の習得に時間がかかる学習領域であるにも関わらず,数多くの幼児曲の弾き歌いや子どもたちの活動を支える役割を担うことが求められている。またレッスン形態・教材の改正などにより音楽専門の教育を受けてきた教員にも混乱が生じている。こうした現状を受け,指導の内容について再考する必要がある。
そのためにはまず,保育者養成課程の学生の,ピアノ実技についてのより詳しい実態を調査する必要があると考えた。そこで本研究では,予備調査において多くの学生が悩みとして挙げていた演奏時の緊張や人前で弾くことに対しての不安についてより詳しく調査し,学生の緊張や不安の程度や原因を明らかにすることを目的とした。
方 法
調査時期:2017年5月。
調査対象:茨城県A短期大学学生74名。
調査内容:「あがり」の原因質問紙(CAEQ)(有光2001)を参考に作成した質問紙を用い,「失敗不安」「他者への意識」「準備不足」「性格」「責任」「状況の新奇」の6項目において,学生の緊張の程度や原因を調査する。また,ピアノの経験年数や音楽を用いた発表機会の有無,ピアノ演奏時の緊張の程度との関連も調査する。
結果と考察
調査の結果は,Table 1に示すとおりである。
全ての項目において4件法(4点満点)の平均2.5を上回っており,どの項目に対しても緊張を高く感じているということが示された。このことから,保育における弾き歌いの状況そのものが,緊張を高く感じるものであり,独自に対策が必要なものであると考えられる。
次に,「あがり」の原因6項目と過去のピアノ経験,発表機会の有無,緊張の程度ごとに各変数の相関係数を求めた(Table2)。分析の結果,「緊張の程度」と有意な相関がみられたのは,「失敗不安」「他者への意識」「性格」「状況の新奇」であり,「準備不足」とは有意な相関がみられなかった。また「発表機会」とは有意な負の相関がみられた。一方,「性格」と「失敗不安」「他者への意識」が有意な相関を示している。有光(2001)によると他者の評価を気にしやすい人ほど「あがり」やすく,楽観性の高い人は「あがり」にくいと述べており,それと一致する結果となった。つまり,他者の評価を肯定的に捉え,楽観的に考えられるように導く介入が,緊張・不安の低減に有効であると考えられる。「他者への意識」や「楽観的にとらえること」に目標をおいた認知面での介入を行った上で具体的な方略を示す緊張の対策行い,その効果について検討する必要があることが示された。
現在,保育者養成校におけるピアノ実技指導は,学生の初学者の多さ,多様な保育に対応する困難さ,教員の受けてきた音楽教育との違いによる混乱,の3点で問題点が整理される。保育者養成校に入学する学生のうちおよそ70%が初学者であることは先行研究からも明らかとされており,技術の習得に時間がかかる学習領域であるにも関わらず,数多くの幼児曲の弾き歌いや子どもたちの活動を支える役割を担うことが求められている。またレッスン形態・教材の改正などにより音楽専門の教育を受けてきた教員にも混乱が生じている。こうした現状を受け,指導の内容について再考する必要がある。
そのためにはまず,保育者養成課程の学生の,ピアノ実技についてのより詳しい実態を調査する必要があると考えた。そこで本研究では,予備調査において多くの学生が悩みとして挙げていた演奏時の緊張や人前で弾くことに対しての不安についてより詳しく調査し,学生の緊張や不安の程度や原因を明らかにすることを目的とした。
方 法
調査時期:2017年5月。
調査対象:茨城県A短期大学学生74名。
調査内容:「あがり」の原因質問紙(CAEQ)(有光2001)を参考に作成した質問紙を用い,「失敗不安」「他者への意識」「準備不足」「性格」「責任」「状況の新奇」の6項目において,学生の緊張の程度や原因を調査する。また,ピアノの経験年数や音楽を用いた発表機会の有無,ピアノ演奏時の緊張の程度との関連も調査する。
結果と考察
調査の結果は,Table 1に示すとおりである。
全ての項目において4件法(4点満点)の平均2.5を上回っており,どの項目に対しても緊張を高く感じているということが示された。このことから,保育における弾き歌いの状況そのものが,緊張を高く感じるものであり,独自に対策が必要なものであると考えられる。
次に,「あがり」の原因6項目と過去のピアノ経験,発表機会の有無,緊張の程度ごとに各変数の相関係数を求めた(Table2)。分析の結果,「緊張の程度」と有意な相関がみられたのは,「失敗不安」「他者への意識」「性格」「状況の新奇」であり,「準備不足」とは有意な相関がみられなかった。また「発表機会」とは有意な負の相関がみられた。一方,「性格」と「失敗不安」「他者への意識」が有意な相関を示している。有光(2001)によると他者の評価を気にしやすい人ほど「あがり」やすく,楽観性の高い人は「あがり」にくいと述べており,それと一致する結果となった。つまり,他者の評価を肯定的に捉え,楽観的に考えられるように導く介入が,緊張・不安の低減に有効であると考えられる。「他者への意識」や「楽観的にとらえること」に目標をおいた認知面での介入を行った上で具体的な方略を示す緊張の対策行い,その効果について検討する必要があることが示された。