[PH37] 中高生における英語力とその自己評価
動機づけとの関連を含めた検討
Keywords:英語力, 自己評価, Dunning=Kruger効果
問 題
学習において自身の学力,あるいはパフォーマンスの水準を正確に把握することは,さらなる学習の積み上げをより効果的に進めるために必要なことではないだろうかしかし,自己の学力やパフォーマンスを正確に把握することは必ずしも簡単ではない。例えば,Kruger & Dunning(2009)では,能力やパフォーマンスの低い群において特に,実際の能力やパフォーマンスと自己評価との乖離が大きくなることが示されている。また,米田・細川・西村・物井(2013)でも,英語力が低いと自己評価が過大になる傾向が見られている。
本研究では,いわゆるDunning=Kruger効果が中高生の自身の英語力の見積もりにおいても見られるのかを検討するために,同様の手法を用いて検討を行う。また,実際の英語力と自己評価との間における乖離が英語学習の動機づけとどのように関連するのかも検討を行い,その乖離がもたらすものについての考察も行う。
方 法
調査対象
関東地方および北陸地方の中学校A,B,そして高等学校A,B,Cの計5校の協力により,調査を実施した。中高ともに学年は2年生であった。英語力を測るためのテスト,および質問項目にすべて回答がえられた中学生306名,高校生412名を対象に分析を行った。
調査内容
Young Learners English Test(YLE) ケンブリッジ英検における試験であり,CEFRにも直結するものである。中学生はStartersを,高校生はFlyersを実施した。本研究では,ライティングとリーディングのみを採用した。
英語力の自己評価 Kruger & Dunning(2009)を参考に,自身のYLEの結果と総合的な英語力に関する同じ学年内におけるパーセンタイル順位とYLEの試験の正解率の見積りを尋ねた。
英語学習動機づけ 米田・西村・細川(2014)で使用した英語学習に対する動機づけを尋ねる質問項目を使用した。
結 果
まず,調査対象者のYLEの得点を用いて,学校ごとにパーセンタイル順位を算出した。そして,得点の四分位数を割り出し,4つの群のYLEの得点,さらにテスト得点のパーセンタイル順位,および総合的な英語力の見積もりの平均を算出した。その結果を中学校,高校別にFigure 1,2に示した。
次に,実際のテストの得点(パーセンタイル順位)と見積りの差,および実際の正解率と正解率の推定の差を算出し,英語学習の動機づけ得点との相関係数を算出した。その際,実際のテスト結果の第2四分位数を境に2分割し,それぞれをテスト成績下位群と上位群とした(Table 1)。
考 察
中学生,高校生ともに成績の上位,下位の両方で実際の得点と見積りとの間に大きな乖離が見られた。高校生は特に上位でその乖離が大きく,英語に対して,自身の得点をかなり低く見ているということが示された。中学生の上位群で得点差と正の関連が見られたことから,自身の立ち位置を正しく認識することは動機づけに影響してくることも考えられる。
学習において自身の学力,あるいはパフォーマンスの水準を正確に把握することは,さらなる学習の積み上げをより効果的に進めるために必要なことではないだろうかしかし,自己の学力やパフォーマンスを正確に把握することは必ずしも簡単ではない。例えば,Kruger & Dunning(2009)では,能力やパフォーマンスの低い群において特に,実際の能力やパフォーマンスと自己評価との乖離が大きくなることが示されている。また,米田・細川・西村・物井(2013)でも,英語力が低いと自己評価が過大になる傾向が見られている。
本研究では,いわゆるDunning=Kruger効果が中高生の自身の英語力の見積もりにおいても見られるのかを検討するために,同様の手法を用いて検討を行う。また,実際の英語力と自己評価との間における乖離が英語学習の動機づけとどのように関連するのかも検討を行い,その乖離がもたらすものについての考察も行う。
方 法
調査対象
関東地方および北陸地方の中学校A,B,そして高等学校A,B,Cの計5校の協力により,調査を実施した。中高ともに学年は2年生であった。英語力を測るためのテスト,および質問項目にすべて回答がえられた中学生306名,高校生412名を対象に分析を行った。
調査内容
Young Learners English Test(YLE) ケンブリッジ英検における試験であり,CEFRにも直結するものである。中学生はStartersを,高校生はFlyersを実施した。本研究では,ライティングとリーディングのみを採用した。
英語力の自己評価 Kruger & Dunning(2009)を参考に,自身のYLEの結果と総合的な英語力に関する同じ学年内におけるパーセンタイル順位とYLEの試験の正解率の見積りを尋ねた。
英語学習動機づけ 米田・西村・細川(2014)で使用した英語学習に対する動機づけを尋ねる質問項目を使用した。
結 果
まず,調査対象者のYLEの得点を用いて,学校ごとにパーセンタイル順位を算出した。そして,得点の四分位数を割り出し,4つの群のYLEの得点,さらにテスト得点のパーセンタイル順位,および総合的な英語力の見積もりの平均を算出した。その結果を中学校,高校別にFigure 1,2に示した。
次に,実際のテストの得点(パーセンタイル順位)と見積りの差,および実際の正解率と正解率の推定の差を算出し,英語学習の動機づけ得点との相関係数を算出した。その際,実際のテスト結果の第2四分位数を境に2分割し,それぞれをテスト成績下位群と上位群とした(Table 1)。
考 察
中学生,高校生ともに成績の上位,下位の両方で実際の得点と見積りとの間に大きな乖離が見られた。高校生は特に上位でその乖離が大きく,英語に対して,自身の得点をかなり低く見ているということが示された。中学生の上位群で得点差と正の関連が見られたことから,自身の立ち位置を正しく認識することは動機づけに影響してくることも考えられる。