[PH44] 人の好き嫌いが,その人の性格の評価にどのように影響するか
Keywords:対人魅力, 性格, 類似
目 的
他者の魅力を評価するときに,態度や性格の類似度が高まるほど,魅力も高くなることが示されている(Byrne & Nelson, 1965)。そこで,梶原・梶原(2012)は,その逆に,自分の性格が,好きな人,嫌いな人とどのように類似するのかを調べた。その際,主要5因子を性格の評価点にして,調査対象者自身が,自分と好きな人,嫌いな人の三者すべての性格を5段階で評価した。その結果,評価が,好き,自分,嫌い,の順になった。このことから,好きの評価には,友人としての理想像と,嫌いには,その逆が反映されたことが考えられた。そこで,実在の好きともっとも望ましい好き,実在の嫌いともっとも望ましくない嫌いを比較することで,実際に好きな人と嫌いな人の性格を,どのように評価しているのかを調べた。
方 法
調査対象者 調査の対象は,27歳から61歳の30名(女性14名,男性16名)の通信制大学生であった。平均年齢は,48.2歳(SD=8.4歳)であった。
調査内容 村上・村上(1999)による,主要5因子性格検査の5因子である外向性,協調性,勤勉性,情緒安定性,知性を評価項目とした。5段階評価では,外向性は,内向的と外向的,協調性は,冷たいと暖かい,勤勉性は,怠惰と勤勉,情緒安定性は,神経質と気楽,知性は,浅はかと思慮深い,を両端として5段階に区切り,評価スコアを,左から右へ1点から5点とした。
手続き はじめに主要5因子の説明をし,その5項目について,対象者に,同性で同世代の友人関係における,もっとも望ましいタイプ(好・想)と,もっとも望ましくないタイプ(嫌・想)の性格を評価させた。さらに,24時間以上経過したあとに,自分自身の性格,実在する好きな人(好・実),実在する嫌いな人(嫌・実)の三者の性格を,5段階で評価させた。三者の評価の回答順序は,好き,嫌い,自分による6通りの順列のいずれかとした。
結 果
まず,評価対象ごとに,5因子の5段階評価のスコアを合計し,その平均値を求めた(Table 1)。これらの値について,1要因5水準の実験参加者内計画の分散分析を行った結果,評価対象の効果は有意であった(F(4, 116)=110.94, p<.001)。そこで,LSD法による多重比較を行った結果,好・実=好・想,嫌・実>嫌・想,となり,好・実と好・想のスコアがもっとも高くなった。
考 察
嫌いな人については,実在の方が,もっとも望ましくないものよりも,スコアが高くなった。このことから,嫌いな人の性格は,過小評価されなかったとまではいいきれないが,もっとも望ましくないものまで低めて評価されたわけではなかった。それに対して,好きな人については,実在ともっとも望ましいもののスコアに違いが見られず,ともにもっとも高い評価になった。つまり,自分が好きな人に対しては,われわれは,ある種,友人としての理想像を描いて,実際よりもかなり過大評価をしていることが考えられる結果になった。
引用文献
Byrne, D, & Nelson, D. (1965). Journal of Personality and Social Psychology, 1, 659-663.
梶原直樹・梶原和子 (2012). 日本心理学会第76回大会発表論文集,2AMB11.
村上宣寛・村上千恵子 (1999). 性格は5次元だった 培風館
他者の魅力を評価するときに,態度や性格の類似度が高まるほど,魅力も高くなることが示されている(Byrne & Nelson, 1965)。そこで,梶原・梶原(2012)は,その逆に,自分の性格が,好きな人,嫌いな人とどのように類似するのかを調べた。その際,主要5因子を性格の評価点にして,調査対象者自身が,自分と好きな人,嫌いな人の三者すべての性格を5段階で評価した。その結果,評価が,好き,自分,嫌い,の順になった。このことから,好きの評価には,友人としての理想像と,嫌いには,その逆が反映されたことが考えられた。そこで,実在の好きともっとも望ましい好き,実在の嫌いともっとも望ましくない嫌いを比較することで,実際に好きな人と嫌いな人の性格を,どのように評価しているのかを調べた。
方 法
調査対象者 調査の対象は,27歳から61歳の30名(女性14名,男性16名)の通信制大学生であった。平均年齢は,48.2歳(SD=8.4歳)であった。
調査内容 村上・村上(1999)による,主要5因子性格検査の5因子である外向性,協調性,勤勉性,情緒安定性,知性を評価項目とした。5段階評価では,外向性は,内向的と外向的,協調性は,冷たいと暖かい,勤勉性は,怠惰と勤勉,情緒安定性は,神経質と気楽,知性は,浅はかと思慮深い,を両端として5段階に区切り,評価スコアを,左から右へ1点から5点とした。
手続き はじめに主要5因子の説明をし,その5項目について,対象者に,同性で同世代の友人関係における,もっとも望ましいタイプ(好・想)と,もっとも望ましくないタイプ(嫌・想)の性格を評価させた。さらに,24時間以上経過したあとに,自分自身の性格,実在する好きな人(好・実),実在する嫌いな人(嫌・実)の三者の性格を,5段階で評価させた。三者の評価の回答順序は,好き,嫌い,自分による6通りの順列のいずれかとした。
結 果
まず,評価対象ごとに,5因子の5段階評価のスコアを合計し,その平均値を求めた(Table 1)。これらの値について,1要因5水準の実験参加者内計画の分散分析を行った結果,評価対象の効果は有意であった(F(4, 116)=110.94, p<.001)。そこで,LSD法による多重比較を行った結果,好・実=好・想,嫌・実>嫌・想,となり,好・実と好・想のスコアがもっとも高くなった。
考 察
嫌いな人については,実在の方が,もっとも望ましくないものよりも,スコアが高くなった。このことから,嫌いな人の性格は,過小評価されなかったとまではいいきれないが,もっとも望ましくないものまで低めて評価されたわけではなかった。それに対して,好きな人については,実在ともっとも望ましいもののスコアに違いが見られず,ともにもっとも高い評価になった。つまり,自分が好きな人に対しては,われわれは,ある種,友人としての理想像を描いて,実際よりもかなり過大評価をしていることが考えられる結果になった。
引用文献
Byrne, D, & Nelson, D. (1965). Journal of Personality and Social Psychology, 1, 659-663.
梶原直樹・梶原和子 (2012). 日本心理学会第76回大会発表論文集,2AMB11.
村上宣寛・村上千恵子 (1999). 性格は5次元だった 培風館