The 60th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

Presentation information

ポスター発表

[PH] ポスター発表 PH(01-73)

Mon. Sep 17, 2018 1:00 PM - 3:00 PM D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号13:00~14:00 偶数番号14:00~15:00

[PH59] 高校生の良好な生活習慣の要因としての親・友人・学校生活に関する研究

食事調査と生活実態調査および半構造化面接の分析から

坂本理香 (学校法人嶺南学園 敦賀気比高等学校)

Keywords:高校生, 生活習慣, 半構造化面接

問題と目的
 情報メディアや夜型化社会等の環境要因により,高校生の食や睡眠さらに心身の健康が危ぶまれているという文脈がある。そして,原因究明と対応策が検討されているが,実際には,一般的な高校生は始業時刻に間に合うように登校し,授業や部活動に参加し,良好な生活を送っているのである。しかしながら,「健康な高校生」は研究の範疇になく,なぜ適応的な生活が成立するのかは解明されていない。高校生の生活はネガティブな状態ありきの研究が進められ,そのポジティブな部分には,あまり関心が向けられてこなかったといえる。本研究では,高校生を取り巻く,親・友人・学校生活に着目し,良好な生活習慣の生起との関連ついて検討することを目的とする。

方  法
 2010 年 1 月~ 2011 年 3 月に半構造化面接法による個人面接を実施した。対象者は個別の食事記録調査を依頼した生徒の中から,本人と保護者の同意が得られた者である。食事記録調査とは,2009年7月の木曜日から日曜日の4日間の指定日について朝食,昼食,夕食および間食の内容と共食者の記録を依頼したもので,対象はA群(不定愁訴や保健室来室,遅刻・欠席等が多く,学校不適応症状が顕在化している生徒)とB群(現時点では顕在化した問題が見あたらず,学校生活に適応していると思われる生徒)に区分して選出し,A群15名(男子6,女子9名),B群19名(男子9名,女子10名)の食事調査記録を得た。また,同時期に全校生徒対象に「A県高校生の生活実態調査」を無記名で実施し,食事記録調査を依頼した生徒には,さしつかえなければ,生活実態調査に記名することを依頼し,本人のものと特定できるようにした。A群のうち,13名(男子5名,女子8名),B群のうち,17名(男子7名,女子10名)が記名により特定できた。食事記録調査を依頼した者のうち,食事記録調査の提出の有無,2種の調査票の一致にかかわらず,個人面接の同意が得られた者に面談を行い,さらにICレコーダーによる音声記録に同意が得られた者を分析対象とした結果,A 群,B群各8名の分析対象者を得た。B群では全員2種の調査票が得られたが,A群では調査票が2種とも得られなかった者が1名,生活実態調査の特定ができなかった者が1名であった。面接は放課後,保健室の相談コーナーにて行い,所要時間は30分~1時間を目安とした。食事記録調査と生活実態調査の数量データの分析にはSPSS Statistics19.0を用いた。

結果と考察
1.食事記録調査および生活実態調査の量的分析結果:t検定の結果,欠食回数がA群で有意に多く,ネット使用時間がA群で有意に長かった。弧食回数,睡眠時間,睡眠不足感に有意差は認められなかった。また,生活実態調査に含まれた心の健康指標としての「自己効力感」「不安傾向」「問題行動」ともに有意差は認められなかった。
2.食事記録調査および半構造化面接の分析結果:面接の質問内容は ①体調が悪くなったり,気分が落ち込んだりする主な原因について ②睡眠や食事は体調や気分にどの程度,影響していると思うか。③学校生活や家庭生活で自分の中で最も気にしたり,影響を受ける事柄や人物 ④親との関係,友人との関係について ⑤親や教師に対する要望について ⑥将来への展望,どんな親になりたいか。どんな家庭を築きたいかであった。食事記録調査,面接の内容についてA群とB群での差異を検討した。食事調査ではA群の傾向として欠食,食事内容の品数や食材の種類の少なさが見られ,B群では逆に欠食がなく,食事メニューや食材が豊富である傾向にあった。対人関係では,A群は親や教師に対する不満を語る者があり,B群については総じて親や教師に信頼感や親和感を示す者が多く,特に食事の用意や部活動に関するサポートが親への感謝の気持ちにつながっていた。友人関係については両群とも最も重要な因子であり,学校生活における適応感の根源であると思われた。また,両群に共通することとして,食事の重要性は認識しているものの,体重を減らすために欠食や偏食することや,起床時刻が遅いために欠食することが見受けられた。睡眠については,短い睡眠時間が眠気等の体調不良に関連することを認める一方で,友人関係等がうまくいっていて,学校生活が楽しいときは,睡眠時間が短くても体調不良にはならず,睡眠時間よりも友人関係の方が,健康に影響すると述べる者が存在した。その理由として,生理的機序の知識の不足,体力回復が比較的容易といった生理的要因のほか,友人関係の満足度が心身の健康に及ぼす影響が多大であり,生理的機序にも影響する可能性が考えられた。良好な親,友人との関係や学校生活の満足感がひいては,良好な生活習慣を生起する可能性が示された。