The 60th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

Presentation information

ポスター発表

[PH] ポスター発表 PH(01-73)

Mon. Sep 17, 2018 1:00 PM - 3:00 PM D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号13:00~14:00 偶数番号14:00~15:00

[PH70] 若者育成効力感尺度の作成

矢野隆彦1, 吉澤寛之2 (1.岐阜県多治見市立小泉中学校, 2.岐阜大学)

Keywords:自己効力感, 地域住民, 若者育成

問題と目的
 生徒指導提要には,「自己効力感を高めることが生徒の問題行動の抑制につながる」と明記されている。自己効力感がいじめ場面における傍観者の援助行動を促すこと(Ajzen,1991)や,自己効力感は学習への意欲低下を抑制すること(小川内,2013)などが立証されており,自己効力感が多様なメカニズムを経て,生徒の問題行動の抑制につながることが明確となっている。学校現場において,生徒に成功体験などを与える主な役割は教師にある。教師効力感は,子どもの自己効力感に正の影響を及ぼすとされている(Gibson & Dembo,1984)。一方,生徒が育ってきた地域も,生徒に成功体験等を与え,自己効力感を高める重要な要因であると考えられるが,地域住民の効力感が生徒の自己効力感に与える影響を検討した先行研究はみられない。本研究では,地域住民の生徒との関係性に対する自己効力感を測定するための「若者育成効力感尺度」の開発を行うことを目的とした。

方  法
調査・分析対象者
 A県B市の1中学校校区において,地域の役員や一般住民を対象に調査を実施した。回答に不備のなかった81名(Mage=64.93,SD=9.45;一般住民17名,町内会長14名,交通安全委員17名,体育委員10名,婦人会7名,福祉委員6名,民生児童委員8名,児童館職員2名)を対象に分析した。
調査内容
 田坂(2003)の「育児効力感尺度」を参考に,若者育成効力感尺度を作成した。地域住民として中学生と直接的にかかわる場面や,地域活動に参加する場面での自己効力感を問う18項目を新たに作成した(6件法)。
調査期間および手続き
 2017年12月中旬に,地域の役員宅および地域の一町内会各宅に質問紙を配布した。回答後,2018年1月上旬までに地域の財産区事務所ポストに投入するとうい回収形式を採用した。

結果と考察
 若者育成効力感尺度の各項目について,最尤法プロマックス回転による因子分析を行った結果,固有値の変化や因子の解釈等の観点から,2因子解が適当であると判断された。因子負荷量が.40に満たなかった項目や二重負荷の項目等を削除して再度因子分析を行い,最終的に14項目を採択した(Table 1)。因子負荷量の高い項目を参考に,各因子を以下のように命名した。
 第Ⅰ因子は,「子どもがよい行いをしているとき,ほめることができる」「子どものよくない姿をその子のために学校に伝えることができる」等の項目の因子負荷量が高かったため,「子どもとの直接的かかわり」と命名した。これは,主に,地域の子どもに対して主体的にかかわることへの効力感であると考えることができる。
 第Ⅱ因子は,「学校などからの依頼に応じて,子どもの活動の援助に関わることができる」「子どもの地域での体験を増やすための行事やイベントなどに関わることができる」等の項目の因子負荷量が高かったため,「地域への貢献」と命名した。これは,主に,地域や学校の活動に参加し,その際に子どもとのかかわりをもつことに対する効力感であると考えることができる。
 対人的自己効力感尺度の信頼性を検討するために,各因子についてクロンバックのα係数を算出したところ,第Ⅰ因子,第Ⅱ因子ともに.921となった。各因子の高い内部一貫性が保たれていることを確認できた。
 今後,若者育成効力感と生徒の自己効力感の関連について調査研究を進める予定である。