[JB07] 主体的・能動的学びの多様性について
教える側と学ぶ側の諸要因
キーワード:授業参加、ルーブリック、ノートテイキング
初等教育から高等教育の現場までアクティブラーニング及び主体的・能動的・対話的な学びが推進されるようになって久しい。教育現場においては,児童生徒や学生の主体的で能動的な学びを引き出すための多様な取り組みがなされている。
本シンポジウムでは,まず,学生の主体的・能動的な学びを引き出すために実施されている,教える側の多様な取り組みについて報告する。次に,教える側の取り組みの一つであるルーブリックを用いた授業において,学ぶ側である学生の意識について議論する。さらに,認知的な立場から,能動的・主体的行動である大学生のノート作成における情報の取捨選択について検討する。最後に小学校教育の授業における児童の主体的・能動的学びの行動として「注視・傾聴」に注目し,授業時の行動分析結果を報告するとともに,質問紙から抽出された児童の主観的な自己評価とのズレについても検討する。
以上、4つの話題提供を通して,小学校教育から高等教育に至る主体的・能動的学びの多様性について,教える側と学ぶ側の両方から議論したい。
主体的・能動的学びを引き出すための取り組みの多様性
高平小百合
2012年には,中央審議会による答申「大学教育の質的転換に向けて~生涯学び続け主体的に考える力を育成する大学へ~」がなされた。文部科学省による大学教育再生加速プログラム(AP)などの支援事業により,いっそうの具体化が進められた。しかしながら,大学教育における主体的・能動的な学びの定義とその実態は,教える側の教員にとっても共通の理解があるとは言えない。そのため,学ぶ側の学生にとってはもっとあいまいなものとなっているのが現状である。
本発表では,主体的・能動的学びにつながるであろう多様な教師の取り組みを記述式調査で抽出した結果を報告する。また,その結果を基に,教員の多様な授業工夫や主体的・能動的・対話的な学びをひきだすための取り組みを抽出する質問紙を作成した。その多様性と学生の主体的・能動的学びへの効果の在り方について議論したい。
ルーブリックによる授業への取り組みの意識
俣野秀典
いわゆるアクティブラーニングの考え方の普及にともない,ルーブリックへの注目が高まっている。ルーブリックとは,「目標に準拠した評価」のための「基準」づくりの方法論であり,多くの場合,学生が何を学習するのかを示す評価規準と学生が学習到達しているレベルを示す具体的な評価基準をマトリクス形式で表現させた「評価指標」そのものを指す。なお,報告者は多くの機関においてルーブリックの研修やコンサルティングを2010年より実施している。
本発表では,大学における(1)特定の授業において,ルーブリックづくりに学生が参加し,ルーブリックを用いた評価を学生自身が行っている取り組み,(2)600時間の実習科目に対応させた体験をベースにしたルーブリック(ルーブリック2.0)の作成・運用の実践を中心に取り上げる。とりわけ,レポートの評価基準を自ら考えてみることや他者のレポートを評価・採点してみることが学生にとってどのような体験だったのか,どのように活用したのか・しなかったのか,ルーブリックの活用による理解度(点数)の差異について,受講生による記述を踏まえつつ,ルーブリックがあることによる授業への取り組みへの意識などについて議論する。
テスト前のノート作成における情報選択とノートテイキング方略
魚崎祐子
主体的・能動的に授業に取り組む上では,授業で扱われた情報の取捨選択や整理などといった情報処理過程を経て授業内容を獲得していくことが求められる。筆者が大学生を対象として調査を行う中で,これらの情報を獲得するための工夫として授業中にノートをとるとともに,日々の授業後やテスト前といったタイミングでノートの再構成を行うという学生が多く報告された。一方で,有効性を感じられないままにノートをまとめ直している学生や,やり方がわからずに実行できていないという学生も見られた。
本発表では,テスト準備として大学生が作成したノートについて分析した結果を報告する。ノートテイキングには大きく分けて符号化と外部貯蔵の機能とがあるとされているが,授業中に符号化作業を行う上では時間的な制限による困難を感じることもあるようである。そこで,スライドや黒板に示された情報を書き写すというノートテイキングになることが少なくない。時間的制限の少ない授業外の時間に,テスト時に利用しやすい情報としてどのようなものを選択し,どのようにまとめているのかを検討することにより,テストで利用するという目的に対しての学生たちによる主体的・能動的な学習行動について考える機会としたい。
主体的・能動的学びとしての児童の「注視・傾聴」行動
布施光代
主体的・能動的な学びが求められている学校教育において,子どもたちをいかに積極的に授業に参加させることができるのかも課題となると考えられる。子どもたちの学習時間の大半を占める学校の授業への積極的な参加は,主体的・能動的な学びの一つ姿と捉えることができるであろう。これまで筆者らは,従来から積極的であると評価されてきた挙手や発言のような行動に加え,授業に集中して話を聞くなどの行動も含めて「積極的授業参加行動」と定義し,「注視・傾聴」,「挙手・発言」,「準備・宿題」の3側面から検討を行ってきた。
本発表では,特に,積極的授業参加行動の中の「注視・傾聴」行動を取り上げ,主体的・能動的学びの姿としての「注視・傾聴」行動を,児童は授業中にどのように行っているのかについて,授業中の行動分析の結果を基に報告する。その際,質問紙調査による児童の主観的な自己評価と,授業の観察データによる客観的な行動分析のズレについても取り上げる。授業分析から明らかになった児童の「注視・傾聴」行動の様相や,主観的評価と客観的評価のズレなどから,主体的・能動的学びとしての「注視・傾聴」行動につなげるための要因について検討したい。
本シンポジウムでは,まず,学生の主体的・能動的な学びを引き出すために実施されている,教える側の多様な取り組みについて報告する。次に,教える側の取り組みの一つであるルーブリックを用いた授業において,学ぶ側である学生の意識について議論する。さらに,認知的な立場から,能動的・主体的行動である大学生のノート作成における情報の取捨選択について検討する。最後に小学校教育の授業における児童の主体的・能動的学びの行動として「注視・傾聴」に注目し,授業時の行動分析結果を報告するとともに,質問紙から抽出された児童の主観的な自己評価とのズレについても検討する。
以上、4つの話題提供を通して,小学校教育から高等教育に至る主体的・能動的学びの多様性について,教える側と学ぶ側の両方から議論したい。
主体的・能動的学びを引き出すための取り組みの多様性
高平小百合
2012年には,中央審議会による答申「大学教育の質的転換に向けて~生涯学び続け主体的に考える力を育成する大学へ~」がなされた。文部科学省による大学教育再生加速プログラム(AP)などの支援事業により,いっそうの具体化が進められた。しかしながら,大学教育における主体的・能動的な学びの定義とその実態は,教える側の教員にとっても共通の理解があるとは言えない。そのため,学ぶ側の学生にとってはもっとあいまいなものとなっているのが現状である。
本発表では,主体的・能動的学びにつながるであろう多様な教師の取り組みを記述式調査で抽出した結果を報告する。また,その結果を基に,教員の多様な授業工夫や主体的・能動的・対話的な学びをひきだすための取り組みを抽出する質問紙を作成した。その多様性と学生の主体的・能動的学びへの効果の在り方について議論したい。
ルーブリックによる授業への取り組みの意識
俣野秀典
いわゆるアクティブラーニングの考え方の普及にともない,ルーブリックへの注目が高まっている。ルーブリックとは,「目標に準拠した評価」のための「基準」づくりの方法論であり,多くの場合,学生が何を学習するのかを示す評価規準と学生が学習到達しているレベルを示す具体的な評価基準をマトリクス形式で表現させた「評価指標」そのものを指す。なお,報告者は多くの機関においてルーブリックの研修やコンサルティングを2010年より実施している。
本発表では,大学における(1)特定の授業において,ルーブリックづくりに学生が参加し,ルーブリックを用いた評価を学生自身が行っている取り組み,(2)600時間の実習科目に対応させた体験をベースにしたルーブリック(ルーブリック2.0)の作成・運用の実践を中心に取り上げる。とりわけ,レポートの評価基準を自ら考えてみることや他者のレポートを評価・採点してみることが学生にとってどのような体験だったのか,どのように活用したのか・しなかったのか,ルーブリックの活用による理解度(点数)の差異について,受講生による記述を踏まえつつ,ルーブリックがあることによる授業への取り組みへの意識などについて議論する。
テスト前のノート作成における情報選択とノートテイキング方略
魚崎祐子
主体的・能動的に授業に取り組む上では,授業で扱われた情報の取捨選択や整理などといった情報処理過程を経て授業内容を獲得していくことが求められる。筆者が大学生を対象として調査を行う中で,これらの情報を獲得するための工夫として授業中にノートをとるとともに,日々の授業後やテスト前といったタイミングでノートの再構成を行うという学生が多く報告された。一方で,有効性を感じられないままにノートをまとめ直している学生や,やり方がわからずに実行できていないという学生も見られた。
本発表では,テスト準備として大学生が作成したノートについて分析した結果を報告する。ノートテイキングには大きく分けて符号化と外部貯蔵の機能とがあるとされているが,授業中に符号化作業を行う上では時間的な制限による困難を感じることもあるようである。そこで,スライドや黒板に示された情報を書き写すというノートテイキングになることが少なくない。時間的制限の少ない授業外の時間に,テスト時に利用しやすい情報としてどのようなものを選択し,どのようにまとめているのかを検討することにより,テストで利用するという目的に対しての学生たちによる主体的・能動的な学習行動について考える機会としたい。
主体的・能動的学びとしての児童の「注視・傾聴」行動
布施光代
主体的・能動的な学びが求められている学校教育において,子どもたちをいかに積極的に授業に参加させることができるのかも課題となると考えられる。子どもたちの学習時間の大半を占める学校の授業への積極的な参加は,主体的・能動的な学びの一つ姿と捉えることができるであろう。これまで筆者らは,従来から積極的であると評価されてきた挙手や発言のような行動に加え,授業に集中して話を聞くなどの行動も含めて「積極的授業参加行動」と定義し,「注視・傾聴」,「挙手・発言」,「準備・宿題」の3側面から検討を行ってきた。
本発表では,特に,積極的授業参加行動の中の「注視・傾聴」行動を取り上げ,主体的・能動的学びの姿としての「注視・傾聴」行動を,児童は授業中にどのように行っているのかについて,授業中の行動分析の結果を基に報告する。その際,質問紙調査による児童の主観的な自己評価と,授業の観察データによる客観的な行動分析のズレについても取り上げる。授業分析から明らかになった児童の「注視・傾聴」行動の様相や,主観的評価と客観的評価のズレなどから,主体的・能動的学びとしての「注視・傾聴」行動につなげるための要因について検討したい。