日本教育心理学会第61回総会

講演情報

自主企画シンポジウム

[JG03] JG03
グループ活動を取り入れた教員養成

2019年9月16日(月) 10:00 〜 12:00 3号館 3階 (3303)

企画・話題提供・指定討論:鈴木由美(聖徳大学)
企画・話題提供・指定討論:矢野正(奈良学園大学)
企画・司会・話題提供・指定討論:原田敬文(豊岡短期大学)
企画:室谷雅美(豊岡短期大学)
企画:原田増廣(豊岡短期大学)
企画・話題提供・指定討論:稲田達也(豊岡短期大学)
企画・話題提供:大塚貴之(豊岡短期大学)

[JG03] グループ活動を取り入れた教員養成

鈴木由美1, 矢野正2, 原田敬文3, 室谷雅美4, 原田増廣5, 稲田達也6, 大塚貴之7 (1.聖徳大学, 2.奈良学園大学, 3.豊岡短期大学, 4.豊岡短期大学, 5.豊岡短期大学, 6.豊岡短期大学, 7.豊岡短期大学)

キーワード:教員養成、保育者養成、グループ活動

企画の趣旨 
 前田・関山・太田・鈴木・大神・塩野(2018)によると,保育者を目指す学生に求められることは,適切な保育的配慮を自らの力で計画,実践できるようになることである。
 そのためには,学生自身が直接体験を通じて自らの生活力や活動性の現状を自覚し,それを向上させていくことが必要となるとし,授業における課題解決型の学びや自然体験活動,地域貢献活動等の学内外での体験型の学びを通じて,学生が子どもや保育ひいては社会のニーズを能動的に把握できる力を身につけること,また,それに対して自らの力量に応じた見通しを立てて段階的に解決を図ることができるようになることが期待されるとした。
 これらの力によって,学生自らが人生での課題に対して,蓄積された知識・技能を駆使して解決を図れるようになることが期待されるものであると考えると,保育者・教員養成課程においては,直接的な体験を十分に取り入れる必要がある。
 昨年度のシンポジウムにおいては,「グループ活動を通じた学生支援」として,対人関係ゲーム,コンセンサスゲーム,アドベンチャーカウンセリング,制作活動などのプログラムの紹介や効果の検証を行ったが,今回のシンポジウムでは,保育者養成校・教員養成校における体験型の学習を実際の授業などの教育活動での実践例を中心に紹介する。
 とりわけ,教員養成の授業の中での展開例,初年次教育での展開例,キャリア教育での展開例をグループ活動を中心に紹介したい。

話題提供
心理療法におけるグループ活動を活かした教育
鈴木由美
 幼稚園・保育士養成において,子ども理解と保護者支援に力を入れている児童心理コースでは,心理療法の授業において,グループ活動を行い,チームで自分の力を活かせるように,課題に取り組んでいる。
 グループ活動においては,ふれ合い体験を大切にゲームを通して,人とふれあう大切さを理解し,また自分がどのような気持ちになり,そのとき他者はどのような気持ちになったのか,自他理解することにポイントをおいている。最近の学生は小さい時から,友だちや両親に優しいから保育に向いていると言われ,それを信じて大学まで来たが,本当の優しさを自分は持っているのか,混乱する学生もいる。そこで,グループ活動の中で,他の学生の意見を聴くことで。自分を見つめ直す良いきっかけを作っている。これらの活動の紹介をシンポジウムで行いたい。

人間教育を中心とした教員養成
矢野 正
 本学では,人間教育の理念を柱とした教員養成を実施し,よりわかりやすく具現化するために「人間教育学(1年次)」「人間教育実践力開発演習Ⅰ・Ⅱ(1・2年次)」「教職表現力演習Ⅰ・Ⅱ(1・2年次)」等を開講している。
 これからの教員・保育者に求められる 「学級経営力」と「チーム力」を養っている。さらに,3年次の保育・教育実習を挟み,4年次の後期には学修の集大成を位置づける「教職実践演習」を配置し,「人間教育」に焦点を絞りながら,子ども一人ひとりが人生を謳歌し,より深く生きていくことを重視した教育実践の在り方を考究している。
 以上のように教員養成の中でも,上記科目の特性を重んじたグループワークの授業を意図的に行ってきており,シンポジウムでは人間教育学を柱としたこれらの実践事例を中心に紹介したい。

アドベンチャー活動を通じた教育
原田敬文
 保育者・教職者は,こどもの自尊感情を高め,こどもの成長を支援することが求められる。しかし,近年の保育者・教育者自身の自尊感情が十分に醸成されておらず,人間関係のつまづきや早期離職などの問題も起きている。
保育者・教職者志望者に対して,教職者・保育者としての理論や技術を教授するだけでなく,保育者・教職者志望者自身の自尊感情を高めることが必要である。
 自尊感情を高めるための方策として,冒険活動を通して社会性を身につけ自己概念を改善するプロジェクトアドベンチャーのABC(Adventure Based Counseling)の手法を活用した事例を紹介する。ABCについては,1974年にアメリカの高校でABCの包括概念である自己概念の改善・向上が実証され,その後1980年から行われた3年間の研究でも明らかに向上した(prouty,1997)とされている。
 ABCプログラムは,野外教育を中心に,自己理解を中心に進められるプログラムである。保育士・教師を目指す学生にとって,遊びや実体験を通しながら,「今ここ」の学びを大切にするABC体験を「原因が何か」ではなく,「今ここで何が起きているのか」(相互作用)を重視し,教育現場での効果について検証し,教員養成・保育者養成に活用する方策を検討したい。

幼児教育者養成課程における初年次教育
稲田達也
 本学では,初年次教育として新入生研修を行っている。短期大学での幼稚園教諭養成,保育者養成を2年課程で行うにあたり,初年次教育の持つ意味は,学生の入学不安を取りのぞき,良好な人間関係を築くためのプログラムだけでなく,教職者・保育者になるということはどのようなことかという心構えを学ばせる機会も必要である。
 本学の新入生に対する初年次教育プログラムは,入学後すぐに行われる宿泊型の「新入生研修会」をキックオフプログラムとして,導入している。
 運営にあったては,一年後の成長した姿を想像できるように,新2年生も全員参加し,実行委員会を編成して取り組んでいる。
 建学の精神に関する講話の後,学園歌の練習,自然体験プログラム,ダンスなどの表現活動等,新入生歓迎や初年次教育の内容を踏襲しながらも,それを幼児教育現場の指導法を織り交ぜて実施している。学生からは,保育者になる期待が膨らみ,覚悟ができたとの感想が多くあった。これらの事例を紹介したい。

グループ活動を通じた情報リテラシー教育
大塚貴之
 平成25年6月14日閣議決定「第2期教育振興基本計画」において,確かな学力をより効果的に育成するため,言語活動の充実や,グループ学習,ICTの積極的な活用をはじめとする指導方法・指導体制の工夫改善を通じ,協働型・双方向型の授業革新を推進するとしている。
 ICT を活用した教育と同様に,確かな学力の効果的な育成のためにその導入が推奨されている。
 しかし,情報教育の授業において,現時点では,学生は教員の指示に従って情報機器を一人一人個別に操作する,という形式が一般的ではある。しかし,情報機器(パソコン)を理解するグループ活動を実施することで,情報機器に対しての苦手意識を持ちながら黙々と授業を受けた結果,情報機器活用スキルを十分に身につけてこられなかった学生が,話し合いやゲーム形式での学習を通して今まで以上に情報機器に興味関心を持ち,情報機器嫌いの状況が改善すると考えられる。
 このことにより,今後教育現場でICT教育を推進する教員が,情報機器を楽しく活用する手法を身につけ,ICT教育に広がりを出すことができると考える。本シンポジウムでは,情報機器の苦手を克服するためのグループ活動を中心に紹介する。