日本教育心理学会第61回総会

Presentation information

ポスター発表

[PA] ポスター発表 PA(01-63)

Sat. Sep 14, 2019 10:00 AM - 12:00 PM 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間
奇数番号10:00~11:00
偶数番号11:00~12:00

[PA19] 数値と実体との対応関係の把握と参照事例提示の効果

進藤聡彦1, 守屋誠司#2 (1.放送大学, 2.玉川大学)

Keywords:算数、教授方略

問題と目的
 算数・数学で取り上げられる数値と実体量との対応関係の把握が不十分であるという指摘がある。その例として2008年度の小学校全国学力・学習状況調査における「はがきの面積」問題がある。これは約 150 cm2の面積のものを選択肢から選ぶというもので,選択肢とその選択率は切手(1%),年賀はがき(18%),教科書の表紙(49%),教室の床(31%)であり,正答者は20%にも満たなかった。本研究では大学生を対象に面積や体積の数値と実体との対応関係の把握について明らかにすること,また数値と対応する実体量をより正確に捉えられるようにするために参照事例を提示することの効果を明らかにすることを目的とした。
方  法
 対象者は私大福祉系学部の2クラスの学生107名。1つのクラスには数値で表示された面積や体積に該当する物を選択肢の中から選ぶ6つの問題に答えることを求めた(参照事例無群)。もう1つのクラスには,ヒントとして既知の物の面積や体積が事例として提示された(参照事例有群)。各問題と選択肢をTable 1に示す(下線が正解)。
 事例有群の参照事例として用いられたのは,問題1~問題6でそれぞれA4判用紙(600 cm2),500円硬貨(20 cm2),牛乳パック(1000 cm3),牛乳パック(550 m2),卵(70 m3),卵(50 m2)であった。 
事例無群では各問の解答後にどのように答えたかを「公式を使った」「公式を使おうとしたが忘れてしまったので直感で答えた」「最初から直感で答えた」の選択肢から選ぶ質問が付加された。
結果と考察
 各問題の選択肢の選択率をTable 1に示す(表中の右側が参照事例無群,右側が有群)。
面積・体積の把握 参照事例無群の各問題の正答率は30~50%台であった。いずれの問題解決でも求積公式の理解とその物体の長さ(縦・横・直径)
のおおよその感覚的な把握が必要であるが,はがき問題の正答率から長さの感覚が不正確であることも誤答の原因になっていると考えられる。
参照事例提示の効果 χ2検定を行ったところ,問題4を除く5つの問題で参照事例有群の正答者の比率が有意に高かった。問題4では逆に参照事例無群の正答者が有意に多かった。全体の傾向としては判断の際に参照事例を提示することが有効に機能することが確認された。一方,問題4の結果からは参照事例とターゲットの対象の値が大きく異なる場合には,効果をもたないことが分かる。
公式の役割 事例無群で公式を使用したとする者は,問題1~問題6でそれぞれ32,22,15,12,3,5%であった。全体として使用者は少なく,特に球の表面積や体積では公式を忘れたと思われる。また,問題4を除いて公式使用者の正答率は,不使用者の正答率よりも高かった。