[PA38] 幼児の交通行動と親の行動の関係
不適切行動のモデリング
キーワード:幼児、交通行動、モデリング
目 的
幼児は自分が交通事故に遭わないためだけでなく,将来的に適切な交通行動をとることができるように,交通ルールやマナーに関する知識と行動を身につけていかなくてはならない。幼児がそのような知識と行動を最も効果的に身につける方法として、近くにいる保護者の行動を模倣することがある。そこで本研究では、保護者が子どもの前でどのような交通行動をしているのか,子どもが保護者の交通行動をモデリングすることについてどのように認識しているのか,子どもは不適切な交通行動を保護者が行うことをどのようにとらえているのかについて,交通場面における定点観察調査,保護者に対する質問紙調査,幼児に対するヒアリング調査を行っている。本稿では,幼児に対するヒアリング調査の結果を中心に述べたい。
方 法
調査対象者
東京都内のA幼稚園に通っており,調査をするにあたり保護者の同意を得られた51名を調査対象とした。内訳は,年中男児14名(27%),年中女児14名(27%),年長男児10名(20%),年長女児13名(26%)であった。
調査手続き
子どもに対して半構造化ヒアリング調査を個別に行った。交通場面で不適切な行動をしている人が描かれたイラスト(練習1枚、交通場面5枚)を見せて,不適切な行動をしている人は誰か,その理由は何か,その場面でどのように行動をしたらよいか,自分はこのようなことをしたことがあるかなどを尋ね、子どもが自由に語った発言を記録した。調査は幼稚園の空き教室で行った。調査時間は1人につき約20~30分であった.調査時期は2018年10月であった。
結果と考察
信号無視
Figure 1を示し,良くない行動をしている人とその理由を尋ね,男の子が赤信号で渡っていることを指摘した場合を正答とした。全体の9割以上が赤信号で渡っている子どもが不適切であると回答した。正答した子どもに対して,この男の子はどうすべきであったのかを尋ねたところ,すべての子どもが「信号が青になるまで横断歩道で待ってから渡る」と答えることができた。
赤信号で横断した経験を尋ねたところ,全体の約2割の子どもがあると答えた。子どもが自発的に述べた発言の中で,保護者が赤信号で子どもを連れて渡り,子どもに赤信号の言い訳をしている様子があった。子どもは,赤信号で渡ってはいけないことを知っているが,実際に保護者が子どもの手を引いて赤信号で渡ることがあることから,「車が来ていなければ,渡っても良い」「大人と一緒であれば,渡っても良い」と考えたと思われる。
ながらスマホ,縁石上の歩行
Figure 2を示し,良くない行動をしている人とその理由を尋ねた。これには,ながらスマホと縁石の上を歩く行為の2つの不適切な行動が描かれているため,1つの回答が出た後に,「他にはありませんか」と再質問した。ながらスマホと縁石の両方を正答した子どもは全体の55%であった.両方を正答した割合とながらスマホのみを正答した割合(8%)を併せると,63%であった。ながらスマホを正答した子どもに対して,この人はどうすべきであったのかを尋ねたところ,ほとんどの子どもが「スマホの操作をしない」「立ち止まって操作をする」といった適切な内容を答えた。
「パパは走りながらでもスマホを見られるんだよ」,「パパは,車を運転しながらポケモンGOをできるよ」と述べた子どもがいたが,その子たちはながらスマホを不適切な行為であると思っておらず,むしろ父親が走りながら,あるいは運転しながらスマホを操作できることを自慢するように伝えてきた。ながらスマホをするのが良くないことであると思いながら,保護者がその姿を見せることは,子どもの規範意識を低下させることにつながる。また,不適切であると思っていない子どもにとっては,その行為が憧れのものとなり,自分ができる状況になったら,模倣をしてしまうことになると思われる。
幼児は自分が交通事故に遭わないためだけでなく,将来的に適切な交通行動をとることができるように,交通ルールやマナーに関する知識と行動を身につけていかなくてはならない。幼児がそのような知識と行動を最も効果的に身につける方法として、近くにいる保護者の行動を模倣することがある。そこで本研究では、保護者が子どもの前でどのような交通行動をしているのか,子どもが保護者の交通行動をモデリングすることについてどのように認識しているのか,子どもは不適切な交通行動を保護者が行うことをどのようにとらえているのかについて,交通場面における定点観察調査,保護者に対する質問紙調査,幼児に対するヒアリング調査を行っている。本稿では,幼児に対するヒアリング調査の結果を中心に述べたい。
方 法
調査対象者
東京都内のA幼稚園に通っており,調査をするにあたり保護者の同意を得られた51名を調査対象とした。内訳は,年中男児14名(27%),年中女児14名(27%),年長男児10名(20%),年長女児13名(26%)であった。
調査手続き
子どもに対して半構造化ヒアリング調査を個別に行った。交通場面で不適切な行動をしている人が描かれたイラスト(練習1枚、交通場面5枚)を見せて,不適切な行動をしている人は誰か,その理由は何か,その場面でどのように行動をしたらよいか,自分はこのようなことをしたことがあるかなどを尋ね、子どもが自由に語った発言を記録した。調査は幼稚園の空き教室で行った。調査時間は1人につき約20~30分であった.調査時期は2018年10月であった。
結果と考察
信号無視
Figure 1を示し,良くない行動をしている人とその理由を尋ね,男の子が赤信号で渡っていることを指摘した場合を正答とした。全体の9割以上が赤信号で渡っている子どもが不適切であると回答した。正答した子どもに対して,この男の子はどうすべきであったのかを尋ねたところ,すべての子どもが「信号が青になるまで横断歩道で待ってから渡る」と答えることができた。
赤信号で横断した経験を尋ねたところ,全体の約2割の子どもがあると答えた。子どもが自発的に述べた発言の中で,保護者が赤信号で子どもを連れて渡り,子どもに赤信号の言い訳をしている様子があった。子どもは,赤信号で渡ってはいけないことを知っているが,実際に保護者が子どもの手を引いて赤信号で渡ることがあることから,「車が来ていなければ,渡っても良い」「大人と一緒であれば,渡っても良い」と考えたと思われる。
ながらスマホ,縁石上の歩行
Figure 2を示し,良くない行動をしている人とその理由を尋ねた。これには,ながらスマホと縁石の上を歩く行為の2つの不適切な行動が描かれているため,1つの回答が出た後に,「他にはありませんか」と再質問した。ながらスマホと縁石の両方を正答した子どもは全体の55%であった.両方を正答した割合とながらスマホのみを正答した割合(8%)を併せると,63%であった。ながらスマホを正答した子どもに対して,この人はどうすべきであったのかを尋ねたところ,ほとんどの子どもが「スマホの操作をしない」「立ち止まって操作をする」といった適切な内容を答えた。
「パパは走りながらでもスマホを見られるんだよ」,「パパは,車を運転しながらポケモンGOをできるよ」と述べた子どもがいたが,その子たちはながらスマホを不適切な行為であると思っておらず,むしろ父親が走りながら,あるいは運転しながらスマホを操作できることを自慢するように伝えてきた。ながらスマホをするのが良くないことであると思いながら,保護者がその姿を見せることは,子どもの規範意識を低下させることにつながる。また,不適切であると思っていない子どもにとっては,その行為が憧れのものとなり,自分ができる状況になったら,模倣をしてしまうことになると思われる。