日本教育心理学会第61回総会

講演情報

ポスター発表

[PA] ポスター発表 PA(01-63)

2019年9月14日(土) 10:00 〜 12:00 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間
奇数番号10:00~11:00
偶数番号11:00~12:00

[PA43] ADHD系の発達凸凹(発達障害)の小学男児に対して,学習支援,家庭・学校との連携(担任,SC),医療とのコラボによって,本人にとって適切な支援を提供してきたカウンセラーの3年半の実践

高山智1, 中西亮介#2 (1.青山学芸心理, 2.青山学芸心理)

キーワード:発達障害、学習支援、カウンセリング

問  題
 筆者の所属する青山学芸心理(以下当方)は,1995年の設立以来,カウンセリングの和語として「安談」という言葉を用い,日本人の文化や風土に適した心理相談を提供している。
 安談が従来のカウンセリングと性質を異にしている点は,「緊急対応ができる」「社会資源を案内する」「(相談室以外に)一緒に出向く」「医療との協働ができる」など,本人が生きやすい環境を作るための柔軟で効率的な方略をとる点である。
 日本教育心理学会第60回総会では,5年間にわたる発達障害女児への支援について報告した。弊所は,日本社会において,適切な支援とは何かを追求している。
目  的
 発達障害児は,自分がどう思われているかがわからないだけではなく,自分が良いと思うことも周りからなぜ受け入れてもらえないかがわからなくて苦しんでいる。
 教育および心理の臨床家が家族とともに歩んだ3年半を本人の成長に合わせて,家族を支援し続けることの重要性を本論で示す。
事例紹介
 主訴:小2(8歳)夏に来談。知能検査(標準化中のWISC-Ⅳ)実施。私立小において,
「クラス内にうまくいかない友達がいる」「家庭学習に集中がない」「日記を書くのが遅い」「読書がたいくつ」などを主訴とした。
WISC-Ⅳ 全検査IQ 90 (言語理解93 知覚推理104 WM100 処理速度70)。凸凹あり。
 検査者のコメント「単語,語の推理,数唱が高いことから,単純な記憶力は非常に高い」「類似,語音整列,算数,符号,記号探し,絵の抹消が低いことから,検査の目的を理解できても作業に時間がかかった」
 小2の12月から月3回弊所での個別指導による学習支援を受ける。
 小3夏,近隣の公立小を見学。2学期から公立小に転入。
 転入後,週1回のスカイプ指導で学習支援継続。9月から学年末まで欠席ゼロ(出停3日)。十分な適応が見られた。12月保護者面談をした公立小のスクールカウンセラーと連絡を取って情報を共有。
 小3学年末,支援シートを保護者が特別支援コーディネーターに提出。
 小4弊所で月2回の個別指導,週1回のスカイプ指導で学習支援が拡充された。
 小3冬から特定児童からいやがらせをうけていたが,4年になって,あきらかにいじめと言える暴力,暴言が見られるようになった。GW前に新担任(クラス替えなし)の家庭訪問。5月末,クラスメートと放課後自宅で遊ぶ。6月末,クラス内でいじめについての担任主導で話し合い。夏休み,通学1時間以上の弊所までひとりで往復できるようになる。
 小4の11月末に医療機関受診。投薬(インチュニブ)始まる。眠くなるので半錠に調整。同じ頃から特定児童のいじめがひどくなったので,本人は,相談室に自分から助けを求めるようになる。12月初旬,弊所代表が,校長,教頭,コーディネーター,カウンセラーと保護者・本人との面談に同席。
 学校は休んでいいと保護者は言ったが,学校は楽しいと言って登校続けるも,1月に入っても暴力が続いたので,本人が「当該児童がいるかぎり学校に行かない」と宣言して欠席。弊所代表が学校で本人交えて面談。翌日,校長室に登校再開,1週間後に教室に戻る。 
考  察
 本人の安談,保護者への説明,学習サポートの具体的内容,処方の変遷(医療とのコラボ),そして,社会的資源(学校や塾との連携)および警察への被害届について発表当日説明する。なお,本ケースは当人とその家族に許可を得て抄録に載せている。