[PA52] 「学習規律」の現状分析
公開資料の分析から
Keywords:学習規律、小学校、スタンダード
"調査の目的と背景
子どもは入学後に学校の授業という場で他者とともに学ぶための姿勢・技術を身につけていく。「学習規律」という概念は,従来,集団での学習参加に必要な行動やふるまいといった外的な要素と,それを支える自主・共同的な学習についての価値観や態度といった内的な要素の両方を含むものとして論じられてきた(住野,1990)
一方近年,学力向上を目的として授業の構造や内容・指導方法などに関し,一定の標準・モデル(=スタンダード)を定める「授業のスタンダード化」の動きが広がっている。それらの中には,学習規律を「授業の参加に際し,守るべきルール・きまり」として設定したものが含まれている。
スタンダードの多くが,国の教育政策を踏襲して教育委員会が策定したものであることが指摘されており(勝野,2016),自治体の独立性,また学校や教師そして子どもの主体性という観点(苫野,2019)や,教師の専門性への影響(勝野,前出)といった観点から批判的検討がなされている。また,教室における実際の指導場面において教師がどのように学習規律の内在化を促しているか(伊藤,2014,八木,2015),教師が学習規律をどうとらえ,実際にどのような内容を指導しているか(井上・小泉,2010)等の研究が行われてきている。
しかし,現在学校現場において「学習規律」がどのような文脈で用いられ,どのように機能しているのか,「学習規律」の現状を俯瞰・網羅的に明らかにしようとする試みが十分になされているとはいえない。そこで,本研究では,インターネット上に公開されている資料をもとに,「学習規律」をめぐる現状の全体像を描く手がかりを得ることを試みた。
調査の方法
「学習規律」「小学校」をキーワードとしてインターネット上の資料検索を実施した。検索の結果表示された資料のうち,小学校・教育委員会のいずれかにより発信されたものを抽出した。最終的に,200点の公開資料を分析の対象とした。
各資料について,以下の点を確認した。
1)資料の作成・掲載主体と場所・資料の種類
2)資料の目的・文脈・キーワード
3)学習規律の内容についての記述
4)学習規律の指導方法についての記述
◎規律の内在化に向けた指導・働きかけ
調査の結果
1)資料の作成・掲載主体や場所・資料の種類
都道府県・市町村教育委員会のHP 研修資料・ハンドブック/研究報告書/教育の計画書/調査結果報告書/事業の取組紹介資料/NL
各中学校区・各学校のHP 学校紹介資料/教育・学校経営の計画書/評価資料・報告書/研究報告書/指導用教材(掲示,パンフレット,手引き)/指導資料(手引き)/NL(学校だより)/ブログ記事
2)資料の目的・文脈・キーワード
→「学力向上」「小中一貫教育」を中心とし,様々な文脈で言及されていた
「学力向上」「授業改善」「授業の効率化」
「小中一貫教育」「幼保小接続」「幼保小中連携」
「いじめ防止」「人権教育」「道徳教育」「規範意識」
「特別支援」「ユニバーサルデザイン」「ICT活用」
「若手教師」「学級経営」「生活指導」
3)内容についての記述(どのような内容)
→授業前・中・後の各内容に関する記述がみられ,詳細さのレベルは様々であった
持ち物/授業準備/
着席/姿勢/あいさつ・返事/プリントの配布/ノートの書き方/話し方・発表の仕方・話型/聞き方/話合い・対話の仕方/挙手の仕方/考え方/音読・黙読
朝の学習/朝ごはん/前日準備
4)指導方法についての記述(どのように指導)
→以下のような,主に規律の設定・定着方法に関する記述がみられた。
各学年・発達段階に応じた規律の設定/地域・学校内でのすり合わせ→統一・共通理解/対応する教師向け指導規律の設定
掲示(図示・標語など)による全体への提示/ハンドブック・手引き・カード等による個人への提示
強化期間・重点項目の設定/繰り返しの指導と徹底/よい姿・できている姿をほめる/年度初めの集中指導/定期的な定着のチェック・評価
家庭への周知・連携
◎規律の内在化に向けた指導・働きかけ
規律の役割・意義への言及
掲示等の規律の可視化・視覚化
(→常に参照可能に)
発達を踏まえた(応じた)規律の設定と指導
児童による定着の自己評価
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子どもは入学後に学校の授業という場で他者とともに学ぶための姿勢・技術を身につけていく。「学習規律」という概念は,従来,集団での学習参加に必要な行動やふるまいといった外的な要素と,それを支える自主・共同的な学習についての価値観や態度といった内的な要素の両方を含むものとして論じられてきた(住野,1990)
一方近年,学力向上を目的として授業の構造や内容・指導方法などに関し,一定の標準・モデル(=スタンダード)を定める「授業のスタンダード化」の動きが広がっている。それらの中には,学習規律を「授業の参加に際し,守るべきルール・きまり」として設定したものが含まれている。
スタンダードの多くが,国の教育政策を踏襲して教育委員会が策定したものであることが指摘されており(勝野,2016),自治体の独立性,また学校や教師そして子どもの主体性という観点(苫野,2019)や,教師の専門性への影響(勝野,前出)といった観点から批判的検討がなされている。また,教室における実際の指導場面において教師がどのように学習規律の内在化を促しているか(伊藤,2014,八木,2015),教師が学習規律をどうとらえ,実際にどのような内容を指導しているか(井上・小泉,2010)等の研究が行われてきている。
しかし,現在学校現場において「学習規律」がどのような文脈で用いられ,どのように機能しているのか,「学習規律」の現状を俯瞰・網羅的に明らかにしようとする試みが十分になされているとはいえない。そこで,本研究では,インターネット上に公開されている資料をもとに,「学習規律」をめぐる現状の全体像を描く手がかりを得ることを試みた。
調査の方法
「学習規律」「小学校」をキーワードとしてインターネット上の資料検索を実施した。検索の結果表示された資料のうち,小学校・教育委員会のいずれかにより発信されたものを抽出した。最終的に,200点の公開資料を分析の対象とした。
各資料について,以下の点を確認した。
1)資料の作成・掲載主体と場所・資料の種類
2)資料の目的・文脈・キーワード
3)学習規律の内容についての記述
4)学習規律の指導方法についての記述
◎規律の内在化に向けた指導・働きかけ
調査の結果
1)資料の作成・掲載主体や場所・資料の種類
都道府県・市町村教育委員会のHP 研修資料・ハンドブック/研究報告書/教育の計画書/調査結果報告書/事業の取組紹介資料/NL
各中学校区・各学校のHP 学校紹介資料/教育・学校経営の計画書/評価資料・報告書/研究報告書/指導用教材(掲示,パンフレット,手引き)/指導資料(手引き)/NL(学校だより)/ブログ記事
2)資料の目的・文脈・キーワード
→「学力向上」「小中一貫教育」を中心とし,様々な文脈で言及されていた
「学力向上」「授業改善」「授業の効率化」
「小中一貫教育」「幼保小接続」「幼保小中連携」
「いじめ防止」「人権教育」「道徳教育」「規範意識」
「特別支援」「ユニバーサルデザイン」「ICT活用」
「若手教師」「学級経営」「生活指導」
3)内容についての記述(どのような内容)
→授業前・中・後の各内容に関する記述がみられ,詳細さのレベルは様々であった
持ち物/授業準備/
着席/姿勢/あいさつ・返事/プリントの配布/ノートの書き方/話し方・発表の仕方・話型/聞き方/話合い・対話の仕方/挙手の仕方/考え方/音読・黙読
朝の学習/朝ごはん/前日準備
4)指導方法についての記述(どのように指導)
→以下のような,主に規律の設定・定着方法に関する記述がみられた。
各学年・発達段階に応じた規律の設定/地域・学校内でのすり合わせ→統一・共通理解/対応する教師向け指導規律の設定
掲示(図示・標語など)による全体への提示/ハンドブック・手引き・カード等による個人への提示
強化期間・重点項目の設定/繰り返しの指導と徹底/よい姿・できている姿をほめる/年度初めの集中指導/定期的な定着のチェック・評価
家庭への周知・連携
◎規律の内在化に向けた指導・働きかけ
規律の役割・意義への言及
掲示等の規律の可視化・視覚化
(→常に参照可能に)
発達を踏まえた(応じた)規律の設定と指導
児童による定着の自己評価
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