日本教育心理学会第61回総会

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ポスター発表

[PA] ポスター発表 PA(01-63)

Sat. Sep 14, 2019 10:00 AM - 12:00 PM 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間
奇数番号10:00~11:00
偶数番号11:00~12:00

[PA53] 教師の指導行動が児童の自己成長感に及ぼす影響

自律性,有能性,関係性の欲求の充足と変化を媒介として

石田靖彦1, 下岡奈央#2 (1.愛知教育大学, 2.岩津小学校)

Keywords:教師の指導行動、心理的欲求の充足と変化、自己成長感

問題と目的
 Connell & Wellborn(1991)の基本的心理欲求理論では,社会的文脈としての教師の「方向づけ」「自律性支援」「関わり合い」が,児童の自律性,有能性,関係性といった心理的欲求を満たし,児童の内発的動機づけや学習行動,自己成長感に影響を及ぼすと仮定されている。
 本研究では,教師の学級での指導行動が児童の3つの基本的欲求(自律性,有能性,関係性)の充足と変化に着目し,それを媒介として児童の自己成長感に及ぼす影響について検討する。
方  法
調査対象 小学校5,6年生437名(男子205名,女子229名)。2016年10月~11月に実施した。
調査内容
1)教師の学級指導行動:石田・下岡(2017)の「教師の学級指導行動尺度」を使用した。この尺度は授業場面での3つの指導行動(「発言の促進」「目標設定と評価」「関わり合い場面の設定」「児童の主体性の尊重」)と,授業以外の場面での3つの指導行動(「教師と児童の関係づくり」「児童同士の関係づくり」「児童の主体的な学級運営」)の7つの下位尺度計28項目で構成される。児童には,担任の教師について「そう思う」~「そう思わない」の4件法で回答を求めた。
2)児童の3つの心理的欲求の充足:西村・櫻井(2015)の「基本的心理欲求充足尺度」を表現を若干変更して使用した。「そう思う」~「そう思わない」の4件法で回答を求めた。
3)児童の3つの心理的欲求の変化:2)の尺度項目について,この6ヶ月間での欲求の変化について「弱くなった」~「強くなった」の5件法で回答を求めた。
4)児童の自己成長感:神藤(1998)の「自己成長感尺度」の中から5項目を抽出し,表現を若干変更して使用した。「あてはまらない」~「あてはまる」の4件法で回答を求めた。
結果と考察
 教師の7つの学級指導行動は相互相関が高かったため,学級指導行動として1つにまとめた。児童の自律性,有能さ,関係性の欲求充足についても相互相関が高かったため,1つにまとめて「児童の欲求充足」とした。欲求の変化についても同様に,「児童の欲求の増大」として1つにまとめた。そして,教師の学級指導行動が児童の欲求の充足と変化を媒介として自己成長感に及ぼす影響について共分散構造分析を用いて検討した。結果をFigure1に示す。結果から,児童の自律性,有能性,関係性欲求を充足せるような教師の学級指導行動は,単に児童の欲求充足にとどまらず,それらの欲求をさらに増大させ,それが自己の成長感に繋がっている可能性が示唆された。