日本教育心理学会第61回総会

講演情報

ポスター発表

[PA] ポスター発表 PA(01-63)

2019年9月14日(土) 10:00 〜 12:00 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間
奇数番号10:00~11:00
偶数番号11:00~12:00

[PA54] 教師および保護者が重視する小・中学校教師の行動とは?

日本・アメリカ・カンボジアの3国間比較による検討

出口拓彦 (奈良教育大学)

キーワード:教師、保護者、指導

目  的
 本研究では,「子どもたちに対する小・中学校教師の行動」への,教師自身や保護者による重要性の認知について,国家間比較等によって検討した。
方  法
調査対象者および手続き
 日本・アメリカ・カンボジアの小・中学校の教師(順に170, 136, 150名),と児童生徒の保護者(170, 109, 150名),計885名を対象に調査を行った(加えて,アメリカの高等学校教師と保護者計95名も対象としたが分析からは除外した)。日本とアメリカはWEB調査を実施し(日本能率協会総合研究所に委託),カンボジアは訪問調査を行った(クロスインデックス社に委託)。
測定した変数
1.教師の行動 カンボジアの「Curriculum Framework of General Education and Technical Education」(Department of Curriculum Development, 2016),日本の「教職課程コアカリキュラム」(教職課程コアカリキュラムの在り方に関する検討会, 2017)等を参考に,計16項目を作成した(Table 1 参照)。まず,各項目について6段階評定で重要度の回答を求め,次に,特に重要と思う項目を5つ順番に記載するよう依頼した。
2.居住地域 都市部・農村部という2つの選択肢から1つを選択するよう求めた。
結果と考察
指標の算出
 「教師の行動」に関する各項目の平均値と標準偏差を算出したところ,天井効果が発生していると考えられた。このため,特に重要と思う項目として1番目に挙げられた項目を5点,2番目を4点…と得点化して1.2を乗じ(最高6点),これを6段階評定の値に加算したものを指標とした。
「教師の行動」の分類および国家間比較
 階層クラスター分析を行い,教師の行動を5つに分類した(Table 1)。さらに,3国間で,各クラスターの割合を比較した(Table 2)。その結果,全体的な傾向として,日本はクリシン型と生徒指導型,アメリカは協働型(およびクリシン型),カンボジアは堅実型と協働型の割合が高かった。
 また,国ごとに居住地域間の比較をχ自乗検定等により行ったところ,都市部のカンボジア教師は協働型(30%)が多い一方で,農村部では堅実型が多い(40%)傾向が示された。他の国や保護者については,居住地域による顕著な差は見られなかった。
付  記
 本研究は,「カンボジア国教員養成大学設立のための基盤構築プロジェクト(第1年次)」の援助を受けた。また,測定にあたり,著者の所属機関における「人を対象とする研究倫理審査委員会」の事前承諾を得た。