[PA61] 親和的学級づくりに向けた短時間グループアプローチ継続実践の効果
キーワード:グループアプローチ、短時間、学級づくり
目 的
主体的・対話的・深い学びのある授業をよりスムーズに展開するためには,学びの場である学級がルールとリレーションに支えられた親和的な集団であることが求められる。筆者はこれまで学校現場との共同研究に携わり,生徒の「かかわりの力」(主にソーシャルスキル,自尊感情を想定)育成を目的にした週1回10分の「短時間グループアプローチ」(Short time Group Approach,以下,SGA)の実践と効果検証を重ねてきている。本研究では,中学校生活の3年間,SGAに取り組んだ生徒の自己評定から,SGAの継続実践効果を検証することを目的とした。
方 法
(1)対象:A中学校3年生189名 (2)調査時期:2018年4月~2019年3月 (3)内容と手続き:A中学校では,2016年度より筆者のスーパーバイズを受けながら週1回10分のSGA(名称は「桜咲タイム」)実践を行ってきている。対象である3年生は入学時から年間約30回の桜咲タイムを体験してきた生徒であり,その内容として,1,2年次は「アドジャン」「二者択一」「いいとこ四面鏡」の3種の演習,3年次は「1分間スピーチ」に取り組んだ。SGAの基本展開は下表の通りである。教師は「話す・聴く」等のソーシャルスキル育成をねらったソーシャスキルトレーニング,自他の思考・行動・感情への「出会い,気づき」を促す構成的グループ・エンカウンターを明確に意識しながら10分間の活動を進めた。
<SGAの基本展開;1分間スピーチの例>
1.ルール提示・確認
2.模範提示(初回の活動時のみ)
3.「1分間スピーチ」(4人組を基本。一人1分ずつ)
4.スピーチに価値付け(話す・聴くスキルをターゲット)
5.スピーチに関するフリートーキング(2分)
6.振り返り(2分。口頭で、時には用紙記入)
(4)測定具:生徒の学級適応状況,及びSGA効果を測定するため,Q-U(調査は6月と12月)及びSGAに関する生徒自由記述アンケート(調査は年度末3月)を実施した。
結 果
(1)Q-U:調査の有効回答数は欠席及び記入漏れがある生徒を除き189名であった。Table 1は,6月と12月に実施したQ-U各得点(友人関係,学習意欲,教師関係,学級雰囲気,進路意識,承認,被侵害)について対応のあるt検定による分析の一覧である。結果から,友人関係(両側検定:t(188)=4.11, p<.01)をはじめ,すべての得点において有意なプラス変容が認められた。従って,3年生は,6月から12月にかけて学校生活に対する意欲,学級への満足度が向上したことが示唆された。
(2)生徒の自己評定;「3年間の桜咲タイムを振り返って」という質問に対し、「桜咲タイムのおかげで社会で働く時に必要な受け答えや質疑応答の知識・マナーを身につけることができた」「自分も成長したと思うが,回数を重ねるごとに学校・学級の雰囲気もよくなった」等,生徒の記述内容からは自分自身の成長や学級全体のプラス変容を認めている様子が多く見てとれた。
考 察
本研究の対象は,A中SGA;「桜咲タイム」導入時に入学した生徒である。6月のQ-U各得点が全国平均よりも高く,学級適応の良好さが示唆される状況にあったのは2年間のSGA実践の継続が「かかわりの力」育成に奏功していたからではないかと推測される。そうした適応の良好さが,年度後半の12月にはさらにプラス変容したということは,3年間のSGAが実を結び,授業をはじめとする学校生活全般に「かかわりの力」が活かされたからではないかということもまた推測される。本研究は,比較対照群の設定がない研究ゆえ,結果から示された3年生の状況の良さ,プラス変容をSGA効果として断言することには無理がある。しかし,桜咲タイムへの感謝に溢れる生徒の言葉を目にすると,SGA継続実践は,多くの3年生の充実した学校生活の背中の一押しに寄与したと言えるのではないかと考えられる。今後も引き続き,よりよいSGA実践を創りあげ,それを各地に拡げるためにデータ収集・分析を進めたい。
付 記
本研究はJSPS科研費17K04888の助成により実施した。
主体的・対話的・深い学びのある授業をよりスムーズに展開するためには,学びの場である学級がルールとリレーションに支えられた親和的な集団であることが求められる。筆者はこれまで学校現場との共同研究に携わり,生徒の「かかわりの力」(主にソーシャルスキル,自尊感情を想定)育成を目的にした週1回10分の「短時間グループアプローチ」(Short time Group Approach,以下,SGA)の実践と効果検証を重ねてきている。本研究では,中学校生活の3年間,SGAに取り組んだ生徒の自己評定から,SGAの継続実践効果を検証することを目的とした。
方 法
(1)対象:A中学校3年生189名 (2)調査時期:2018年4月~2019年3月 (3)内容と手続き:A中学校では,2016年度より筆者のスーパーバイズを受けながら週1回10分のSGA(名称は「桜咲タイム」)実践を行ってきている。対象である3年生は入学時から年間約30回の桜咲タイムを体験してきた生徒であり,その内容として,1,2年次は「アドジャン」「二者択一」「いいとこ四面鏡」の3種の演習,3年次は「1分間スピーチ」に取り組んだ。SGAの基本展開は下表の通りである。教師は「話す・聴く」等のソーシャルスキル育成をねらったソーシャスキルトレーニング,自他の思考・行動・感情への「出会い,気づき」を促す構成的グループ・エンカウンターを明確に意識しながら10分間の活動を進めた。
<SGAの基本展開;1分間スピーチの例>
1.ルール提示・確認
2.模範提示(初回の活動時のみ)
3.「1分間スピーチ」(4人組を基本。一人1分ずつ)
4.スピーチに価値付け(話す・聴くスキルをターゲット)
5.スピーチに関するフリートーキング(2分)
6.振り返り(2分。口頭で、時には用紙記入)
(4)測定具:生徒の学級適応状況,及びSGA効果を測定するため,Q-U(調査は6月と12月)及びSGAに関する生徒自由記述アンケート(調査は年度末3月)を実施した。
結 果
(1)Q-U:調査の有効回答数は欠席及び記入漏れがある生徒を除き189名であった。Table 1は,6月と12月に実施したQ-U各得点(友人関係,学習意欲,教師関係,学級雰囲気,進路意識,承認,被侵害)について対応のあるt検定による分析の一覧である。結果から,友人関係(両側検定:t(188)=4.11, p<.01)をはじめ,すべての得点において有意なプラス変容が認められた。従って,3年生は,6月から12月にかけて学校生活に対する意欲,学級への満足度が向上したことが示唆された。
(2)生徒の自己評定;「3年間の桜咲タイムを振り返って」という質問に対し、「桜咲タイムのおかげで社会で働く時に必要な受け答えや質疑応答の知識・マナーを身につけることができた」「自分も成長したと思うが,回数を重ねるごとに学校・学級の雰囲気もよくなった」等,生徒の記述内容からは自分自身の成長や学級全体のプラス変容を認めている様子が多く見てとれた。
考 察
本研究の対象は,A中SGA;「桜咲タイム」導入時に入学した生徒である。6月のQ-U各得点が全国平均よりも高く,学級適応の良好さが示唆される状況にあったのは2年間のSGA実践の継続が「かかわりの力」育成に奏功していたからではないかと推測される。そうした適応の良好さが,年度後半の12月にはさらにプラス変容したということは,3年間のSGAが実を結び,授業をはじめとする学校生活全般に「かかわりの力」が活かされたからではないかということもまた推測される。本研究は,比較対照群の設定がない研究ゆえ,結果から示された3年生の状況の良さ,プラス変容をSGA効果として断言することには無理がある。しかし,桜咲タイムへの感謝に溢れる生徒の言葉を目にすると,SGA継続実践は,多くの3年生の充実した学校生活の背中の一押しに寄与したと言えるのではないかと考えられる。今後も引き続き,よりよいSGA実践を創りあげ,それを各地に拡げるためにデータ収集・分析を進めたい。
付 記
本研究はJSPS科研費17K04888の助成により実施した。