日本教育心理学会第61回総会

講演情報

ポスター発表

[PB] ポスター発表 PB(01-67)

2019年9月14日(土) 13:00 〜 15:00 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間 奇数番号13:00~14:00 偶数番号14:00~15:00

[PB03] 住居状況と友人関係からみた大学生の孤独感

大学新入生に着目して

佐藤有耕, 石井健太郎# (筑波大学)

キーワード:青年期、大学生、孤独感

 青年期における生活環境変化による孤独感の高まりとして,大学新入生の孤独感に着目した研究がある(諸井,1986,実社研;Satoh,2016,ICP)。入学直後に孤独感が一時的に高まり,その後減少する(Cutrona,1982),大学新入生においては男子が女子より孤独感が
高い(工藤・西川,1983,実社研)等がすでに報告されている。これらの研究においては孤独感の環境的な要因として住居状況が,対人関係上の要因として友人関係に着目している。本稿も,大学新入生の孤独感を1)学期と性差,2)住居状況,3)友人関係から検討することを目的とする。
方  法
調査1 参加者:国立P大学1~4年生計86名(男性55名,女性30名,不明1名),2018年6月実施。調査内容:本稿には含めない変数も含めて,1 生活感情(落合,1994),2 改訂版UCLA孤独感尺度(諸井,1991)の得点,3 生活環境要因:Q3.住居形態他,4 SNS要因:Q6.LINE利用他,5 対人関係要因:Q10.友人関係満足度,Q11.「親友がいるか?」と聞かれたときの回答(種村,2006,筑波大学卒論)他,など。調査2 参加者:同P大学の1~4年生の計102名(男性60名,女性42名),調査3 参加者:同1~4年生の計103名(男性39名,女性64名),調査2と3は2018年11月に実施。調査時に口頭及び質問紙表紙上で,研究協力は任意であること等倫理的配慮について周知し,質問紙は参加者が個別に封をし,封筒に入れて回収された。
結果と考察
1 1年生6月,11月,2年生6月の孤独感の比較
 1年6月の新入生の時期に,孤独感得点の男女差が4点以上あったが,有意差は得られなかった。
2 孤独感と住居状況:1年6月と11月の相違
 大学1年生の6月では,住居状況による差が最大で約9点あり,効果量は中程度の効果を示した。孤独感得点の高さは大学宿舎,アパート,自宅の順であったが,11月では住居状況による差は約2点と小さくなり,アパート,自宅,大学宿舎の順に変わっていた。大学宿舎,アパートに居住する1年生は,6月に比べて11月の方が低得点(順に-6.63,-2.25)である一方で,自宅に居住する1年生は11月の方が高得点であった(+3.30)。
 6月の孤独感では,自宅を離れた1年生にとって,自宅生活を続ける1年生よりも環境変化の影響は大きかったと思われる。しかし逆に大学周辺に共に居住する多数派であることが友人関係を深め,11月には自宅を離れたことによる一時的な孤独感の高まりは低下するものと思われる。一方,自宅に居住する学生の場合には,少数派であり,通学時間が相対的に長く,多数派の学生と共に過ごす時間が相対的に少ないことで友人関係に乗り遅れてしまい孤独感が高まった可能性がある。
3 住居状況と友人関係:1年6月と11月の相違
 孤独感得点の場合と同様に,入学後友人関係満足度について分析を行った。しかし,6月の段階では住居による差は最大で0.12しかなかった。得点の順は,自宅,アパート,大学宿舎の順となった。11月ではその差が最大0.45と少し広がり,得点順も大学宿舎,自宅,アパートの順に変わっていた。大学宿舎に居住する1年生だけは,6月に比べて11月で得点が高い(+0.44)ことが示されたが,アパート,自宅に居住する1年生はわずかながら11月の得点が低い(順に-0.10,-0.02)ことが示された。大学宿舎というきわめて接近した空間に居住し続けることが1年生においては友人関係にプラスにはたらく可能性が示唆される。
 以上より,大学新入生の孤独感には住居状況との関連が一時的にみられること,また,住居状況と友人関係満足度も関連していることが示唆された。しかし,ごく少数の横断的データである限界,特定の大学の結果として限定的にしか解釈できない限界には留意せねばならない。