日本教育心理学会第61回総会

講演情報

ポスター発表

[PB] ポスター発表 PB(01-67)

2019年9月14日(土) 13:00 〜 15:00 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間 奇数番号13:00~14:00 偶数番号14:00~15:00

[PB05] 小学校就学を控えた年長児がとらえる小学校生活

楽しみなこと,不安なこと

滝口圭子 (金沢大学)

キーワード:環境移行、幼小接続、インタビュー調査

 本研究の目的は,小学校就学を控えた移行期の子どもたちが,小学校生活をどのようにとらえているのかを部分的に明らかにすることである。
方  法
調査対象:M市内の1公立保育所,1私立幼稚園,3私立認定こども園の年長児183名を対象にインタビュー調査を実施し,175名(男児101名,女児74名)を分析対象とした。調査時期:2016(平成28)年2月~3月上旬
結果と考察
① 園,所で一番面白いこと:「遊び」に言及した年長児が88.6%(155名)と最も多く,次いで「園の行事」(お楽しみ会等)5.1%(9名),「活動」(製作等)4.6%(8名),「その他」1.7%(3名)と続いた。回答内容の比率に有意差が認められ(χ2 (3, N = 175) = 377.7, p < .01),「遊び」が他の項目よりも高かった(p < .001)。「遊び」の内容は「ドッジボール」「お絵かき」「ブロック」が2割ずつ,「鬼ごっこ」が1割であった。年長児後期により望ましい遊びの内容,引いては年長児後期に望ましい園生活のあり方について,引き続き検討していく必要があるであろう。
② 小学校はどのようなところか:「勉強,学習」(字を書く,足し算,引き算等)が66.3%(116名)と最も多く,「施設」(広い,教室がいっぱいある,体育館等)14.3%(25名),「わからない」9.1%(16名),「楽しい,面白い」5.7%(10名),「学校生活」(トイレ掃除,休み時間等)4.6%(8名)と続いた。「勉強,学習」への言及が他の項目よりも多かった(p < .001)。7割の年長児が小学校を勉強や学習と関連づけて認識しており,園や自宅で書字や計算の練習をしていることを,自ら報告するケースも目立った。
③ 小学校で楽しみなこと:「勉強,学習」(色々知れるから楽しい,字が上手になるから,算数がうまくなりたい等)が最も多く(90名),「学校生活」(給食,運動会,夏休み等)(25名),「運動」(ドッジボール,跳び箱,縄跳び等)(20名),「遊び」(18名)と続き,5名が「ない」と回答した(Figure 1)。「勉強,学習」への言及が他の項目よりも多かった(p < .001)。
④ 小学校で心配なこと:「ない」が最も多く(46名),「勉強,学習」(勉強とか難しい,間違えたりするかもしれん等)(33名),「通学,安全」(悪い人につかまらんか,道間違えたら行けるかな,寝坊する時とか等)(31名),「わからない」(23名),「学校生活」(忘れ物,トイレもらさないかな等)(18名),「友だち」(お友だちできるかな,Rくんがいじめられないか,保育園のみんなと別れること等)(15名)と続いた(Figure 2)。「ない」への言及が「学校生活」「友だち」「運動」「その他」よりも多かった(p < .001)。就学に際して心配なことは「ない」という回答が最も多いという結果は,滝口(2016)と同様であった。一方で,「勉強,学習」「通学,安全」に不安を抱く年長児も少なくなく,年長児が抱く不安と周囲の大人の関わりとの関連性について,検証が求められる。
引用文献
滝口圭子 2016 小学校就学を控えた幼稚園年長児の意識:年長児がとらえる段差とは 日本発達心理学会第27回大会論文集,177.