[PB08] 中学生女子の抑うつ評価の推移
3年間の縦断研究から
キーワード:抑うつ傾向、中学生女子、推移
思春期の抑うつについては,自己評価尺度を用いた研究により,生徒の2割から3割強が臨床群であるという報告がなされている(e.g., 岡田他,2009;宇佐美他,2016)。また,丸山(2009)の中学生の242名の縦断的調査から,学年が上がるほど抑うつ得点は高くなり,どの学年でも男子より女子の方が一貫して高いことを見出している。抑うつの変化パターンは個人差が大きい(下田他,2017)ことが示されており,3年間の推移について臨床群と非臨床群に分けた場合の検討が必要である。そこで,本研究では,女子中学生を対象とし,まず,臨床群と非臨床群を分け,次に,各群の3年間の抑うつ評価の推移をパターン化してみた。さらに,臨床群を対象に,抑うつとの関連が報告されている(相良他,2018)社会コンピテンスとの関係について検討した。
方 法
調査対象 201X年に入学した私立女子中学生92名,翌年に入学した中学生76名を対象とし,3年間追跡調査した。2コホートの縦断データである。
手続き 質問紙調査法。コンピテンスと抑うつ傾向については毎年7月に調査をした。調査票は担任を通じて配布,回収された。
調査内容 抑うつ傾向:日本版DSRS-C(18項目,3件法)。コンピテンス:児童用コンピテンス尺度(桜井,1992)の自己価値,および社会コンピテンスを使用した。各10項目,4件法(1点~4点)による回答。
本研究は,第一著者の所属する大学の「ヒューマンスタディに関する倫理審査委員会」の承認を得て実施した。
結 果
1.臨床群と非臨床群の推移
中学3年時点での抑うつ得点がカットオフポイント(16点)以上の群を臨床群(n=41),それ以外を非臨床群(n=66)として,それぞれの群内で3年間の抑うつ得点をもとにクラスタ-分析(Ward法)を行い,推移のパターン化を行った。その結果をFigure1とFigure2に示す。臨床群では,2クラスターが抽出され,高維持群(n=15)と上昇群(n=18)とした。非臨床群では3クラスターが抽出され高群(n=20),中群(n=29),低群(n=10)と命名した。
2.臨床群における高維持群と上昇群の比較
臨床群の2群間で,自己価値と社会コンピテンスがどう関係するかを検討した結果,自己価値については学年の効果が有意(F(2,29)=11.02, p<.001)で1年生の得点が2年,3年よりも有意に高かったが,群間の効果は有意ではなかった。社会コンピテンスは,群間のみが有意で(F(1,27)=8.30, p<.01)3年間通じて上昇群の方が高かった。
考 察
中学生女子における抑うつの自己評価は,個人差が大きく,3年間の推移はいくつかのパターンが存在することが示された。特に,3年次の臨床群の中には2年生から急に抑うつが高まる生徒がいることから,中学2年は女子の心理的健康面で重要な時期といえる。この抑うつ上昇群は高維持群と比べ,自己価値に関しては差がなく,社会的コンピテンスはより高いという特徴がみられた。今後は,非臨床群との比較が必要と考えられる。
付 記
本研究は科研費(26380949)の助成を受けた。
方 法
調査対象 201X年に入学した私立女子中学生92名,翌年に入学した中学生76名を対象とし,3年間追跡調査した。2コホートの縦断データである。
手続き 質問紙調査法。コンピテンスと抑うつ傾向については毎年7月に調査をした。調査票は担任を通じて配布,回収された。
調査内容 抑うつ傾向:日本版DSRS-C(18項目,3件法)。コンピテンス:児童用コンピテンス尺度(桜井,1992)の自己価値,および社会コンピテンスを使用した。各10項目,4件法(1点~4点)による回答。
本研究は,第一著者の所属する大学の「ヒューマンスタディに関する倫理審査委員会」の承認を得て実施した。
結 果
1.臨床群と非臨床群の推移
中学3年時点での抑うつ得点がカットオフポイント(16点)以上の群を臨床群(n=41),それ以外を非臨床群(n=66)として,それぞれの群内で3年間の抑うつ得点をもとにクラスタ-分析(Ward法)を行い,推移のパターン化を行った。その結果をFigure1とFigure2に示す。臨床群では,2クラスターが抽出され,高維持群(n=15)と上昇群(n=18)とした。非臨床群では3クラスターが抽出され高群(n=20),中群(n=29),低群(n=10)と命名した。
2.臨床群における高維持群と上昇群の比較
臨床群の2群間で,自己価値と社会コンピテンスがどう関係するかを検討した結果,自己価値については学年の効果が有意(F(2,29)=11.02, p<.001)で1年生の得点が2年,3年よりも有意に高かったが,群間の効果は有意ではなかった。社会コンピテンスは,群間のみが有意で(F(1,27)=8.30, p<.01)3年間通じて上昇群の方が高かった。
考 察
中学生女子における抑うつの自己評価は,個人差が大きく,3年間の推移はいくつかのパターンが存在することが示された。特に,3年次の臨床群の中には2年生から急に抑うつが高まる生徒がいることから,中学2年は女子の心理的健康面で重要な時期といえる。この抑うつ上昇群は高維持群と比べ,自己価値に関しては差がなく,社会的コンピテンスはより高いという特徴がみられた。今後は,非臨床群との比較が必要と考えられる。
付 記
本研究は科研費(26380949)の助成を受けた。