[PB23] 保育者志望学生に求められる専門的力量の構造化(4)
キーワード:保育者、養成校、保育現場
問 題
近年,養成教育から現職研修までを包括した教員像への共通理解が必要とされている(別惣,鈴木,龍輪,渡邊,大関,藤原,2012),保育者養成においても例外ではない。卒業後も学び続ける土台作りの時期である保育者養成時に,習得すべき知識や技術に関する明示化は必須である。そこで,筆者らは,大学卒業後までを見据えながら,養成段階で獲得すべき最小限必要な専門的な知識や技術に関する研究を積みかさねてきた。倉盛,渡邉,津川,光本(2014)では,現場の保育者にインタビューを行い,養成段階で獲得すべき最小限必要な専門的な知識や技術に関する項目を,「子ども理解」(17項目),「生活援助の環境構成」(19項目),「遊びの環境構成」(27項目),「対人関係構築」(28項目)の4観点にまとめた。本研究では,項目データを再分析し,下位項目の構造を明らかにした。
方 法
H県内の公立私立保育所,幼稚園,認定こども園210カ所(各所3名分)に,養成段階修了時までに学生が獲得すべき最低限必要な専門的な知識や技術に関する質問紙(倉盛ら, 2014)を配布し,実習指導担当者に,各項目の重要度(養成校を卒業するまでに,特に身につけておいてほしい事)を,4件法(4.非常に重要,3.重要,2.少し重要,1.重要でない)での回答を依頼した。実有効回答数は277名(男性11名,女性254名,公立171所,私立94所),有効回答率43.9%であった。
結果・考察
領域ごとに,因子分析(最尤法,プロマックス回転)を行った。因子負荷量は,4領域共通して0.35以上を採用した。
A「子ども理解」領域については,「援助理解」(場面や子どもに応じた対応や言葉がけができる等),「発達理解」(子どもの姿をみて,何が育っているのかを推測することができる等),「省察と記録」(具体的な事実に基づいて考察したことを記録できる等)の3因子が見いだされた。B「生活援助の環境構成」領域については,「生活空間の構成」(発達に合わせた生活環境を作ることができる等),「物の構成」(物を大切にあつかうことができる等)の2因子が見いだされた。C「遊びの環境構成」領域については,「遊びの展開や援助」(子どもが主体的に遊びに取り組めるように配慮することができる等)と,「遊びの内容」(各年齢,各季節に適した複数の遊びをあげることができる等)の2因子が見いだされた。D「対人関係構築」に関する領域では,「自他の思いの調整」(相手が自分の気持ちや考えを表現するまで待つことができる等),「基本的コミュニケーション」(わからないことがあると,訊ねることができる等),「子ども同士の関係作りの援助」(自発的に子ども同士が関わることができるよう配慮することができる等)の3因子が見いだされた。内的整合性を検討するために,因子ごとにCronbachのα係数を算出したところ,0.83~0.96であり,十分な値が得られた。
Table 1は,下位尺度間の相関係数と下位尺度ごとの平均値と標準偏差である。全体的に下位尺度間で正の相関が有意であった。特に,B「生活援助の環境構成」の下位尺度「生活空間の構成」「物の構成」は,A「子ども理解」C「遊びの環境構成」D「対人関係構築」の下位項目との相関係数が0.8以上であったことから,子どもたちが安心安全な生活を営める空間構成すること学ぶにはは,子ども一人ひとりに応じた発達の保障や遊びの援助とを結びつけることが必要であると言えるだろう。
近年,養成教育から現職研修までを包括した教員像への共通理解が必要とされている(別惣,鈴木,龍輪,渡邊,大関,藤原,2012),保育者養成においても例外ではない。卒業後も学び続ける土台作りの時期である保育者養成時に,習得すべき知識や技術に関する明示化は必須である。そこで,筆者らは,大学卒業後までを見据えながら,養成段階で獲得すべき最小限必要な専門的な知識や技術に関する研究を積みかさねてきた。倉盛,渡邉,津川,光本(2014)では,現場の保育者にインタビューを行い,養成段階で獲得すべき最小限必要な専門的な知識や技術に関する項目を,「子ども理解」(17項目),「生活援助の環境構成」(19項目),「遊びの環境構成」(27項目),「対人関係構築」(28項目)の4観点にまとめた。本研究では,項目データを再分析し,下位項目の構造を明らかにした。
方 法
H県内の公立私立保育所,幼稚園,認定こども園210カ所(各所3名分)に,養成段階修了時までに学生が獲得すべき最低限必要な専門的な知識や技術に関する質問紙(倉盛ら, 2014)を配布し,実習指導担当者に,各項目の重要度(養成校を卒業するまでに,特に身につけておいてほしい事)を,4件法(4.非常に重要,3.重要,2.少し重要,1.重要でない)での回答を依頼した。実有効回答数は277名(男性11名,女性254名,公立171所,私立94所),有効回答率43.9%であった。
結果・考察
領域ごとに,因子分析(最尤法,プロマックス回転)を行った。因子負荷量は,4領域共通して0.35以上を採用した。
A「子ども理解」領域については,「援助理解」(場面や子どもに応じた対応や言葉がけができる等),「発達理解」(子どもの姿をみて,何が育っているのかを推測することができる等),「省察と記録」(具体的な事実に基づいて考察したことを記録できる等)の3因子が見いだされた。B「生活援助の環境構成」領域については,「生活空間の構成」(発達に合わせた生活環境を作ることができる等),「物の構成」(物を大切にあつかうことができる等)の2因子が見いだされた。C「遊びの環境構成」領域については,「遊びの展開や援助」(子どもが主体的に遊びに取り組めるように配慮することができる等)と,「遊びの内容」(各年齢,各季節に適した複数の遊びをあげることができる等)の2因子が見いだされた。D「対人関係構築」に関する領域では,「自他の思いの調整」(相手が自分の気持ちや考えを表現するまで待つことができる等),「基本的コミュニケーション」(わからないことがあると,訊ねることができる等),「子ども同士の関係作りの援助」(自発的に子ども同士が関わることができるよう配慮することができる等)の3因子が見いだされた。内的整合性を検討するために,因子ごとにCronbachのα係数を算出したところ,0.83~0.96であり,十分な値が得られた。
Table 1は,下位尺度間の相関係数と下位尺度ごとの平均値と標準偏差である。全体的に下位尺度間で正の相関が有意であった。特に,B「生活援助の環境構成」の下位尺度「生活空間の構成」「物の構成」は,A「子ども理解」C「遊びの環境構成」D「対人関係構築」の下位項目との相関係数が0.8以上であったことから,子どもたちが安心安全な生活を営める空間構成すること学ぶにはは,子ども一人ひとりに応じた発達の保障や遊びの援助とを結びつけることが必要であると言えるだろう。