日本教育心理学会第61回総会

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ポスター発表

[PB] ポスター発表 PB(01-67)

Sat. Sep 14, 2019 1:00 PM - 3:00 PM 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間 奇数番号13:00~14:00 偶数番号14:00~15:00

[PB30] 小学校高学年児童による英語の文字を読む力と書く力の発達について

単語認識につながる力

アレン玉井光江 (青山学院大学)

Keywords:小学校英語、文字指導、書く力と読む力

学習指導要領に示された英語の読み書き能力
 2017年度告示の学習指導要領において公立小学校の中学年では週1回の外国語活動,また高学年では週2回の外国語が導入されることになった。外国語は必修教科であり,2018年度には文部科学省が作成した新教材(教科書)が配布された。2020年度の完全実施を前に2018年度は全国の約3割,そして2019年度は4割が先行実施する。
 教科となった小学校外国語で課題とされているのがリタラシー指導である。学習指導要領では,「英語の文字には名称と音がある。児童が語句や表現の意味が分かるようになるためには,当然のことながらその語句や表現を発音する必要があり,文字の音の読み方は,そのための手掛かりとなる。(中略)文字が示す音の読み方を指導することとする。」(p. 78)と読むことの目標が示され,書くことについては「大文字,小文字を活字体で書くことができるようにする」ことが目標となっている。本発表では,このリタラシーのボトムアップ的な能力育成を目標に開発したカリキュラムおよび教材を,実際の公立小学校で検証した縦断研究の結果を報告する。
研究方法
参加者
東京都A区のS小学校の高学年生249名(男児:113名,女児:136名)。彼らは,2年間,週1回の当該プログラムを受けた。
手続き
参加児童は,5年生の4月(Time 1),6年生の4月(Time 2),および6年生3月(Time 3)のときにそれぞれアルファベットの文字の認識力と産出力を測るテストを受けた。さらに文字と音との関係を理解しているかを測るテストを6年生の3月に受けた。
能力測定に使用したテスト
(1)文字の認識テスト(名前を聞いて文字を選択するテスト31項目―Time 1 & Time 2)
(2)文字の産出テスト(名前を聞いて文字を書くテスト19項目―Time 1 & Time 2)
(3)文字の産出テスト(複数文字が読まれるのでそれを書き取るテストーTime 3)
(4)音と文字の関係についての知識を測るテスト(共通のonsetを聞き文字を書くテスト10項目および音を聞いて文字を書くテスト20項目-Time 3)
 これらの測定はすべて校長,学級担任,および保護者の同意を得て授業中に行われた。
結  果
 Table 1にそれぞれのテストの結果を報告する。
これらの結果を時間軸に沿ってパス分析をした結果,単語認識に重要な役割を果たす,音と文字との関係を理解する力に影響を及ぼしていたのはT1の大文字を書く力(β=.18),T2の小文字を書く力(β=.13),大文字と小文字を書く力(β= .52)であり,T1,T2で測定された文字を読む力は影響を与えていなかった。
まとめ
 当該プログラムは公立小学校で行われているため,1回に8分から10分程度の指導であり,年間にしても4~5時間の指導でしかない。それにもかかわらず児童は基本的な音と文字との関係についての知識を身につけていた。それには文字の読む力ではなく書く力が大きく影響していた。