日本教育心理学会第61回総会

Presentation information

ポスター発表

[PB] ポスター発表 PB(01-67)

Sat. Sep 14, 2019 1:00 PM - 3:00 PM 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間 奇数番号13:00~14:00 偶数番号14:00~15:00

[PB32] ALACTモデルを用いた個別指導の継続観察が教育実習生の指導の解釈に及ぼす効果について

梶井芳明1, 木内綾香#2 (1.東京学芸大学, 2.足立区立梅島第二小学校)

Keywords:教育実習、個別指導の解釈、ALACTモデル

問題と目的
 渡辺・岩瀬(2017)は,「今日,大学での教員養成において,『実践的指導力』につながるものの育成が求められるようになってきている。また,その際,一定の指導技術や授業の信仰伝授にとどまらず,学生自身が経験の振り返りを通して学ぶ『省察(reflection)』の役割が重視されるようになってきている。」と述べ,教員養成段階にある大学生に自己省察力を育成することの重要性を指摘している。
 本研究の目的は,ALACTモデルを用いた個別指導の継続観察が教育実習生の指導の解釈に及ぼす効果を明らかにすることである。具体的には,実習生が担任教師の個別指導場面を観察し,指導意図を予想する。その後,実習生が担任教師に指導意図についてインタビューを行う。そして,実習生は,自らの予想と指導意図の比較,再解釈を,ALACTモデルを用いて行う。このような自己省察を繰り返し行うことが,実習生の個別指導の解釈に及ぼす影響を明らかにすることを通して,実習生がALACTモデルを用いて個別指導の振り返りに取り組む際の留意点を提案する。
 なお,実習生の自己省察には,大学の指導教員のスーパーヴァイズを伴わせ,省察を契機にした学習を保障する。実習生(当時)は第2執筆者,指導教員は第1執筆者にそれぞれ相当する。
方  法
調査対象者:都内公立小学校の第1学年を担任する中堅教師(30代女性)と,その学級に在籍する児童のうち,個別指導を要する児童2名(A児,B児)の計3名であった。
調査期間:平成30年9月25日から11月13日のうち,観察を6日間,インタビューを3日間の計9日間であった(2日間の観察に対しインタビューを1回行い,それを3度繰り返し行った)。
調査方法:観察法およびインタビュー法により,以下の4つの手続きで行った。1つに,担任教師が行うA児,B児に対する個別指導場面を観察した。2つに,観察した指導場面から,担任教師の指導意図を,第2執筆者が予想した。3つに,第2執筆者が自らの予想をもとに,指導意図について担任教師に半構造化インタビューを行った。4つに,第1執筆者のスーパーヴァイズのもと,第2執筆者が自らの予想と担任教師の指導意図を比較することにより,自身の予想を再解釈した。
結果と考察
実習生が個別指導に取り組む際の留意点:第1週目の留意点は,A児及びB児に対する指導意図の予想が,「A児の行動の変化や成長」「A児の気持ちの変化」「学習の定着を目的とした,A児を含めた学級内の他の児童への影響を考慮した指導」「B児の実態を踏まえた指導」であると示唆されたことから,児童の気持ちの切り替えや学習の定着を目的とした,児童の実態を踏まえた指導を提案する。
 第2週目の留意点は,指導意図の予想が,「A児の性格や体調を考慮した指導」「B児のよい行動に着目した指導」であると示唆されたことから,児童の性格や体調を考慮しつつ,よい行動に着目した指導を提案する。
第3週目の留意点は,指導意図の予想が,「A児の思考や行動を促す,担任教師の指導観を踏まえた指導への気づき」「長期的な視点に基づく,B児の成長を促す指導への気づき」であると示唆されたことから,児童の行為や気持ちを促す,長期的な視座を伴わせた指導を提案する。
実習生がALACTモデルを用いて個別指導の振り返りに取り組む際の留意点:第2執筆者は,ALACTモデルを用いて,第1執筆者のスーパーヴァイズのもと,自らの予想と担任教師の指導意図を比較し,自身の予想の再解釈を行った。
 モデルの活用の様子から,Do(何をしたか)の内容はThink(どう考えたか,思ったか)の内容が,What(何がしたかったのか)の内容はFeel(どう感じたか)の内容が,さらに,What(何がしたかったのか)の内容はDo(何をしたか)の内容が,それぞれ根拠となることが示唆された。
 これらのことから,実習生がALACTモデルを用いて個別指導の振り返りに取り組む際には,「どう感じたか」という気持ち(Feel)が生じ,その気持ちが「何がしたかったのか」という指導の目的(What)につながること。さらには,その目的を達成するために「どう考えたか,思ったか」という判断(Think)をして,その結果「何をしたか」という指導(Do)に至るといった関連を留意することが重要であると推察された。
付  記
 本研究は,第1著者の指導のもと,第2著者が,平成30年度に東京学芸大学教育学部教育心理学講座に提出した卒業論文の一部を,加筆修正したものである。