[PB33] 大学生の日本語ライティングにおける技術要素の分類
テクニカルライティング技術を応用して
Keywords:テクニカルコミュニケーション、ライティング、大学教育
問題と目的
日本語ライティングは,大学教育の基礎に位置づけられる。その中で,マニュアル等に用いられるテクニカルライティング技術は,体系化された日本語ライティング技術として活用でき,大学教育に活用できると考えられる。
本研究は,大学教育への応用を目指し,テクニカルライティングの技術要素に対する大学生の認識,中でも技術要素間の関係性の深さを明らかにすることを目的とした。数多くある技術要素を大学生の認識に合う形式で分類することで,授業設計や評価(ルーブリック等)に活用することができると考えられる。
方 法
材料 現役のテクニカルライターと日本語ライティングを教える大学教員(著者ら)が協働し,一般財団法人テクニカルコミュニケーター協会(2016)におけるTC技術検定3級テクニカルライティング試験の範囲に記載されている技術要素を中心に補足・修正しながら,大学生の日本語ライティングに必要な23の技術要素をリスト化した。たとえば「主語と述語の対応が適切な文が書ける」「同じ意味や言葉を繰り返すことなく簡潔に書くことができる」等である。
調査参加者 インターネット調査会社を通して集めた大学生800名(男性288名,女性512名;18-19歳163名,20-29歳637名;大学1~4年生各139, 182, 211, 268名)が参加した。
手続き 2018/12/21-25にかけて,インターネット調査会社を通して実施した。23の技術要素について,次の2つの観点から回答を求めた。一つは「現状」であり,たとえば“『主語と述語の対応が適切な文が書ける』を自分は達成できている”を提示し,「1.全くそう思わない」から「5.とてもそう思う」の5段階評価を求めた。もう一つは「努力性」であり,たとえば“『主語と述語の対応が適切な文が書ける』は努力すれば必ず身につくことである”を提示し,同じく5段階評価を求めた。先に「現状」後に「努力性」の評価を求め,各観点の中で項目の提示順序をランダム化した。
倫理的配慮 信州大学教育学部研究委員会倫理審査部会の審査を受け,承認を得た(管理番号:H30-8)。
結 果
データスクリーニング 同一選択肢を42回以上選択している参加者と,2つ以下の選択肢のみ選択している参加者を不適データとみなし,分析から除外した。233名分のデータを除外し,567名分のデータを分析した。
因子分析 2つの観点からそれぞれ因子分析(最尤法,プロマックス回転)を行い,固有値等からともに2因子構造を同定した。そこから,技術要素を3つに分け,命名した。現状第1因子・努力性第1因子に含まれる12項目を「基本的体裁因子」(例:「○○です」と「○○である」の違いなど、文体が一貫した文章を書くことができる),現状第2因子,努力性第1因子に含まれる6項目を「文・文章構造因子」(1文が長くなりすぎず、適切な長さの文が書ける),現状第2因子・努力性第2因子に含まれる5項目を「文書設計因子」(例:読み手の持つ知識に合わせた文章を書くことができる)とした。なお,確認的因子分析においてこの因子構造が妥当であることを確認した。
評定平均値の分析 各因子の現状と努力性について評定平均値を算出した結果をTable 1に示す。基本的体裁が高く,他が低い傾向がみられた。
考 察
以上から,23の技術要素を「基本的体裁因子」「文書設計因子」「文・文章構造因子」に分類することができた。これは,大学生の日本語ライティングにおける,大学生が認識する素朴な技術分類に当たる。授業設計や評価の際には,この分類を活用することができると考えられる。また,評定平均値から,大学生が文・文章構造,文書設計が苦手と考えていることが示唆される。
引用文献
一般財団法人テクニカルコミュニケーター協会 (2016). 日本語スタイルガイド(第3版) 一般財団法人テクニカルコミュニケーター協会出版事業部会.
付 記
本研究は科研費JP17K01107の助成を受けたものです。
日本語ライティングは,大学教育の基礎に位置づけられる。その中で,マニュアル等に用いられるテクニカルライティング技術は,体系化された日本語ライティング技術として活用でき,大学教育に活用できると考えられる。
本研究は,大学教育への応用を目指し,テクニカルライティングの技術要素に対する大学生の認識,中でも技術要素間の関係性の深さを明らかにすることを目的とした。数多くある技術要素を大学生の認識に合う形式で分類することで,授業設計や評価(ルーブリック等)に活用することができると考えられる。
方 法
材料 現役のテクニカルライターと日本語ライティングを教える大学教員(著者ら)が協働し,一般財団法人テクニカルコミュニケーター協会(2016)におけるTC技術検定3級テクニカルライティング試験の範囲に記載されている技術要素を中心に補足・修正しながら,大学生の日本語ライティングに必要な23の技術要素をリスト化した。たとえば「主語と述語の対応が適切な文が書ける」「同じ意味や言葉を繰り返すことなく簡潔に書くことができる」等である。
調査参加者 インターネット調査会社を通して集めた大学生800名(男性288名,女性512名;18-19歳163名,20-29歳637名;大学1~4年生各139, 182, 211, 268名)が参加した。
手続き 2018/12/21-25にかけて,インターネット調査会社を通して実施した。23の技術要素について,次の2つの観点から回答を求めた。一つは「現状」であり,たとえば“『主語と述語の対応が適切な文が書ける』を自分は達成できている”を提示し,「1.全くそう思わない」から「5.とてもそう思う」の5段階評価を求めた。もう一つは「努力性」であり,たとえば“『主語と述語の対応が適切な文が書ける』は努力すれば必ず身につくことである”を提示し,同じく5段階評価を求めた。先に「現状」後に「努力性」の評価を求め,各観点の中で項目の提示順序をランダム化した。
倫理的配慮 信州大学教育学部研究委員会倫理審査部会の審査を受け,承認を得た(管理番号:H30-8)。
結 果
データスクリーニング 同一選択肢を42回以上選択している参加者と,2つ以下の選択肢のみ選択している参加者を不適データとみなし,分析から除外した。233名分のデータを除外し,567名分のデータを分析した。
因子分析 2つの観点からそれぞれ因子分析(最尤法,プロマックス回転)を行い,固有値等からともに2因子構造を同定した。そこから,技術要素を3つに分け,命名した。現状第1因子・努力性第1因子に含まれる12項目を「基本的体裁因子」(例:「○○です」と「○○である」の違いなど、文体が一貫した文章を書くことができる),現状第2因子,努力性第1因子に含まれる6項目を「文・文章構造因子」(1文が長くなりすぎず、適切な長さの文が書ける),現状第2因子・努力性第2因子に含まれる5項目を「文書設計因子」(例:読み手の持つ知識に合わせた文章を書くことができる)とした。なお,確認的因子分析においてこの因子構造が妥当であることを確認した。
評定平均値の分析 各因子の現状と努力性について評定平均値を算出した結果をTable 1に示す。基本的体裁が高く,他が低い傾向がみられた。
考 察
以上から,23の技術要素を「基本的体裁因子」「文書設計因子」「文・文章構造因子」に分類することができた。これは,大学生の日本語ライティングにおける,大学生が認識する素朴な技術分類に当たる。授業設計や評価の際には,この分類を活用することができると考えられる。また,評定平均値から,大学生が文・文章構造,文書設計が苦手と考えていることが示唆される。
引用文献
一般財団法人テクニカルコミュニケーター協会 (2016). 日本語スタイルガイド(第3版) 一般財団法人テクニカルコミュニケーター協会出版事業部会.
付 記
本研究は科研費JP17K01107の助成を受けたものです。