[PB55] ダンスの授業が大学生の共感性・コミュニケーション力に及ぼす影響
キーワード:ダンス、共感性、コミュニケーション
問題と目的
共感は,社会生活の中において, 他者との間に感情的な結びつきが作り上げられるという役割を果たし(澤田,1992),人間作りや人格発達の基礎を築くうえでも重要とされる。この共感については数多く研究がなされている(浅川・松岡,1987;桜井,1988;角田,1994;登張,2003)が,共感性を育む実践的な研究はまだまだ数は少ない。
一方,ダンスの特性は,仲間とのコミュニケーションを豊かにする運動であり,その効果が報告されている(村田・吉久,1994; 原田,1996;塚本,2002;西,2003;高橋ら,2013,2016)。
本研究では,他者とのかかわりを重視したダンスの授業を展開し,この実践が大学生の共感性およびコミュニケーション力に及ぼす影響について検討する。
研究方法
調査対象:A女子大学教育学科1年生187名
調査時期:20XX年10月~20XX+1年1月
調査内容:ダンスの授業を7回実施した。授業内容は,即興的作品創作2回,即興表現15回,リズムダンス6回,民謡1回で,毎時間異なるグループ構成とした。質問紙調査は,多次元共感性尺度 (MES)(鈴木・木野,2008)の下位スキル「他者指向的反応」5項目,コミュニケーション・スキル尺度ENDCOREs(藤本・大坊,2007)の下位スキル「表現力」「他者受容」「関係調整」12項目を用いた。質問は4件法で行い,ダンスの授業前・後に実施した。また,「ダンスが好き・嫌い」について回答を求めた。全ての回答について任意によるものと伝えた。
結果と考察
187名の学生のうち,ダンスが好きな学生は131名(70%),嫌いな学生は56名(30%)であり,ダンスが好きな学生の方が多かった。次に,多次元共感性尺度・コミュニケーションスキル尺度を用い,ダンスが好き群・嫌い群および授業前・後で分散分析を行った(Table 1)。結果,コミュ二ケーションスキル「表現力」「他者受容」「関係調整」すべての項目で有意に得点が上昇した(コミュ二ケーションスキル,表現力:F (1,185)=95.33,p<.001,他者受容:F (1,185)=111.38,p<.001,関係調整:F (1,185)=61.40,p<.001 )。しかし,多次元共感性尺度においては有意な差は見られなかった。コミュニケーションスキルの「他者受容」ではダンスが好きな学生の方が,ダンスが嫌いな学生よりも有意に得点が高かった(F (1,185)=7.23,p<.01)。
今回の結果から,ダンスの授業がコミュニケ-ケーションスキルに肯定的に影響を及ぼすことが示された。また,ダンスが好きな学生の方が,互いに相手の意見や立場に共感・尊重するという他者受容のスキルが高い傾向が見られた。今回の授業を通して,とりわけダンスによる他者とのかかわりを重視した様々な交流の体験が,コミュニケーションスキルに影響を及ぼした可能性が考えられた。しかし,共感性尺度「他者指向的反応」の変容は見られなかった。その理由として,授業内容の影響や,わずか7時間の授業では,「他者指向的反応」である他者に焦点づけられた情緒反応の変容までには至らなかった可能性が考えられる。今後,その他の要因も含んで検討する必要がある。
共感は,社会生活の中において, 他者との間に感情的な結びつきが作り上げられるという役割を果たし(澤田,1992),人間作りや人格発達の基礎を築くうえでも重要とされる。この共感については数多く研究がなされている(浅川・松岡,1987;桜井,1988;角田,1994;登張,2003)が,共感性を育む実践的な研究はまだまだ数は少ない。
一方,ダンスの特性は,仲間とのコミュニケーションを豊かにする運動であり,その効果が報告されている(村田・吉久,1994; 原田,1996;塚本,2002;西,2003;高橋ら,2013,2016)。
本研究では,他者とのかかわりを重視したダンスの授業を展開し,この実践が大学生の共感性およびコミュニケーション力に及ぼす影響について検討する。
研究方法
調査対象:A女子大学教育学科1年生187名
調査時期:20XX年10月~20XX+1年1月
調査内容:ダンスの授業を7回実施した。授業内容は,即興的作品創作2回,即興表現15回,リズムダンス6回,民謡1回で,毎時間異なるグループ構成とした。質問紙調査は,多次元共感性尺度 (MES)(鈴木・木野,2008)の下位スキル「他者指向的反応」5項目,コミュニケーション・スキル尺度ENDCOREs(藤本・大坊,2007)の下位スキル「表現力」「他者受容」「関係調整」12項目を用いた。質問は4件法で行い,ダンスの授業前・後に実施した。また,「ダンスが好き・嫌い」について回答を求めた。全ての回答について任意によるものと伝えた。
結果と考察
187名の学生のうち,ダンスが好きな学生は131名(70%),嫌いな学生は56名(30%)であり,ダンスが好きな学生の方が多かった。次に,多次元共感性尺度・コミュニケーションスキル尺度を用い,ダンスが好き群・嫌い群および授業前・後で分散分析を行った(Table 1)。結果,コミュ二ケーションスキル「表現力」「他者受容」「関係調整」すべての項目で有意に得点が上昇した(コミュ二ケーションスキル,表現力:F (1,185)=95.33,p<.001,他者受容:F (1,185)=111.38,p<.001,関係調整:F (1,185)=61.40,p<.001 )。しかし,多次元共感性尺度においては有意な差は見られなかった。コミュニケーションスキルの「他者受容」ではダンスが好きな学生の方が,ダンスが嫌いな学生よりも有意に得点が高かった(F (1,185)=7.23,p<.01)。
今回の結果から,ダンスの授業がコミュニケ-ケーションスキルに肯定的に影響を及ぼすことが示された。また,ダンスが好きな学生の方が,互いに相手の意見や立場に共感・尊重するという他者受容のスキルが高い傾向が見られた。今回の授業を通して,とりわけダンスによる他者とのかかわりを重視した様々な交流の体験が,コミュニケーションスキルに影響を及ぼした可能性が考えられた。しかし,共感性尺度「他者指向的反応」の変容は見られなかった。その理由として,授業内容の影響や,わずか7時間の授業では,「他者指向的反応」である他者に焦点づけられた情緒反応の変容までには至らなかった可能性が考えられる。今後,その他の要因も含んで検討する必要がある。