[PB58] いじめや不登校に関わる不適応の類型化
キーワード:いじめ被害経験、いじめ加害経験、登校嫌悪感
目 的
本研究の目的は,いじめ被害経験やいじめ加害経験,登校嫌悪感といった外的な不適応と否定的な自己評価やストレス反応といった内的な不適応の類型化を図ったうえで,縦断的な調査により,子どもたちの変化について明らかにすることが目的である。
方 法
調査対象者 小学校5,6年生420名(男子222名,女子198名),中学校1~3年生942名(男子449名,女子493名)の計1,362名であった。
調査時期 2016年および2018年の4月-5月において調査を実施した。2018年に実施した調査は2016年に回答した児童・生徒のうち,412名が回答した。
倫理的配慮 著者らの所属する大学の研究倫理委員会の審査を受けた。また,児童・生徒の心理的負担やフォローを検討するために,教頭や学年主任,養護教諭等と会議を重ねた後に,各調査校の校長から実施の許可を得た。各学校の判断に基づき,保護者への説明も文書にて行い,同意を得た。さらに,実施時には,児童・生徒に対しても説明を行った。調査実施後の児童・生徒については各担任が注意深く見守り,気になる児童・生徒に関しては担任と第一発表者が協力してフォローしていくことにした。
質問紙の構成
登校嫌悪感傾向 渡辺・小石 (2000) の登校回避感情測定尺度のうち,登校嫌悪感傾向因子に高い負荷を示した6項目を用いた。
いじめの被害経験と加害経験 岡安・高山 (2000) で用いられているいじめ加害経験といじめ被害経験に関するそれぞれ3項目を使用した。
短縮版自己評価感情尺度 原田 (2015) の作成した尺度を用いた。12項目であった。
ストレス反応尺度 岡安・嶋田・坂野 (1992)の中学生用ストレス反応尺度のうち,不機嫌・怒り感情,身体的反応,抑うつ・不安感情,無気力的認知・思考から2項目ずつ計8項目を用いた。
結 果
2016年のデータを用いて,外的不適応としてのいじめ被害経験,いじめの加害経験,登校嫌悪感傾向の3変数で階層的クラスター分析を行った。その結果,いずれも得点が低い低群,登校嫌悪感傾向のみが高い登校嫌悪感高群,いじめ被害を中心に全般的に高い高群への3分類が適当であった。また,内的不適応としての否定的な自己評価感情とストレス反応の4つの因子の尺度得点で階層的クラスター分析を行った。その結果,いずれも得点が低い低群といずれも得点が高い高群の2分類に分けるのが適当であった。類型化による人数をクロス集計した(Table 1)。
2018年のデータを用いて,類型化された分類によって各尺度に差がみられるかを検討した。内的不適応に関しては,低群と高群で差があるかを平均値差の検定(t検定)で検討したところ,いずれも高群の方が低群よりも高い結果が得られた(Table 2)。
外的不適応に関しては,低群,登校嫌悪感高群, 高群で差がみられるかを一要因多変量分散分析で検討した(Table 3)。多重比較の結果,2018年の登校嫌悪感傾向は登校嫌悪感高群と高群が低群より高く,いじめ被害経験やいじめ加害経験は高群が登校嫌悪感高群や低群よりも高く,2学年進級しても傾向は同じであった。最後に,2018年のデータから2016年のデータの差得点を算出し,それらの値について学年による差の検討を行ったところ,登校嫌悪感傾向においてのみ有意な差がみられ(p <.01),2016年時の1年生の変化量(0.52)が5年生(-0.05)や6年生(0.18)よりも有意に高かった。
本研究の目的は,いじめ被害経験やいじめ加害経験,登校嫌悪感といった外的な不適応と否定的な自己評価やストレス反応といった内的な不適応の類型化を図ったうえで,縦断的な調査により,子どもたちの変化について明らかにすることが目的である。
方 法
調査対象者 小学校5,6年生420名(男子222名,女子198名),中学校1~3年生942名(男子449名,女子493名)の計1,362名であった。
調査時期 2016年および2018年の4月-5月において調査を実施した。2018年に実施した調査は2016年に回答した児童・生徒のうち,412名が回答した。
倫理的配慮 著者らの所属する大学の研究倫理委員会の審査を受けた。また,児童・生徒の心理的負担やフォローを検討するために,教頭や学年主任,養護教諭等と会議を重ねた後に,各調査校の校長から実施の許可を得た。各学校の判断に基づき,保護者への説明も文書にて行い,同意を得た。さらに,実施時には,児童・生徒に対しても説明を行った。調査実施後の児童・生徒については各担任が注意深く見守り,気になる児童・生徒に関しては担任と第一発表者が協力してフォローしていくことにした。
質問紙の構成
登校嫌悪感傾向 渡辺・小石 (2000) の登校回避感情測定尺度のうち,登校嫌悪感傾向因子に高い負荷を示した6項目を用いた。
いじめの被害経験と加害経験 岡安・高山 (2000) で用いられているいじめ加害経験といじめ被害経験に関するそれぞれ3項目を使用した。
短縮版自己評価感情尺度 原田 (2015) の作成した尺度を用いた。12項目であった。
ストレス反応尺度 岡安・嶋田・坂野 (1992)の中学生用ストレス反応尺度のうち,不機嫌・怒り感情,身体的反応,抑うつ・不安感情,無気力的認知・思考から2項目ずつ計8項目を用いた。
結 果
2016年のデータを用いて,外的不適応としてのいじめ被害経験,いじめの加害経験,登校嫌悪感傾向の3変数で階層的クラスター分析を行った。その結果,いずれも得点が低い低群,登校嫌悪感傾向のみが高い登校嫌悪感高群,いじめ被害を中心に全般的に高い高群への3分類が適当であった。また,内的不適応としての否定的な自己評価感情とストレス反応の4つの因子の尺度得点で階層的クラスター分析を行った。その結果,いずれも得点が低い低群といずれも得点が高い高群の2分類に分けるのが適当であった。類型化による人数をクロス集計した(Table 1)。
2018年のデータを用いて,類型化された分類によって各尺度に差がみられるかを検討した。内的不適応に関しては,低群と高群で差があるかを平均値差の検定(t検定)で検討したところ,いずれも高群の方が低群よりも高い結果が得られた(Table 2)。
外的不適応に関しては,低群,登校嫌悪感高群, 高群で差がみられるかを一要因多変量分散分析で検討した(Table 3)。多重比較の結果,2018年の登校嫌悪感傾向は登校嫌悪感高群と高群が低群より高く,いじめ被害経験やいじめ加害経験は高群が登校嫌悪感高群や低群よりも高く,2学年進級しても傾向は同じであった。最後に,2018年のデータから2016年のデータの差得点を算出し,それらの値について学年による差の検討を行ったところ,登校嫌悪感傾向においてのみ有意な差がみられ(p <.01),2016年時の1年生の変化量(0.52)が5年生(-0.05)や6年生(0.18)よりも有意に高かった。